発表

2B-055

リスト間の音韻的類似性が指示忘却に及ぼす影響

[責任発表者] 星野 祐司:1
[連名発表者・登壇者] 高田 早都#:2
1:立命館大学, 2:東京海上日動火災保険

 指示忘却効果に関する実験では,単語リストの提示後,これまでに提示した単語は忘れるように教示し,引き続き新たなリストを提示する。最終的に,提示されたすべての単語を思い出すように実験参加者に求めると,1番目のリストに含まれていた単語の再生率が忘却教示を行わない条件と比較して低下する。しかし,意味的に関連する単語対を用いて2つのリストを作成すると指示忘却効果は見られなくなる(Golding, Long, & MacLeod, 1994; 高橋・厳島, 2009)。高橋・厳島(2009)は意味的に関連する単語対の片方を第1リストに,もう片方を第2リストに割り当てて,2つのリストを作成して実験を行った。本研究では,音韻的に類似した単語対を用いて2つのリストを作成し,意味的関連性と同様に音韻的類似性は指示忘却に影響を及ぼすのかどうかについて検討する実験を行った。
方 法実験参加者
 48名の大学生(大生18名,女性30名)が実験に参加した。平均年齢は21.9歳であった。半数の参加者を,それぞれ,忘却群と記銘群に無作為に割り当てた。
材料
 茅原・辻村(1985)に記載されている清音3音の名詞から,語頭の2音が同一の2単語を選び出した。意味的に関連しないように,同じカテゴリーに属さない単語を対にして,各対の単語を2つのリストに振り分けた。その際,単語使用頻度がリスト間で大きく異ならないように単語を割り当てた。15単語が各リストに含まれていた。
手続き
 実験は個別に行われ,実験参加者はパソコンに提示される単語を覚えるように教示された。ディスプレー上に1つの単語がカタカナ表記で4秒間提示された。第1リスト(15語)の提示が終了すると,記銘群には,これから残り半分が提示されるが,これまで提示された単語とこれから提示される単語を覚えているかテストを行うと教示した。忘却群には,これまでは練習であり,これから提示される単語をあとでテストするので,これまで提示された単語は忘れるようにと教示した。第2リストの提示終了後,30秒間の挿入課題を行い,その後,再生記憶テストを行った。まず第1リストの単語を用紙に書き出し,続いて第2リストの単語を用紙に書き出すことを求めた。実験終了後,実験参加者には簡潔に実験の説明を行った。
結 果 表記(漢字,かな)にかかわらず提示された単語と認められれば正答とした。また,どのリストであるかに関わらず単語が正しく再生されていれば正答とした。忘却群と記銘群の第1リストと第2リストの正再生率をFig. 1に示す。
 正再生率について,教示を参加者間要因(忘却群,記銘群),リストを参加者内要因(第1リスト,第2リスト)とする2要因分散分析を行った。その結果,教示の主効果とリストの主効果はともに有意でなかったが(それぞれ,F (1, 46) = 1.1; F(1, 46) < 1.0),教示とリストの交互作用が有意であった(F(1, 46) = 5.6, p < .05)。第1リストにおける教示の単純主効果は有意ではないが(F(1, 46) = 1.7),第2リストにおける教示の単純主効果は有意であり(F(1, 46) = 4.5, p < .05),第2リストにおいて忘却群は記銘群より高い再生率を示した。
考 察 第1リストの再生率には忘却群と記銘群に違いが見られず,忘却教示の影響は示されなかった。一方,忘却群は第2リストの再生率が記銘群より高くなり,忘却教示による成績向上が示された。このようなパターンは,意味的に関連する単語を用いたGolding et al.,(1994)および高橋・厳島(2009)の実験結果と類似している。意味的関連性がないリストを用いても,音韻的類似性がリスト間にあれば,指示忘却の解除が引き起こされることが示された。第2リストの学習期間中に,音韻的に類似している第1リストの単語が想起されやすくなることで指示忘却が解除されると考えられる。第1リストの検索過程が抑制されるとする指示忘却に関する説明では不十分である可能性が示唆される。

文 献Golding, J. M., Long, D. L., & MacLeod, C. M. (1994).
 You can't always forget what you want: Directed
 forgetting of related words. Journal of Memory
 and Language
, 33, 493-510.
高橋真衣子・厳島行雄 (2009). リストの意味的関連性が指
 示忘却効果に及ぼす影響. 認知心理学研究, 6, 123-131.
千原孝司・辻村裕子 (1985). 清音3音節名詞について―40
 カテゴリー・500語の熟知価― 滋賀大学教育学部紀要
 (人文・社会・教育科学), 35, 75-99.

キーワード
指示忘却/音韻的類似性/再生記憶


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