発表

2A-064

内容親和性が階層的メニュー構造の利用と項目再認に与える影響

[責任発表者] 石井 奏有:1
[連名発表者・登壇者] 原田 悦子:1
1:筑波大学

 情報機器インタフェースにおける階層構造化されたメニュー表示は,一部のユーザ,例えば高齢者にとっては利用が難しいことが示されている(Ziefle & Bay, 2006)が,その検討は最適な階層数といった構造的な観点から行われることが多く(Miller, 1981),メニュー項目の親和性等,意味内容の観点から検討されることは少ない。ICT機器の普及により,多様な情報が扱われる現代において,ユーザにとっての意味内容の親和性の高低も,階層的メニュー構造理解の規定要因として検討する必要がある。そこで本研究では,高齢者と若年者を対象とし,内容親和性において異なる2種の情報機器について,その階層的メニュー構造の利用や,メニュー項目についての再認成績の比較検討のため,実験課題を実施した。
 方法
参加者 高齢者は,筑波大学みんなの使いやすさラボ登録者13名(平均76.23±4.38歳,女性7),若年者は,筑波大学学部生12名(平均20.17±1.27歳,女性6) 。なお,高齢者女性1名は課題遂行中に目標無視がみられ,課題理解の等質性が担保されなかったため分析対象外とした。
実験材料 参加者にとって親和性の低い情報を扱う機器としてハイブリッド車運転席ディスプレイ(内容親和性低),親和性の高い情報を扱う機器としてレストランタッチパネル式メニュー(内容親和性高)を参考とした材料をMicrosoft PowerPoint 2013で作成。両システムは構造上等価であり,メニューは3階層(上位/下位カテゴリ,情報部分),総ボタン数は13。情報は文字,アイコン,イラスト等で表示され,タッチパネルの利用により,ボタン接触で画面が遷移した。
実験課題 (1)情報探索課題:情報機器(内容親和性低/高)の画面操作により,問題文で指定された項目を発見する問題を各機器につき5問。(2)再認課題:情報探索課題で操作した画面に表示されたが使われることのなかったアイコン等5項目と,表示されなかったもの3項目の計8項目を紙面上で提示し,その再認を尋ねた。正答である5項目は全画面を通じて表示されていたものであった。回答の時間制限はなく,正誤のフィードバックは与えられなかった。
手続き 実験の概要説明と同意の手続き,発話思考法の練習後,問題文で指定された項目を画面操作により発見する情報探索課題5試行を,各情報機器について行った。その後,操作手順の説明を求める「説明課題」,メニュー構造再現を求める「カード分類課題」を行った後,メニュー項目に関する再認課題を行った(偶発課題)。各課題の対象機器の実施順序は参加者によりカウンターバランスした。課題に関する質問紙回答後,実験が終了した。実験所要時間は,若年者で1時間,高齢者で1時間半程度であった。
 結果と考察
情報探索課題 対数変換後の各問題の課題遂行時間について,年齢(2)×内容親和性(2)×問題(5)の3要因混合計画分散分析を行った結果(石井・原田(2019)を再分析),年齢×内容親和性,年齢×問題,内容親和性×問題の交互作用が有意であった。また,各内容親和性条件における年齢の単純主効果,各問題における年齢の単純主効果が有意であり,高齢者はより課題遂行に時間を要したことが示された(図1)。さらに,各年齢群で内容親和性の単純主効果が有意であり,内容親和性が低い場合に両年齢群で課題遂行時間がより長かった。効果量の比較の結果,年齢の効果は内容親和性が低い場合に,内容親和性の効果は高齢者でより大きかった。
再認課題 両年齢群の再認課題のd'についての2要因混合計画分散分析(年齢×内容親和性)の結果,年齢及び内容親和性の主効果が有意であり,交互作用は有意でなかった。つまり,高齢者及び内容親和性が低い時,d'が高かった(図2)。
 課題遂行時間がより長かった高齢者及び内容親和性低条件でd'が高かったことから,画面観察時間の長さがメニュー項目の記憶表象形成につながったと考えられる。また,一般に高齢者は認知的加齢に伴う抑制機能低下により,不要情報の処理の抑制が若年者に比べて困難である(Hartman & Hasher, 1991)ため,操作に無関係の情報についてもよく覚えていたと考えられる。このように,高齢者では階層的メニュー構造を持つ情報機器操作の際,不要情報の処理による負荷が生じていることが示唆された。ただし,若年者でも親和性が低い時には不要情報の処理抑制が難しいことは興味深く,内容親和性による効果の詳細な検討が必要である。

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