発表

1D-059

個人のメタ認知能力とリベレーション効果の関連

[責任発表者] 三浦 大志:1
1:杏林大学

目 的
 リベレーション効果は,アナグラムなどの認知課題を行った直後に単語の再認判断を求めると「old (学習フェイズで見た)」と判断されやすいという効果である。本効果は,「認知課題が再認成績を悪化させる」というメタ認知が再認判断基準を緩い方向へシフトさせることで生起すると考えられている (Miura & Itoh, 2016)。しかし,これまでの研究はメタ認知を直接測定しておらず,メタ認知とリベレーション効果の関連が十分に証明されているとはいえない。そこで本研究では,個人のメタ認知能力を質問紙によって測定し,リベレーション効果との関連を検討した。メタ認知能力の高い個人の方がリベレーション効果が生起しやすいという正の相関が見られることが予測された。
方 法
実験参加者 20~28歳 (M = 21.2) の大学生56名 (男24名・女32名) が実験に参加した。本実験は杏林大学の研究倫理委員会の承認を得て実施した。
材料 再認課題:学習時に40語,再認時に60語 (old項目,new項目30項目ずつ) の日常単語を呈示した。単語はカタカナ表記で4文字であった。また5文字の日常単語の文字を並び替えたもの30語をアナグラム課題として用いた。
質問紙:阿部・井田 (2010) を用いてメタ認知能力を測定した。この質問紙は28項目からなり,モニタリング・コントロール・メタ認知的知識の3因子を個別に得点化可能であった。得点が高いほどメタ認知能力が高いとされた。
手続き 再認課題:学習フェイズで単語を1語ずつ提示した後,テストフェイズで60語の再認判断を求めた。テストフェイズの半数の試行では直前にアナグラムが挿入され (アナグラムあり条件),残り半数の試行では挿入されなかった (アナグラムなし条件)。
再認課題,質問紙の順に実施した。再認課題と質問紙の間に二字熟語を用いた別の再認課題を行ったが結果は省略する。
結 果
 old判断率の平均値について,単語要因 (old項目,new項目)×アナグラム要因 (アナグラムあり条件,アナグラムなし条件) の2要因参加者内計画の分散分析を行った (表1)。その結果,単語要因の有意な主効果が見られ (F (1, 55) = 226.83, p < .001),new項目よりold項目のold判断率が高かった。アナグラム要因の有意な主効果も見られ (F (1, 55) = 15.24, p < .001),アナグラムなし条件よりあり条件のold判断率が高かった。両要因の有意な交互作用 (F (1, 55) = 1.52, p > .10)は見られなかった。
 メタ認知能力とリベレーション効果の関連を検討するため,アナグラムあり条件となし条件のold判断率の差の絶対値 (RE絶対値) を個人ごとに算出した。RE絶対値と質問紙総合得点との相関を検討したところ,有意な正の相関 (r = .38, p = .004) が見られた (図1)。また,RE絶対値と質問紙の3因子との相関を検討したところ,モニタリング,コントロール,メタ認知的知識ともに有意な正の相関が見られた (それぞれr = .27, .32, .33, p = .04, .02, .01)。
考 察
 本研究では,アナグラムなし条件よりあり条件のold判断率が有意に高く,リベレーション効果の生起が確認された。また,本効果と質問紙総合得点,および各下位因子との間に有意な正の相関が見られた。メタ認知能力の高い個人ほどリベレーション効果の絶対値が大きいという本結果は,リベレーション効果とメタ認知の関連を示唆したMiura and Itoh (2016) と一致する。リベレーション効果の生起メカニズムにメタ認知の介在を仮定することの妥当性が示されたといえよう。しかし,本研究においてメタ認知能力との相関が示されたのがRE絶対値であるという点には注意が必要である。この指標は認知課題の直後はoldと判断されにくいという逆リベレーション効果が生起している場合でも大きな数値を示す。つまり本研究結果が示しているのは,厳密にいえば,メタ認知能力の高い個人の方がリベレーション効果または逆リベレーション効果が生起しやすいということである。また,質問紙法によって測定されたメタ認知能力が行動指標と一致しないという研究結果が示されている (Veenman et al. 2003) ことにも留意しておく必要がある。メタ認知能力を測定する課題を用いたさらなる研究が期待される。

キーワード
再認判断/メタ認知/基準シフト


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