発表

1D-056

BGM文脈依存再認におよぼす楽曲の移調の効果

[責任発表者] 日隈 美代子:1
[連名発表者・登壇者] 漁田 武雄:1, 漁田 俊子:1, 久保田 貴之:1, 栗林 昇吾#:1, 竹内 和紀#:1
1:静岡産業大学

目的 BGM文脈依存効果とは符号化時と想起時のBGMが同じ時に異なる時よりもよく想起できることであり,楽曲の熟知性が高いほどBGM文脈依存効果が生じにくくなる(漁田・陳・漁田, 2014)。移調とは楽曲の調の主音を移行して演奏することであり,刺激要素の全体の関係性が保たれたまま,他の全体へと移されることを指す。もし,楽曲の物理的刺激がBGM文脈依存効果を規定するのであれば,記憶成績が同文脈>移調=異文脈となると予測でき,心理的印象がBGM文脈依存効果を規定するのであれば,同文脈=移調>異文脈となると予測できる。Zhou (2011) は,自由再生での移調による効果を調べ,同文脈>移調=異文脈となることを見いだし,物理的刺激がBGM文脈依存効果を規定することを示した。
 そこで本研究では,BGM文脈依存再認におよぼす楽曲の移調の効果について調べることとした。
方法実験参加者 静岡産業大学の学生56名。
実験計画 1要因実験参加者間計画(BGM条件群:同文脈・移調・異文脈)。この3群に実験参加者をランダムに割り当てたところ,各群とも18名。
材料 熟知価3.50以上の3文字名詞(小柳・石川・大久保・石井,1960)を無関連となるように64個選出した。そのうち32個ずつを旧項目と新項目にランダムに割り当てた。
BGM 実験参加者にとって未知である楽曲をIsarida, Isarida, Kubota, Nishimura, Fukasawa, & Thakahashi (2018) から選出した。使用楽曲はトリステーザ,ムーランルージュ,ジーグ,ヘッドライトの4曲であった。この4曲の調を,2度上げたものと2度下げたものの計8曲を使用した。同文脈条件では,学習とテストで同じ楽曲,移調では同じ楽曲で調が異なるもの,異文脈では異なる調の異なる楽曲を用いた。
手続き 実験参加者には,単語の暗記をするがその方法は自由であること,再認テストを行うこと,学習セッションとテストセッションでBGMが流れることを教示した。実験の進行は,PC画面の表示と口頭の指示で行った。第1セッションは,32個の旧項目をPC画面に2秒/項目(提示間隔0.5秒)の提示速度で1個ずつ提示し,実験参加者に学習させた。第2セッションは,教示時間を含めて3分間の計算課題を行わせた。第3セッションでは再認テストを行った。再認テストは,旧項目32個と新項目32個を,2列×32行にランダム配置したテストシートを使用した。実験参加者は各項目が学習時に提示されたがどうかの判断を行い,各項目の右に提示の有無について○×で回答を記入した。実験終了後内省報告を実施した。
結果 BGM条件群(同文脈,移調,異文脈)ごとのHit率,False alarm(FA)率,d'をFigure 1, 2, 3に示す。
 BGM条件にもとづく1要因分散分析を,Hit率,FA 率,d'のそれぞれについて算定した。その結果,Hit率,FA率,d'のいずれにおいても,BGM条件間に有意な差があった。Hit率では[F(2, 53) = 4.01, MSE = 0.02, p = .024],FA率では,[F(2, 53) = 3.36, MSE = 0.02, p = .044],d'では,[F(2, 53) = 7.88, MSE = 0.02, p = .002]であった。
考察 Hit率では,同文脈条件と移調条件に差がなく,異文脈条件のみ低かった。FA率でも,同文脈条件と移調条件に差がなく,異文脈条件のみが高かった。その結果d'では同文脈条件と移調条件が同程度に,異文脈条件よりも高くなった。つまり,移調条件が同文脈条件同程度の文脈依存効果が生じた。これは,文脈依存再認には物理的刺激が関係せず,心理的印象が文脈依存再認を規定していることを示している。
 Isarida, Kubota, Nakajima, & Isarida (2017) は,BGM文脈依存効果について,気分の媒介を否定するとともに,より包括的な心理的要因である心的文脈(Smith, 1995)の媒介を提唱している。気分は,心的文脈に含まれる心的要素であるため,移調しても物理的刺激の全体パターンが変化せず,心的文脈が変化しないと考えられる。そして,このことが,原曲と同様の手がかり効果を引き出したのであろう。
 また,Hit率(同文脈>異文脈)とFA率(同文脈<異文脈)が逆の傾向を示しており,ミラー効果が生じている。この文脈にもとづくミラー効果は,場所文脈,匂い文脈,BGMで生じることが報告されている(Isarida et al., 2018)。

キーワード
文脈依存記憶/BGM文脈/再認判断


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