発表

1A-059

自由再生におけるBGM文脈依存効果に音源がおよぼす影響

[責任発表者] 久保田 貴之:1
[連名発表者・登壇者] 櫻井 拓也#:1, 山内 もえ#:1, 日隈 美代子:1, 漁田 俊子:1, 漁田 武雄:1
1:静岡産業大学

目的
 自由再生における環境的文脈依存効果については,これまで様々な文脈を用いた研究が行われており,BGM(background music)文脈もその1つである。BGM文脈依存効果に関しては,これまで調性(e.g., Isarida, Kubota, Nakajima, Isarida, 2017),テンポ(e.g., Isarida et al., 2017),熟知性(e.g., 漁田・陳・漁田,2014)などの影響に関する研究が行われてきたが,BGMを出力する機器としての音源の影響を調べた研究は行われていなかった。スピーカーから流れるBGMは周辺の会話等の音も混ざって聞こえるのに対し,ヘッドフォンのように耳を覆う機器で聴取するBGMは他の音が混ざりにくいなど違いがあることから,BGM文脈依存再生に影響することが考えられた。そこで本研究は,音源によるBGM文脈依存効果への影響を明らかにするために実験を行った。
方法
 実験参加者 心理学関連科目を受講する大学生76名。
 実験計画 2[音源:スピーカー vs. ヘッドフォン]×2[文脈の異同:同文脈 (SC) vs. 異文脈 (DC)]の実験参加者間計画。2要因の組み合わせからなる4条件に76名の参加者を19名ずつランダムに割り当てた。
 材料 記銘材料には,連想価90以上のカタカナ2音節綴り(林, 1976)を,相互に無関連になるように20個選出して用いた。BGMは,Isarida et al. (2017) で用いられた短調の楽曲と長調の楽曲各4曲を使用した。これらの楽曲はいずれも本研究の実験参加者と同世代である大学生にとって未知であることがIsarida et al. (2017) によって確認されていた。
 手続き 実験参加者は,約15分の個別実験に参加した。実験は,自由連想課題(第1セッション)と口頭自由再生(第2セッション)の2セッションで行った。第1セッションでは,実験参加者に,(1) コンピュータ・ディスプレイに表示された項目から連想することばを,自由にいくつでも口頭報告すること,(2) リラックスするためBGMが流れることを教示した。その後,コンピュータ・ディスプレイに項目を1個ずつ,5秒/項目の提示速度(提示間隔0.5秒)で提示した。実験参加者には,コンピュータ・ディスプレイに表示された項目から連想されることばを口頭で報告させた。項目提示の開始から全項目の提示終了まで,BGMを流した。スピーカー条件では,机上に設置したスピーカーからBGMを流した。ヘッドフォン条件の参加者は,ヘッドフォンを装着させ,ヘッドフォンからBGMを流した。BGMは,材料として用意した8曲から1曲をランダムに選んで用いた。
 第2セッションでは,口頭による自由再生テストに関する教示を行ったのち,60秒間の口頭自由再生を行わせ,再生内容をボイスレコーダーで録音した。第2セッションにおいて提示するBGMは,文脈の異同の条件によって異なり,SC条件については第1セッションと同じBGMを用いた。他方,DC条件については,第1セッションで提示したBGMとは調性の異なる4曲からランダムに1曲を選んで提示した。第2セッション終了後,内省報告書を記入させ,実験を終了した。
結果と考察
 各条件における再生率をTable 1に示す。BGMの音源(スピーカー,ヘッドフォン)×文脈(SC条件,DC条件)の2要因分散分析を行った。分散分析の結果,文脈 [F (1, 36) = 26.68, MSE = 3.56, p < .001, ηp2 = .284] と音源の主効果が有意で [F (1, 36) = 4.80, MSE = 3.56, p = .032, ηp2 = .062],交互作用が有意であった [F (1, 36) = 4.28, MSE = 3.56, p = .042, ηp2 = .056] 。
 交互作用が有意であったので,下位分析を行ったところ,SC条件における再生率が,スピーカー条件よりもヘッドフォン条件で有意に高かった [F (1,36) = 7.84, MSE = 3.56, p < .001, ηp2 = .201] 。これに対し,DC条件における再生率は,音源による有意差が認められなかった [F < 1] 。
 本実験結果から,スピーカーに比べてヘッドフォンの方が,BGM文脈依存効果を促進することを見いだした。この促進効果はSC条件のみに生じ,DC条件では生じなかった。これは,ヘッドフォンを装着することによって全体的な集中力が向上するのではなく,学習時と再生時に別の音楽が流れている音環境に比べて,同一のBGMが流れている音環境の方が集中力は向上し,BGMの検索手がかり効果が強められていると解釈することができる。
引用文献
林貞子 (1976). ノンセンスシラブル規準表 東海大学出版会
漁田・陳・漁田 (2014) . BGM文脈手がかり強度におよぼす楽曲の熟知性の効果. 日本認知心理学会第12回大会発表論文集, p.70.
Isarida, T. K., Kubota, T., Nakajima, S., & Isarida, T. (2017) . Reexamination of mood-mediation hypothesis of background-music dependent effects in free recall. Quarterly Journal of Experimental Psychology, 70(3), 533-543.

キーワード
環境的文脈依存効果/バックグラウンドミュージック/自由再生


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