発表

1A-057

日常生活におけるメタ記憶と時間的展望
記憶能力質問紙(MAQ),成人メタ記憶尺度(MIA),および時間的展望尺度(ZTPI)の関係

[責任発表者] 清水 寛之:1
1:神戸学院大学

目 的
 個人は,どのように自らの記憶能力や記憶特性,知識状態をとらえ,能動的な記憶活動の展開に生かしているのだろうか。本研究は,さまざまな記憶場面状況での記憶のモニタリングとコントロールの機能を認知心理学的に評価しようとする総合的な研究の一環として行われた。本発表では,記憶能力質問紙(Memory Ability Questionnaire, MAQ)と成人メタ記憶尺度(Metamemory in Adulthood, MIA)という2種類のメタ記憶質問紙とジンバルドー時間的展望尺度(Zimbardo Time Perspective Inventory, ZTPI)を用いて,日常生活場面における自己の記憶機能に関する主観的評価,記憶に関連する一般的知識,及び時間的展望との関係を調べた内容を報告する。
方 法
 調査参加者 兵庫県内の1大学に在籍する学生122名(男性58名,女性64名;平均年齢20.3歳,範囲18-26歳)。
 質問紙の構成 日常生活場面における個人のメタ記憶を調べるための質問紙としてMAQとMIAが用いられた。MAQは,日常記憶行動に関連した特定の個人的傾向や特徴を表す記述文(全31項目)に対して「全くあてはまらない」から「非常にあてはまる」までの5段階(順に1~5点)で自己の適合度を評定することが求められた。(a)「もの忘れ,無意図的忘却,回想・未来(展望)記憶想起の失敗」,(b)「頭から離れない記憶,回想的想起,無意図的想起」,(c)「検索困難,意図的想起の失敗経験」,(d)「人名の想起困難」の4因子から構成されている。MIAは,自己あるいは一般人(一般的な他者)における特定の記憶行動や記憶信念を表す記述文(全44項目)に対して「まったくそのとおりだと思う」から「まったくそうは思わない」までの(または「まったくしない」から「いつもする」までの)5段階(ともに,順に1~5点)で適合度または出現頻度を評定することが求められた。(a)変化(自己の記憶機能の変化の認識),(b)課題(記憶課題や記憶プロセスについての一般的な知識),(c)能力(記憶の記憶能力の評価),(d)不安(記憶行動に伴う不安状態についての認識),(e)方略(記憶方略の利用頻度),(f)支配(自己の記憶力の支配感やコントロール感))の6因子から構成されている(金城・井出・石原, 2013)。
個人における心理的過去および未来に関する見方を調べるための尺度としてZTPIが用いられた。個人の時間的展望に関する記述文(全56項目)に対して「全くあてはまらない」から「よくあてはまる」までの5段階で評定することが求められた(順に1~5点に得点化)。(a)過去否定(過去を否定的・回避的にみる態度),(b)未来(将来の目標や見返りのため努力する態度),(c)過去肯定(過去に対する温かく感傷的な態度),(d)現在快楽(快楽的で危険を好む,向こう見ずな態度),(e)現在運命(人生は運命で決まっているなど無力感を伴った態度)の5因子から構成されている。
 調査手続き MAQとMIAとZTPIはメタ記憶に関する総合的研究の一環として他の実験や調査とともに同一の調査参加者に対して個別的に行われた。調査の実施に先立って,本研究の参加協力に関する説明文が呈示され,同意書への署名が求められた。質問紙が配布される前後には十分な休憩が与えられ,質問紙への回答は自己ペースで行われた。質問紙調査に要する時間は,合わせて20分程度であった。
結 果 と 考 察
 各質問紙における因子別評定値を算出し,それらの評定値間の相関を求めた(表1)。それぞれを構成する因子の間でいくつかの有意な相関が見られた。すなわち,(a)MAQの「もの忘れ・・・」はZTPIの「過去否定」と「現在運命」との間にそれぞれ有意な正の相関が,「未来」との間に有意な負の相関が認められた。(b)MAQの「頭から離れない・・・」はZTPIの「未来」,「過去肯定」,「現在快楽」との間にそれぞれ有意な正の相関が認められた。(c)MAQの「検索困難・・・」はZTPIの「過去否定」と「現在運命」との間にそれぞれ有意な正の相関が,「未来」との間に有意な負の相関が認められた。(d)MAQの「人名の想起困難」はZTPIの「未来」と「過去肯定」との間にそれぞれ有意な負の相関が認められた。(e)MIAの「変化」はZTPIの「過去否定」,「現在運命」との間にそれぞれ有意な負の相関が認められた。(f)MIAの「能力」はZTPIの「未来」,「現在快楽」との間にそれぞれ有意な正の相関が認められた。(g)MIAの「不安」はZTPIの「過去否定」,「現在運命」との間にそれぞれ有意な正の相関が認められた。(h)MIAの「方略」はZTPIの「未来」との間に有意な正の相関が認められた。(i)MIAの「課題」と「支配」はともに,ZTPIのいずれの因子とも相関が見られなかった。以上のことから,想起失敗や無意図的想起,記憶自己効力感は時間的展望を構成する過去,現在,未来に関する態度の一部と関連していることが明らかになった。ただし,自己の記憶能力に対する改善・向上のための努力にかかわる信念は必ずしも時間的展望全般とは結びついていないことも示唆される。
付記 本研究はJSPS科研費(22530803,25380992,17K04510)の助成を受けた。

キーワード
メタ記憶/記憶モニタリング/記憶コントロール


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