発表

1D-054

サッカリン摂取経験がラットの餌摂取量と体重、砂糖ペレットを強化子とするレバー押し行動に及ぼす影響

[責任発表者] 青山 謙二郎:1
[連名発表者・登壇者] 永野 茜:1
1:同志社大学

 ラットにカロリーの無い人工甘味料を与えると,カロリーの高いグルコースを与える条件に比べて,飼育用の餌の摂取量が多くなり,体重も重くなる(例えば,Swithers & Davidson, 2008)。我々の研究室でも,先行研究と同じ飼育用の餌(LabDiet 5001)を用いて,同様の結果を見出している。それに加えて,砂糖ペレットを強化子とするレバー押し数は,人工甘味料の摂取経験により増加した。本研究では,飼育用の餌を変えた場合にも,同じような効果が見られるかを検討した。
 方法
被験体
 実験経験のないWistar系雄アルビノラット16匹を用いた。レバー押し訓練初日の前日を除いて,飼育用の餌と水を自由に摂食できる状態で飼育した。飼育用の餌はオリエンタル酵母工業(株)のMFを用いた。餌の成分は先行研究のLabDiet 5001と類似していた(研究計画は同志社大学動物実験委員会の許可を受けている)。
手続き
①レバー押し訓練期(5日間)
 オペラント箱でレバー押し行動を訓練した。ラットがレバーを押すたびに45mgの砂糖ペレット(BioServ)1粒を与えた。訓練初日は17時間の絶食後に訓練を実施した。2日目からは自由摂食で飼育して訓練した。最初の2日間は60分間,残り3日間は30分間とした。最終3日間の1日あたりの平均レバー押し回数が20回以上であることを獲得基準としたところ,サッカリン群7匹,訓練群6匹が分析対象となった。
②ヨーグルト期
 レバー押し訓練終了後から3週間にわたり,飼育室で週に6日間,1日あたり20gのヨーグルトを提示した。飼育用の餌と水は自由に摂取できた。サッカリン群では,6日間の内3日間は甘みを付けないプレーンヨーグルトを与え,残り3日間は0.3%のサッカリンで甘みを付けたヨーグルトを与えた。サッカリンはカロリーがないため,甘みの有無にかかわらず,カロリーはヨーグルト1gあたり約0.6kcalであった。プレーンヨーグルトとサッカリン入りヨーグルトは不規則な順で与えた。統制群では,6日間ともプレーンヨーグルトを与えた。
③テスト期
 ヨーグルト期の後,ラットをオペラント箱に入れ,レバー押し行動のたびに45mgの砂糖ペレットを与えた。実験時間は30分間であった。テストは3日間実施した。この間,飼育室では餌と水を自由に摂取できた。
 結果
①レバー押し訓練期
 分析対象となるラットの最終3日間の平均レバー押し数は,サッカリン群 で37.5 (SEM=4.3)回,統制群で35.1(SEM=2.7)回であり,群間に有意な差はなかった。
②ヨーグルト期
 ヨーグルト期初日の体重は,サッカリン群で326.6(SEM=2.4)g,統制群で331.0(SEM=5.8)gであり,有意な差はなかった。3週間での体重増加量はサッカリン群 で37.5 (SEM=4.3)回,統制群で35.1(SEM=2.7)回であり,有意な差はなかった。
 3週間での飼育用餌の摂取量(体重100gあたり)は,サッカリン群 で148.0(SEM=4.3)g,統制群で140.1(SEM= 2.7)gであり,群と週を要因とする2要因の分散分析を実施したところ交互作用が認められた(F (3,33)=3.332, p=.031)。つまり,サッカリン群の方が飼育室での餌の摂取量は多かった。
③テスト期
 3日間の平均レバー押し数は,サッカリン群 で43.1 (SEM=9.6)回,統制群で34.1(SEM=10.6)回であり,有意な差はなかった。テスト期でのレバー押し行動のセッション内変動パターンを図1左に示す。3分あたりのレバー押し数を経過時間(3分ブロック)の関数として表している。群と3分ブロックを要因とする2要因の分散分析を実施したところ,群の主効果も交互作用も有意ではなかった。つまり,サッカリンの摂取経験によるレバー押し行動への影響は見出されなかった。図1右に,3分あたりのレバー押し数を累積ペレット提示数の関数として示す。どちらの群も,レバー押し行動のセッション内変動は,累積ペレット提示数の1次関数としてよく記述できた(説明率95%以上)。ただし,回帰直線のパラメータに差は見られなかった。
 考察
 本研究では,サッカリン摂取により飼育室での餌の摂取量が増加したが,体重には効果がなかった。これは,餌摂取量も体重も増加した研究(例えば,Swithers & Davidson, 2008)とも,摂取カロリーは変化しないが体重が増加した研究(例えば,Feijó et al., 2013)とも異なる。結果の違いを生む要因について,今後の検討が必要とされる(本研究はJSPS 科研費15K04199 の助成を受けた)。

キーワード
サッカリン/ラット/体重増加


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