発表

1D-053

ラットの走行性味覚嫌悪学習における阻止効果検出の試み

[責任発表者] 長谷川 依保:1
[連名発表者・登壇者] 中島 定彦:1
1:関西学院大学

 ラットに味覚水を摂取させた後,回転カゴで自由走行させると,当該味覚水を忌避するようになる(Boakes & Nakajima, 2009)。この走行性味覚嫌悪学習は味覚水を条件刺激(CS),回転カゴでの自由走行を無条件刺激(US)とする古典的条件づけの枠組みで説明されているが,古典的条件づけの理論において重要な現象の一つである阻止(blocking)効果を走行性味覚嫌悪学習の実験事態で直接実証した研究は一報のみである(Pierce & Heth, 2010)。本研究では,CSを継時呈示した走行性味覚嫌悪学習の実験事態での阻止効果検出を試みた。
 実験1
 摂水制限した9週齢のWistar系ラット雄16匹に対し,毎日定刻に実験用ケージでノズル付きボトルを用いて下記の手続きを実施した。実験終了30分後にホームケージで15分間の自由摂水時間を設けた。
 摂水訓練期 (6日間) ボトルから水道水を摂取する訓練を1日1回行った。6日目には第1ボトルから甘味水(0.12M蔗糖溶液)を3分間摂取させた後,5分間の間隔を空け第2ボトルから水道水を3分間摂取させた。
 単純条件づけ期(5日間) 水道水と味覚水を5分間隔で3分間ずつ継時呈示した後,回転カゴで30分間自由走行させる訓練を1日1回行った。第1ボトルでは両群とも水道水を与え,第2ボトルでは阻止群に甘味水,統制群に酸味水(0.02%塩酸溶液)を与えた。この処置により,阻止群に甘味嫌悪を条件づけた。
 複合条件づけ期(3日間) 単純条件づけ期と同じ手続きだが,第1ボトルを塩味水(水道水1Lに対し7.5gのNaClと2.3gのMSGを溶かした溶液)に変更して塩味嫌悪を形成した。統制群に比べ阻止群では時形される塩味嫌悪が小さくなると予想した。
 テスト期(3日間) 塩味水を単独呈示する1瓶法テストの翌日,甘味水を単独呈示する1瓶法テストを行った。さらにその翌日,水道水と塩味水を同時呈示(左右位置は群内でカウンタバランス)する2瓶法テストを1日行った。1瓶法テスト,2瓶法テストとも呈示時間は15分だった。
 1瓶法テストでは塩味溶液の摂取量が予想通り統制群<阻止群であったが,差は小さく,有意でなかった。図1で示すように,2瓶法テストでも塩味溶液への好みは予想通り統制群<阻止群であり,この差は有意であった(t (14) = 3.64, p =.003, r = .698)。実験1では渇動因が高く,1瓶法では塩味水に対する群差が検出できなかった可能性がある。2瓶法テストでは水道水との選択状況であったため,阻止効果が検出できたと思われる。
 実験2
 実験1と同じ手続きで毎日定刻に訓練を行った後,1瓶法テストはせずに,2瓶法テストを2日間行った。実験2では実験開始4時間前にホームケージで15分間の自由摂水時間を設け,実験後には摂水させなかった。
 2瓶法テストの結果を図2に示した。塩味水に対する好みは2日間とも予想通り統制群<阻止群であったが,群差は小さく,有意ではなかった。図1と図2を比較すると,実験1と実験2では2瓶法テストにおける選好率が大幅に異なっている。実験1では1瓶法テスト後に2瓶法テストを行ったため,塩味水に対する嫌悪が消去されて群差が検出できたと思われる。また,阻止群では単純条件づけ期で甘味溶液に対して強い嫌悪が形成され,複合条件づけ期で甘味水をほとんど摂取しなかった。このため塩味水に対する嫌悪が甘味水によって十分に阻止されなかったと推測できる。複合条件づけ期で阻止群に甘味水を摂取させる手続き(USである走行時間の変更や単純条件づけ期の日数を減らすなど)を用いれば,より容易に阻止効果を検出できるかもしれない。
 引用文献
Boakes, R, A., & Nakajima, S. (2009). Taste aversions based on running or swimming. In S. Reilly & T. R. Schachtman (Eds.), Conditioned taste aversion: Behavioral and neural processes (pp. 159-178). Oxford: Oxford University Press.
Pierce, W. D., & Heth, C. D. (2010). Blocking of conditioned taste avoidance induced by wheel running. Behavioural Processes, 83, 41–47.

キーワード
味覚嫌悪学習/回転カゴ/阻止


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