発表

3D-051

矢印に視線と同じ機能を持たせることは可能か?
手掛かり刺激への自己関連付けが指示対象の再認記憶に及ぼす影響

[責任発表者] 魚野 翔太:1
[連名発表者・登壇者] 趙 朔:1, 胡 栄慶#:1, 十一 元三#:1
1:京都大学

【目的】
 視線は注意の方向や意図の手掛かりとなる社会的な刺激である.視線は他者の注意を自動的に方向付け(Frischenら,2007),指示された対象の好意度や記憶が促進されるが,矢印では注意の方向付けは生じるものの対象物への影響が起こらないことが報告されている(Baylissら,2006;Doddら,2012).本研究では,視線と矢印の機能の違いが自己関連性によって生じているかについて検討した.先行研究では,矢印に自己関連付けを行うと視線と同じパタンの注意の方向付けが生じるようになることが示唆されている(Zhaoら,2015).これに基づいて,矢印に自分・他人という語の関連付けを行い,自分と関連付けられた場合に視線と同様に指示された対象の記憶成績に影響するか検討した.

【方法】
参加者:男性25名,女性29名の54名(年齢: M = 21.3,SD = 2.5)であった.
トレーニング課題: 参加者は,矢印と(赤色,緑色)と単語(自分,他人)の4通りの組み合わせのうち指定された2つの組み合わせ(Figure 1を参照)が呈示されたときにだけ,できるだけ早く正確にボタン押しを行った.各刺激は注視点が500 ms呈示された後,100 ms呈示された.正答率90%以下の参加者3名は解析から除外した.
手掛かり注意課題:注視点を250 ms呈示後,白い水平線が500 ms,続いて手掛かり刺激として矢印が呈示された.参加者は,手掛かり刺激が呈示されてから500 ms後に左右にあらわれる無意味図形(遠藤ら,2003)の位置を判断し,できるだけ早く正確に指定されたボタンを用いて反応した.無意味図形は好意度に差がないように16個ずつの4セットに分け(F(3,60)=1.698,p=.180),そのうちの2セットを使用した.1セットは自分関連矢印と,もう1セットは他人関連矢印と共に呈示し,それぞれの半数ずつを手掛かり刺激の方向か逆方向に出現させた.
偶発再認記憶課題: 注視点が250 ms呈示された後,注意課題で用いられた無意味図形と残りの2セットの図形が左右に1つずつ呈示された.参加者は注意課題で見た図形を選択した.

【結果】
 トレーニング課題の反応時間について,対応のあるt検定を行った結果,自分関連付けペアに対する反応時間(524 ms)は他人関連付けペア(565 ms)と比較して有意に短かった(t(50) = 6.148, p < .001).
 手掛かり注意課題の反応時間について,手掛かり刺激の意味(自分,他人)と一致性(一致,不一致)を参加者内要因とする2要因分散分析を行った結果,一致性の主効果だけが有意で,不一致条件(334 ms)と比較して一致条件(323 ms)で反応時間が短かった(F(1,50) = 10.254, p = .002).
 再認記憶成績について,手掛かりの意味と一致性を参加者内要因とする2要因分散分析を行った結果,一致性の主効果 (F(1,50) = 10.777, p = .002)と交互作用が有意であった(F(1,50) = 5.188, p = .027).自分関連手掛かりでは不一致条件よりも一致条件で再認成績が良く(F(1,50) = 11.420, p = .001,Figure 2を参照),不一致条件では他人関連手掛かりよりも自分関連手掛かりで再認成績が悪かった(F(1,50) = 4.146, p = .047).また,自分関連手掛かりの一致条件の成績だけがチャンスレベルよりも高かった(t(50) = 3.095, p = .003).

【考察】
 トレーニング課題の反応時間は自分関連ペアで短く,自己関連情報の処理が促進されたと考えられる.手掛かり注意課題では種類にかかわらず注意の方向付けが生じていたが,自・他条件で反応時間に差はなく,矢印の情報を抑制する必要がある場合には自己関連情報による促進効果が生じなかったと考えられる.再認記憶課題では自己関連手掛かりのみが記憶成績に影響を与え,自己関連手掛かりの示す方向に出現するかどうかによって図形の再認記憶が促進・抑制された.この結果から,矢印が自己関連付けによって視線と同様に指示対象に影響を与えるように変化することが示唆された.

キーワード
自己関連付け/注意/再認記憶


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