発表

3C-054

セラピーロボットとの交流による注意・感情制御機能の向上

[責任発表者] 本間 拓人:1
[連名発表者・登壇者] 守谷 順:2
1:関西大学, 2:関西大学

目 的
 動物型セラピーロボット(Socially Assistive Robotics ; 以下SAR)は,高齢者に対し, 不安やうつを改善させ, 生理的にもストレスを軽減させるといった効果が見られる(柴田, 2017)。このような効果が得られることから, 医療や福祉現場においてSARが導入されつつある(wada & shibata, 2007)。しかし, 一部の高齢者や患者を対象とした研究が多いことや, なぜストレス軽減効果が得られるのかについて十分に検討されていない。不安に関しては,不安症や社交不安症を対象とした研究から,注意機能と感情制御機能がその発生と維持に大きく影響を及ぼしていることが分かっている(Bar-Haim, 2010)。
 そこで本研究では一般大学生を対象とした, SARと交流を行う実験を実施し, 注意機能, 感情制御機能, ストレス状況に適応する能力であるレジリエンスの改善に焦点を当てたストレス軽減効果の発生要因について検討する。

方 法
実験参加者 ロボットと交流する群(ロボット交流群):大学生13名(男性4名, 女性9名, 平均年齢19.46歳 )
 ロボットと交流しない群(統制群):大学生14名(男性5名, 女性9名, 平均年齢19.57歳)
使用ロボット SARであるアザラシ型ロボットのパロを使用した。
使用尺度
1.実行注意に関する注意制御能力全般を測定するために, エフォートフル・コントロール尺度を使用した。
2.精神疾患に見られる多面的な感情制御の困難さを測定するために, 感情制御困難性尺度を使用した。
3.個人のもつレジリエンス要因を測定するために, 二次元レジリエンス要因尺度を使用した。
実験手続き 1回目の実験では, 参加者は各尺度に回答した。2か月後の2回目の実験までの間, 参加者には毎週10分程度, パロと交流した。2回目の実験では1回目の実験同様, 尺度に回答した。統制群においては2か月間ロボットと交流することなく, 1回目と2回目に尺度に回答した。

結 果
 1回目, 2回目の尺度得点をTable 1に示す。反復測定分散分析の結果, 注意の制御において実験の前後の主効果が有意(F(1, 25) = 4.705, p = .040, η2 = .137), 実験の前後とロボット交流の有無の交互作用が有意傾向(F(1, 25)=3.073, p=.092, η2 = .089)であった。また, 同じく感情制御方略の少なさにおいて交互作用が有意 (F(1, 25) = 8.534, p = .007, η2 = .211), 統御力において交互作用が有意傾向 (F(1, 25) = 2.452, p = .079, η2 = .059)であった。それぞれ, 単純主効果の検定を行った。その結果, ロボット交流群における実験の前後の単純主効果が有意であり, 注意の制御が向上(F(1, 25) = 7.417, p = .012, d = .53), 感情制御方略の少なさが低下(F(1, 25) = 7.874, p = .010, d =.62 ), 統御力が向上した(F(1, 25) = 5.555, p = .027, d =.44 )。

考 察
 ロボットと長期的な交流を行うことで, 「注意の制御」, 「感情制御方略の少なさ」, 「統御力」において有意な差が見られた。この結果より, 関係のない刺激から注意をそらし, 目的のために集中する能力が向上し, 不快な感情を抑えるための方法の多さや心身をコントロールする能力が向上したと考えられる。以上のことから, SARとの交流によって得られるストレス軽減効果には, 実行注意に関する注意機能や感情制御能力が関わっていると考えられる。
 
引用文献
Bar‐Haim, Y. (2010). Research review: attention bias
 modification (ABM): a novel treatment for anxiety
 disorders. Journal of Child Psychology and
 Psychiatry, 51(8), 859-870.
柴田崇徳. (2017). メンタルコミットロボット 「パロ」 の
 開発と普及―認知症等の非薬物療法のイノベーション―.
 情報管理, 60(4), 217-228.
Wada, K., & Shibata, T. (2007). Living with seal robots
 —its sociopsychological and physiological
 influences on the elderly at a care house.
 IEEE transactions on robotics, 23(5), 972-980.

キーワード
ロボット/注意機能/感情制御


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