発表

3B-048

共感性の各特性が表情認知に与える影響
表情認知の正答率・反応時間・強さの評定に着目して

[責任発表者] 榊 絵里加:1
[連名発表者・登壇者] 望月 聡:2
1:筑波大学大学院, 2:法政大学

目 的
 表情認知は共感性に重要な役割を果たしていると考えられる。相手がどのような表情をしているのか的確に把握することは,相手の状態を適切に理解して共感することを導くため,適切な表情認知によって共感は促進されると予想される。反対に,実際とは異なった表情弁別をした際には,想定される感情とは異なる感情が生起してしまったり,相手の意図よりも感情の度合いを強くまたは弱く見積もってしまったりする可能性がある。Chikovani, Babuadze, Iashvili, Gvalia, & Surguladze(2015)の研究では,実験において表情強度の弱い表情刺激を呈示するとき共感性の高い群は低い群と比べて,悲しみや恐れなどのネガティブに偏った表情判断を行っていることが明らかになっている。このことから,共感性が高いことによって,あいまいな表情に対してもより強いネガティブな表情認知を行う可能性がある。また,共感性には種類があり,共感の種類によって表情認知に与える影響は異なることが考えられる。そこで,本研究においては,共感性の各特性の高さが表情認知にどのような影響を及ぼしているのか検討することを主眼とする。

方 法
実験参加者:大学生および大学院生61名(男性20名,女性41名,平均年齢22.39±3.24歳)
実施期間:2018年9月~11月
質問項目:多次元共感性(鈴木・木野,2008)24項目,5件法。下位尺度は「被影響性」,「他者指向的反応」,「自己指向的反応」,「想像性」,「視点取得」からなる。
手続き:表情弁別課題では,女性1名,男性1名の表情6種類(喜び,悲しみ,怒り,驚き,嫌悪,恐れ)を刺激セットとして,その表情画像と無表情の表情画像にモーフィングを行い25%,50%,75%,100%の表情強度画像及び,無表情の表情画像の合計50種類を用いた。表情画像はノート型パーソナルコンピュータによって,実験参加者から約50㎝の距離に位置するモニター上の中央にランダムに2000ms呈示された。実験参加者は表示された表情画像が6種類のいずれの感情かできるだけ早く正確に回答することを求められた。また,提示された表情画像が示す感情の強さをVisual Analogue Scaleにより回答した。

結 果
 各共感性下位尺度について,平均値を中心に度数分布表を参考にして3群(低群/中群/高群)に分け,従属変数を正答率,反応時間,強さの評定とした際の,共感性の各特性が表情認知に及ぼす影響について,6(表情カテゴリ)×4(表情強度)×3(各共感性下位尺度)の3要因分散分析を行った。
 表情認知の正答率に与える影響においては,他者指向的反応高群が中群よりも25%および75%嫌悪表情において正答率が有意に高い結果となった。共感性下位尺度のうち相手の感情状態の差異を捉える能力の指標であると考えられる視点取得は正答率への影響が見られなかった。
 表情認知の反応時間に与える影響においては,自己指向的反応低群においての悲しみ表情(25%>75%)と恐れ表情(25%>50%,25%>75%,25%>100%)の表情強度の差が反応時間に影響を及ぼしており,中群や高群においては見られなかった。また,自己指向的反応中群においてのみ怒り表情の表情強度に有意差が見られた(25%>50%,25%>75%,25%>100%)。さらに,自己指向的反応低群は中群よりも100%悲しみ表情において反応時間が有意に長い結果となった。
 表情認知の強さの評定に与える影響においては,自己指向的反応と視点取得において影響がみられた。自己指向的反応中群が高群よりも怒り表情において強さの評定が大きく,低群よりも中群の方が恐れ表情において強さの評定が大きいことが明らかになった。視点取得に関しては,視点取得低群よりも高群が25%表情強度の際により表情を強く評定しており,50%,75%,100%表情強度においては強さの評定がほとんど変わらない結果であった(Figure 1)。

考 察
 共感性の各特性が表情認知に及ぼす影響について,下位尺度によって正答率・反応時間・強さの評定への影響が異なることが明らかとなったことから,共感性のもつ各特性によって表情認知に及ぼす影響が異なることが明らかとなった。
 表情を判断する早さは視点取得の高さと関連がなく,自己指向的反応が一部関わっていることから,自己指向的反応の行いやすさが反応時間に影響を及ぼしていると考えられる。また,視点取得の高さは今回の研究においては正答率に影響を及ぼさず,強さの評定に関与していることから,視点取得の高さは相手の感情状態を見極める能力というよりも,相手の感情状態が他者に伝わりにくいときでも感情を察知し,感情の強さを推し量ることと関係があり,感情カテゴリにかかわらずあいまいな表情をより強く捉えている可能性がある。

キーワード
表情認知/共感性/視点取得


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