発表

3A-055

表情判断における顔色の効果の男女差

[責任発表者] 髙橋 文代:1
[連名発表者・登壇者] 川端 康弘:1
1:北海道大学

目 的
 色の効果は,シーンの枠組み(gist)把握や物体認知の診断的課題で,典型色を持つ対象において報告されている。また,Changiziら(2006) は, 進化論的見地から,顔や臀部を露出する霊長類の色覚が,肌の血色を捉えるために3色型へ発達してきたことをモデルで示した。このことから,社会的シグナルとして重要な表情に対応する色の存在とその重要性が示唆される。本研究は,これらの観点から,表情に対応する顔色が表情同定の重要な要素であることを予測し,表情判断への色の効果を調査する。
 高橋・川端(2015)は,怒り,悲しみ,無感情の表情を施した図式顔にそれぞれの表情に対応する色と関連しない色の5色を着色した結果,怒り表情は対応する赤で,悲しみ表情は対応する青で,無表情は白でそれぞれ正答率が有意に高くなることを示した。本研究では,追試によって蓄積したデータから,表情認知における色の効果の男女差を比較した。

方 法
刺激と装置 24インチ液晶ディスプレイに刺激を呈示した。刺激呈示は,Mac OSにてSuperLab ver. 4.5で行い,反応はMac用K/Bを用いた。
 表情刺激は,高橋・川端(2011)の表情変化の閾値の調査結果に基づいて表情の変化の度合を段階的に調整した。また,色の効果は曖昧な表情でより明確に示されたことから(高橋・川端,2014),対象の表情刺激は目だけを4段階(変化度合0.5,1,2,3)に変化させた。実験刺激は,怒り表情と悲しみ表情の目だけ変化させた8表情,無感情(無表情)1表情とフィラーとして,怒りと悲しみの目と口がわずかに変化した表情(変化度合1)と判断しやすい変化の大きい表情(変化度合3)の4表情,目の表情と口の表情が一致しない曖昧な表情(ex.悲しみの目に喜びの口)3表情を合わせて16表情を用いた。さらに,全ての表情に,5色のバリエーション(赤:怒り顔に関連がある色,青:悲しみ顔に関連がある色,黄色:喜び顔に関連がある色,白:統制色,緑:どの感情とも関連性が低い色)を与え,表情刺激は合計80個とした。
手続き 1ブロック80試行,4ブロックの反復測定を行った。具体的な手続きは,画面に教示文を呈示後,参加者がキーを押すと試行が開始された。最初に注視点が1000ms,続いて図式顔が画面中央に100ms,その後,マスク刺激呈示後,参加者は,呈示された顔に感情があったかどうかをできるだけ速く正確に反応するよう求められた(タスク1)。次の画面で,選択肢が表示され,読み取った感情をテンキーで回答した(タスク2)。分析対象は92名(男性44名,女性48名)で,平均年齢は,21.7才(男性22.3才,女性21.0才)だった。

結果と考察
 タスク1の反応時間とタスク2の正答率について,感情毎に,参加者間要因を性別,参加者内反復測定の2要因を表情変化の度合と色として,混合3要因反復測定分散分析(性別2水準×表情変化の度合4水準×色5水準)を行った。
 タスク1の反応時間において全ての感情で色の主効果は有意だった(怒り: p <.001;悲しみ: p =.041;無表情: p =.036)。怒り表情では,色×表情変化の交互作用があった(p =.008)。赤の反応時間が全ての色より有意に短かった(青:p =.004;緑:p =.016;白:p =.015;黄色:p =.001)。男女の差は,有意傾向だった(p =.096)。悲しみ表情では青の反応時間が赤の反応時間よりも有意に短かった(p =.004)。男女の差は有意傾向だった(p =.081)。無表情では,黄色が青よりも有意に短かく(p =.003),緑に対して有意傾向だった(p =.093)。また,白の反応時間が短く,青,緑,赤に対して有意傾向だった(青:p =.095;緑:p =.093;赤:p =.095)。男女の差は有意ではなかった(p =.265)。
 タスク2の表情判断の正答率における色の主効果は全ての感情において有意だった(怒り: p <.001;悲しみ: p <.001;無表情: p <.001)。怒り表情では,色×表情変化の交互作用が有意だった(p =.043)。多重比較の結果,赤の正答率が全ての色に対して有意に高かった(青,緑,白,黄色:p <.001)。悲しみでは,青の正答率が全ての色に対して有意に高かった(緑,赤,白,黄色:p <.001)。無表情では,白の正答率が全ての色に対して有意に高かった (青:p <.001;緑:p =.005;赤:p =.001;黄色:p =.005)。また,男女差はいずれの感情も有意だった(怒り:p =.019;悲しみ:p =.002;無表情:p =.046)。怒りと悲しみでは女性の正答率が有意に高く,無表情では男性が有意に高かった。
 このように正答率で男女に有意な差があった。怒りと悲しみでは女性の正答率が高く,無表情では男性の正答率が高かったことから,女性の方が表情に対して感度が高く,無表情からでさえ微妙な感情を読み取ったと考えられる。反応時間の男女差は有意ではなかったものの男性がより色に影響を受けている傾向が示された。

キーワード
色/感情/表情


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