発表

2B-052

発達障害者に対する潜在的態度と関わり経験の関連性

[責任発表者] 久崎 孝浩:1
1:九州ルーテル学院大学

 【問題】
 潜在-顕在的態度の比較研究で,障害者に対して顕在的にはポジティヴでも潜在的にはネガティヴに評価することが明らかになってきた(Kurita & Kusumi, 2009; Pruett & Chan, 2006)。これまで,身体障害(栗田・楠見, 2012),ダウン症(Enea-Drapeau et al., 2012),知的障害(Hein et al., 2011),自閉症(横田ら, 2018)に対する潜在的態度が潜在連合テスト(IAT)によって検討されてきた。しかし,発達障害に対する潜在的イメージはIATで検討されていない。ここでいう発達障害とは,発達障害支援法第2条1項に基づき,広汎性発達障害,学習障害,注意欠陥多動性障害,協調運動障害,言語障害を含むものとする。また,発達障害に対する潜在的態度の個人差は接触経験の影響を受けるのだろうか。Hein et al.(2011)の調査では,接触経験は障害者に対する潜在的態度を予測しないことが明らかになっている。
 そこで本研究では,発達障害に対する潜在的態度測定のためのIATを作成し,発達障害者に対する関わりの個人差が潜在的態度にどのように関連するのかを検討する。
 【方法】
 参加者:発達障害に関係するボランティアに深く関わっている学生15名,発達障害に関わるボランティアに関わりのない学生15名。参加者は個室でボランティア参加頻度と参加年数を尋ねられ,発達障害者に対する関わりや考え方に関する質問紙に回答し,最後にIATを受けた。
 質問紙内容:①障害をもつ友人の有無:障害をもつ友人がいるかどうかについて“いる”か“いない”のどちらかで回答を求めた。②発達障害者との関わりの程度:河内(2006)と大谷(2002)を参考に作成した(項目として「発達障害をもつ大人・子どもと話をしたことがある」「発達障害をもつ大人・子どもと一緒に仕事(遊び)をしたことがある」等)。③発達障害者との付き合い:発達障害者との付き合いに対する寛容さについては5件法(問題がある~問題ない)で尋ねた(項目として「発達障害をもつ方があなたの家の隣に引っ越して来ても問題はない」「発達障害をもつ方と友達になっても問題はない」等)。④発達障害者に対する考え方(顕在的態度):生川・那須(2002)の尺度を使用し,5件法で尋ねた(「実践的好意」(6項目),「能力肯定」(7項目),「総合教育」(4項目),「地域交流」(7項目),「理念的好意」(4項目)の下位尺度で構成される)。
 IAT:IATのターゲットカテゴリーの刺激は単語を用いることが多い。しかし,言語より画像によって発達障害に対する具体的なイメージが賦活しやすい人もいると考え,言語バージョンIAT(LAN-IAT)と画像バージョンIAT(PIC-IAT)を作成した。本研究でのターゲットカテゴリーは「発達障害」と「健常」であり,属性カテゴリーは「快」と「不快」である。LAN-IATで用いたターゲットカテゴリーの単語刺激は「発達障害」に関係するものとして「注意欠陥多動障害」「広汎性発達障害」「学習障害」「協調運動障害」「言語障害」,「健常」に関係あるものとして「落ち着いた行動」「適切な意思疎通」「偏りのない学習」「協調的な運動」「適切な言葉遣い」を選択して使用した。属性カテゴリーの単語刺激は「快」に関係する単語から5つを,「不快」に関係する単語から5つを用意した。PIC-IATでは,ターゲットカテゴリーの画像刺激は市販のピクトグラムから子どもの健全な行動パターンを表現したもの4つと発達障害に由来する問題行動を表現したもの4つを用いた。属性カテゴリーの単語刺激は「快」に関係する単語から4つを,「不快」に関係する単語から4つを用意した。これらの刺激は,12名の大学生による「快-不快」または「健常-発達障害」の7段階評価に基づいて12名平均値を算出し,「快」「不快」「健常」「発達障害」として評価されやすいことを確認している。IATより計測される潜在的態度指標はGreenwald et al.(2003)のアルゴリズムに基づいて算出されるD-scoreとした。この指標が大きいほど「発達障害-不快」の潜在連合が強い。
 【結果・考察】
 Table1に示すように,ボランティア参加年数,発達障害者との関わりの程度,発達障害者との付き合いに対する寛容さはどちらのD-scoreとも相関関係はなかった。しかし,障害をもつ友人の有無とLAN-IATのD-scoreの間に有意な正の相関が見られた。これは,障害をもつ友人がいる人ほど「発達障害-不快」の潜在連合が強いことを示唆している。障害をもつ友人がいる人は現実の障害をもつ友人との関わりの中で何らかの葛藤を経験しており,それが「発達障害-不快」の潜在連合を強めているのかもしれない。一方,発達障害者に対する顕在的態度における実践的好意が高い人ほどPIC-IATのD-scoreが有意に低いことが分かった。実践的好意とは,生活する中で発達障害者に対して抱く好意のことである。この結果から,「発達障害-快」の潜在連合の促進あるいは「発達障害-不快」の潜在連合の緩和において,実際に発達障害者を日常生活の中で受け入れることが重要なのではないかと考えられた。

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