発表

2A-056

社会的勢力感が単純接触効果に及ぼす影響
刺激の分散-集中呈示に基づく検討

[責任発表者] 松田 憲:1
[連名発表者・登壇者] 杉森 絵里子:2, 楠見 孝:3
1:北九州市立大学, 2:早稲田大学, 3:京都大学

 単純接触効果は,刺激を集中呈示するよりも分散呈示したほうが大きい効果が得られることが多くの研究によって示されている。その中で,Matsuda et al. (2012) は, 1週間のインターバルによって集中呈示された刺激への単純接触効果が分散呈示よりも促進されることを示した。この結果には,刺激集中呈示とその後の空白期間によるなつかしさ感情の生起の関与が考えられた。さらに,松田ほか(2018)は参加者の楽観性・悲観性とパワープライミング課題による参加者の勢力感操作が分散呈示ないし集中呈示による単純接触効果に及ぼす影響を検討した。制御焦点理論(Higgins, 1997)によると,ヒトには促進焦点と予防焦点の2つの自己制御的志向があり,パワープライミング課題とは,先行刺激として参加者に促進的な手掛かりを与えることで促進焦点を高め(ハイパワー:HP),抑制的な手掛かりを与えて予防焦点を高める(ローパワー:LP)という操作をさす。実験の結果,HP操作を受けた楽観的な参加者のみで,Matsuda et al. (2012) と同様に集中呈示による単純接触効果の遅延後の上昇が検出された。以上より,集中呈示による単純接触効果の長期性は,接触した人間の楽観-悲観傾向や社会的勢力感に影響を受ける,限定的な効果である可能性も示唆された。
 本研究では参加者の本来の社会的勢力感に注目する。参加者を社会的勢力感の高低に分割し,そのうえでパワー操作によって主観的勢力感の操作を行うことが単純接触効果における刺激の分散集中呈示に及ぼす効果を検討する。
 方 法
 要因計画 2 (パワー操作:HP,LP) ×2 (インターバル:5分,1週間)×2 (刺激呈示系列:集中呈示,分散呈示) × 3 (呈示回数:3,6,9 回)の4要因混合計画であった。パワー操作は参加者間,それ以外の3要因は参加者内であった。
 参加者 大学生57名(男性36名,女性21名,平均20.4歳)が参加した。HP操作条件が30名,LP操作条件が27名であった。
 材料 社会的勢力感の測定には岡田(2012)で用いられた一般勢力感(GSP)尺度を使用した。パワープライミング課題は,Smith & Trope (2006) で使用した課題を岡田(2012)が日本語訳したものを使用した。呈示刺激はニュートラルな無意味輪郭図形を14個選定した。
 手続き 実験はGSP尺度による社会的勢力感の測定とパワー操作,刺激接触,インターバル,刺激評定の5段階構成であった。参加者刺激呈示時間は3秒,ISIは1秒であった。インターバル後の評定課題では,参加者には旧項目12個に新項目2個を加えた計14個の図形に対して評定を求めた。評定尺度は好意度,親近性,新奇性,なつかしさの7件法評定と2件法による再認判断であり,評定は参加者のペースで行われた。
   結果と考察
 結果の分析に先立って,GSP 尺度の評定値に基づいてHP操作とLP操作の各参加者を33パーセンタイルで分割し,HP操作を受けた参加者30名の上・下群10名とLP操作を受けた参加者27名の上・下群9名をそれぞれ社会的勢力感高群・低群とし,分析の対象とした。各尺度の旧項目への評定値と新項目への評定値の差分平均値を用いて,4要因の分散分析を行った。その結果, 刺激呈示直後の評定において,社会的勢力感高群(図1)は,HP操作によって分散呈示の,LP操作によって集中呈示による単純接触効果が見られた。低群(図2)ではHP操作によって分散・集中の両方で,LP操作では集中呈示のみで見られた。1週間のインターバル後は,HP操作を受けた参加者は社会的勢力感高群でも集中呈示の効果が見られた一方で,低群は集中呈示の効果が消失した。LP操作を受けた参加者は,社会的勢力感の高低に関わらず集中呈示の効果が維持された。また,LP操作を受けた参加者に生じた単純接触効果にはなつかしさ感情の関与が考えられるが,HP操作を受けた社会的勢力感高群はなつかしさ感情の影響は見られなかった。
 なつかしさは孤独感の低減と社会的サポート感の上昇をもたらすため(小谷・楠見,2015),予防焦点を高められた参加者は集中呈示された刺激への単純接触効果を上昇させたと考える。一方で,刺激集中呈示は同一の刺激が一度に繰り返し呈示されるため,接触イベントとしては分散呈示に比べて少なく,新奇性が高い。そのため,元々社会的勢力感の高い参加者の促進焦点を更に高めることで,刺激集中呈示の持つ新奇性や呈示方法の特殊さに惹かれて好意度評定値が上昇したと考える。

キーワード
社会的勢力感/なつかしさ/呈示系列


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