発表

1C-047

直観性が日常物体の擬人的な知覚を予測する

[責任発表者] 宮崎 由樹:1
1:福山大学

 我々は日常の物体にヒトの顔を知覚することがある。例えば,ただよう雲の形や電気プラグの差し込み口が顔に見えた経験は多くの人にあるだろう。このような錯覚を頻繁に経験する人もいれば経験することが少ない人もいるため,何かしらの個人特性がこの錯覚の生起に関与していることが予想される。
 これまでの研究は,直観的な情報処理や合理的な情報処理に対する動機づけの高さ (以下,直観性,合理性とする) が,この錯覚的な顔の知覚に関係することを示唆する。具体的には,ヒトの顔に見える物体は,高速かつ直観的に,ヒトの顔と同様の脳内メカニズムで処理されるため (e.g., Hadjikhani et al., 2009),直観性の高い人ほど,この錯覚が生起しやすい可能性がある。また,熟慮すること等の分析的な活動に対する動機づけの高さが非生物の擬人化を抑制するという主張もあるため (Epley et al., 2007),合理性が高い人ほど,この錯覚が生起しづらい可能性も考えられる。
 本研究の目的は,直観性および合理性によって,日常物体の擬人的知覚の生起を予測できるか検討することであった。先行研究の知見に基づき (e.g., Epley et al., 2007; Hadjikhani et al., 2009),直観性が高い人は低い人に比べて物体の擬人的知覚が生起しやすく,合理性の高い人は低い人に比べて物体の擬人的知覚が生起しづらいと予測した。

方法参加者 598名 (男性397名,女性242名,平均年齢は42.8歳) の成人が本研究に自発的に参加した。
刺激 24枚の日常物体画像を刺激として使用した(Figure 1)。それぞれの刺激の顔らしさは事前に1 (ヒトの顔に見えない)から100 (ヒトの顔に見える)の範囲で評定済みであり,低群8枚,中群8枚,高群8枚で構成されていた。課題を理解するための練習試行用に同様の画像をさらに3枚使用した。

尺度 参加者の直観性と合理性を測るために,日本語版情報

処理スタイル尺度を使用した (内藤他, 2004)。
手続き 本研究はオンラインで実施した。まず参加者は課題を理解するために練習試行を3試行実施した。そのあと,本試行を24試行実施した。参加者は呈示された刺激の顔らしさについて,1 (ヒトの顔に見えない)から100 (ヒトの顔に見える)の範囲で評定した (顔らしさの評定課題: Figure 1)。刺激は1枚ずつ呈示された。本試行が終了した後で,参加者は直観性と合理性を測るための尺度に回答した。最後に,性別,年齢等に回答した。

結果 直観性および合理性が日常物体の擬人的知覚を予測するか検討するために,直観性・合理性の尺度得点を説明変数,顔らしさの評定課題における低群・中群・高群の評定得点を目的変数としてパス解析を行った ( Figure 2)。その結果,刺激の元々の顔らしさに関係なく,直観性が顔らしさの評定得点を予測することが示された (ps < .05)。この結果は,直観性が高い参加者ほど,顔らしさの評定得点が高かったことを示している。合理性から低群・中群・高群へのパスは有意ではなかった (ps > .05)。
考察 本研究の結果,直観性が日常物体の擬人的知覚を予測することが明らかになった。一方で,合理性とは関連が見られなかった。擬人化には幾つかのタイプがある。本研究のように,ヒトの容貌に関係する擬人化 (物体に顔や目等の身体特徴を帰属させる錯覚的知覚) もあれば,ヒトの内面に関係する擬人化 (物体が意識や感情等を保有するという錯覚的認知) もある。本研究から,ヒトの容貌に関係する擬人化には直観性が関わることが明らかになった。今後,直観性・合理性とヒトの内面の擬人化との関係も検証していきたい。

キーワード
擬人化/直観性/合理性


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