発表

1C-043

カテゴリー学習と認知的加齢:記憶支援の効果

[責任発表者] 原田 悦子:1
[連名発表者・登壇者] 王 紫嫣#:1
1:筑波大学

 カテゴリー知識は,人の認知的世界において心的な糊として新奇な事態へ正しくかつ効率的に対応するための重要な資源である.一般に高齢者にとって新奇な人工物利用は困難とされ,その原因のひとつとしてカテゴリー獲得における困難さがある可能性が考えられる.そこで本研究では原田・王(2019)に続き,幾何学図形のカテゴリー学習実験により,加齢変化とカテゴリー種類の関係を中心に,「以前の事例を参照できる」記憶支援の効果を検証し,併せてマウス軌跡分析(Spivey, Grosjean,& Knoblich, 2005)によるカテゴリー判断過程についても分析を行った.
 方法
実験計画:事前事例の画面表示数(0/1/4の3水準;参加者間要因)×年齢群(2)×課題タイプ(3)の3要因混合計画.なお事例表示数0については原田・王(2019)のデータを用いた.
実験参加者:高齢者は,筑波大学みんなの使いやすさラボ登録者24名(平均74.70±4.70歳),若年者は,筑波大学学部生24名(平均21.21±2.57歳).各年齢群の半分の参加者がランダムに2つの事例表示条件(1/4)に割り振られた(男女同数).
実験材料:Shepard, Hovland, & Jenkins (1961)の1/2/4型課題(1型は単純ルール,2型は論理和ルール,4型は家族的類似性による).課題タイプは参加者内要因であったため.異なる色・形をもつ3組の刺激セットを用いた(図1).3課題の実施順序ならびに課題と刺激セットの組み合わせ方を参加者間でカウンターバランスした.
実験課題と装置:図形が画面中央に提示され,そのカテゴリーA/Bをマウスでクリックする試行を,8試行/blk,合計10ブロック行なった.各試行において刺激提示からマウスクリックまでの時間ならびにそのマウス軌跡を計測した.回答の正誤が画面上に○×で表示され,次試行は参加者が「次へ」ボタンを押下すると始められた.事前事例表示条件では,回答クリック後に正解カテゴリーボタン下に移動するアニメーションの後,縮小形で表示された.4事例表示条件では,それまでの事例表示の下に最新の事例が追加された.
手続き:実験概要の説明・同意取得後,高齢参加者についてはマウス利用について説明と練習を行い,使用に問題がないことを確認した後,3課題を実施した.各課題終了後にVASによる主観評価(回答への確信度,難しさ,疲労)を行った.休憩後,異なる刺激図形セットで次の課題を行った.事前事例表示に関する教示はおこなわなかった.
 結果と考察
 正答率について,ブロック(10)を加えた4要因混合計画分散分析を行った結果,すべての主効果および3次の交互作用が有意であった(図2).すなわち,高齢者は若年成人よりも正答率が低く,2型カテゴリー,4型カテゴリーより1型カテゴリーが容易であるが,すべての条件でブロックを通じての学習がみられた.また事例提示は学習を促進していた.年齢群ごとに異なる学習の様相が予測されたため,年齢群別に3要因分散分析を行ったところ,高齢者にとっては事例数を問わず先行事例を提示することにより2型カテゴリーの学習が促進されたこと,いずれの年齢群においても4型カテゴリーについてはすべての事例が提示される4事例提示条件でのみ,学習の亢進がみられたことが示された.
 主観評価についても同様の分析を行ったところ,高齢者の1事例提示条件において2型カテゴリーの困難度が減少し,同時に確信度が向上したこと,またいずれの年齢群においても事例提示による疲労感への影響はないことが示された.
 AUCならびにMDを用いてマウス軌跡を解析した結果,原田・王(2019)と同じく,若年成人が高齢者よりも強く,また2型の論理和カテゴリーにおいて他の2タイプのカテゴリーよりも競合反応が強く表れることが示されたが,事例提示条件はいずれの要因とも交互作用を示さなかった.
 これらの結果から,事例提示による記憶支援は,すべての事例を提示する場合には家族的類似性のカテゴリー学習を亢進するが,高齢者の2型カテゴリー(論理和ルール)の学習については1事例のみの事例提示であっても促進効果を与えること,しかしそれらの影響はマウス軌跡に示される抑制機能の強度とは独立であることが示唆されたといえよう.
* 本研究はJSPS科研費JP16H02053の助成を得て実施された.

キーワード
カテゴリー学習/認知的加齢/記憶支援


詳細検索