発表

1B-053

単語完成課題における先行刺激の配置の影響

[責任発表者] 阿部 晶子:1
[連名発表者・登壇者] 新井田 孝裕#:2, 四之宮 佑馬#:2, 鈴木 賢治#:2, 野上 豪志#:2
1:国際医療福祉大学, 2:国際医療福祉大学

目 的
 半側空間無視は,大脳半球病巣と反対側の刺激に対して反応・報告・定位することに困難を示す病態である.半側空間無視は,右半球損傷による左無視が問題となることがほとんどで,左半球損傷による右無視はすぐに消失することが多い.これは,左右半球の空間性注意に機能差があるためと考えられている(Weintraub & Mesulam, 1987).
 本研究では,健常者が左右空間の刺激を検出する際の視線を計測することで,左右半球の空間性注意の機能差を明らかにすることを試みたい.本研究の目的は,プライム刺激を左空間に瞬間提示した条件と右空間に瞬間提示した条件の①プライム刺激に視線が到達するまでの時間,視線の到達位置(プライム刺激の提示位置と視線の到達位置の距離),②プライミング効果を比較することである.

方 法
対象 健常成人21名を対象とした.これらを,1群7名(平均20.7歳,SD=0.49),2群7名(平均21.0歳, SD=0.82),3群7名(平均20.4歳,SD=0.53)に割り当てた.
装置 アイトラッカー(Tobii X3-120)およびソフトウェア(Tobii Studio 3.4.8)を用いて行った.
刺激 ターゲット刺激は藤田(1997)による単語フラグマントの中から,未学習の状態での完成率が0~29%の96語を選んだ(例:に□に□ん).プライム刺激は,もとの単語である(例:西日本).96語は未学習の完成率が等しくなるよう3群に割り当てた(プライム刺激A群/B群/C群).さらに,すべての語がモニタの左右に等しく提示されるようにした.すなわち,被験者1群に対しては,プライム刺激A群を左空間提示条件,プライム刺激B群を右空間提示条件,プライム刺激C群を無提示条件の語として用いた.被験者2群に対しては,プライム刺激B群を左空間提示条件,プライム刺激C群を右空間提示条件,プライム刺激A群を無提示条件の語として用いた,被験者3群に対しては,プライム刺激C群を左空間提示条件,プライム刺激A群を右空間提示条件,プライム刺激B群を無提示条件の語として用いた.
手続き 実験は16ブロックに分けて行った.まず,プライム刺激をモニタの左右に300ms提示し,検出できたかを尋ね,音読によって同定の可否を確認した.次に,ターゲット刺激として単語フラグマントを画面中央に提示し,完成するよう求めた.

結 果
 プライム刺激の検出率・音読率,単語の完成率をTable 1に示した.プライム刺激の検出率は左空間提示条件,右空間提示条件とも100%であった.左空間提示条件と右空間提示条件の音読率に有意な差は認められなかった(F(1,40)=0.56, ns).単語の完成率は条件の主効果に有意差が認められ(F(2,60)=360.60, p<.001),左空間提示条件,右空間提示条件の完成率が,無提示条件のそれよりも有意に高かった(p<.01).すなわち,プライミング効果が認められた.
 視線がプライム刺激に向かって移動し停止するまでの時間は,左空間提示条件が平均214.7ms(SD=16.4),右空間提示条件が平均218.7ms(SD=16.4)であった.両条件に有意な差は認められなかった(F(1,40)=0.72, ns).
 プライム刺激の提示位置と視線の到達位置の距離(視角度)は,右空間提示条件が平均-0.069度(SD=0.679)であるのに対し,左空間提示条件は平均0.575度(SD=0.374)で,両群の差は有意であった(F(1,40)=14.46, p<.001).

考 察
 プライム刺激を左空間に提示した条件と右空間に提示した条件を比較した結果,音読の正確さに差はなく,同程度のプライミング効果が認められた.また,視線がプライム刺激に向かって移動し停止するまでの時間にも差は認められなかった.一方,左空間提示の刺激に対する視線の停止位置は,右空間提示の刺激に対する視線の停止位置に比べて,有意に右側にずれていた.この差は空間性注意の左右差を反映していた可能性がある.
 
引用文献
藤田哲也(1997)潜在記憶研究における単語フラグマント完成課題の作成について.光華女子大学研究紀要,35, 111-126.
Weintraub, S., & Mesulam, M.M. (1987) Right cerebral dominance in spatial attention. Further evidence based on ipsilateral neglect. Arch Neurol, 44, 621-625.

本研究は,国際医療福祉大学倫理審査委員会の承認を受けて実施した.また,文部省科学研究費補助金(基盤研究(C)  研究代表者:阿部晶子)の支援を受けて行った.

キーワード
空間性注意の左右差/プライミング効果/視線解析


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