発表

1B-044

頭部・眼球の協調関係に基づく視覚的注意の偏りに対する意図的制御の影響

[責任発表者] 中島 亮一:1,2
[連名発表者・登壇者] 熊田 孝恒:2,3
1:東京大学, 2:理化学研究所理研, 3:京都大学

目的
 人間は眼球,頭部,身体を動かすことで,視線を移動させ対象を見る。頭部方向は視覚的注意に影響を与える[1]。具体的には,頭部(身体)を対象へ向けると視覚処理が促進される。また,身体方向に対し頭部を左右に向けると,視覚的注意はさらにその先に向きやすい。これは,眼筋制御の制約[2]による自動的な視覚的注意の移動だと考えられる。
 本研究では,この自動的な視覚的注意の偏りの効果の大きさを検討するために,意図的な視覚的注意制御によってこの効果が変容するかを調べた。具体的には,Nakashima & Kumada [1]が行った,周辺視野における標的識別課題に,フィラー試行として注視位置での標的識別課題を加えた実験を実施した。頭部と眼球の協調関係に着目し,実験参加者の身体方向に対する頭部方向を正面・左右と操作した(頭部方向は画面中央に固定し,身体方向を変化させた)。また,注視位置への意図的な注意制御の効果を調べるために,注視位置での標的識別課題の難易度を操作した(呈示される標的刺激の大きさを操作)。難易度が高いと,その位置に意図的に視覚的注意を集中させやすくなると想定される。
方法
 36名の大学生・大学院生(18-23歳)が実験に参加した。注視位置課題難易度条件ごとに18名ずつ割り当てた。全員が正常な(矯正)視力を有していた。
 標的刺激は左右を向いた白色のT,妨害刺激は白色のLであった(視角1°× 1°)。メイン試行では,画面中央の注視点から左右に15°離れた位置に,標的刺激と妨害刺激を1個ずつ呈示された(図1a)。フィラー試行では,注視点位置にTが呈示された(難易度低条件:1°× 1°,難易度高条件:0.5°× 0.5°)。
 参加者は試行中,注視点を見続けるよう教示された。参加者のキー押し後,500ms経過すると,画面の左右に刺激が50ms呈示され,マスク刺激が参加者の反応まで呈示された。参加者は,標的刺激Tの向き(左右)を正確に,机の上にあるキーを押して答えた。標的刺激の位置(2条件)ごとに40試行,フィラー試行を20試行,計100試行行った。これを1ブロックとし,身体に対する頭部方向を,正面,左右に約15度と操作し,計3ブロック行った(図1b)。実験参加者は椅子に座り,固めのクッションを机と身体の間に挟むことによって,身体方向を固定した。
結果と考察
 注視点位置での標的識別課題の平均正答率は,難易度低条件で98.2%,難易度高条件で95.5%であり,難易度の操作はうまくいった[t(34) = 2.19, p = .035]。各条件における標的位置ごとの正答率を表1に示す。分散分析の結果,注視点位置課題難易度の主効果が有意であり,難易度低条件のほうが全体的に高い正答率となった[F(1,34) = 8.02, p = .007]。注視点位置課題の成績と考え合わせ,難易度高条件において,注視点位置に意図的に注意を向けやすい状況だったと想定した。頭部方向・標的位置・注視点位置課題難易度の交互作用が有意となった[F(2,68) = 4.59, p = .014]。つまり,頭部方向による視知覚への影響が,注視点位置課題の難易度によって異なる。頭部方向の影響の大きさの指標として,頭部左右方向における頭部正面標的刺激と反対側標的刺激に対する正答率の差を計算したところ,難易度低条件では10.1%,難易度高条件では0.08%となった[t(34) = 2.90, p = .006]。意図に注視点位置により視覚的注意を向けている状況では,頭部方向による標的検出成績への影響は小さくなると考えられる。
 よって,眼球・頭部の協調関係に基づく自動的な視覚的注意の移動の効果はそれほど大きくはなく,意図的にある位置に視覚的注意を集中させると,消失すると考えられる。また,頭部方向に基づく視覚的注意の空間的偏りは,眼筋制御の制約と意図的な注意制御の両者に影響を受けると示唆される。
引用文献
[1] Nakashima, R., & Kumada, T. (2017). Attention, Perception & Psychophysics, 79, 1666-1673.
[2] Oommen, B. S., Smith, R. M., & Stahl, J. S. (2004). Experimental Brain Research, 155, 9-18.

キーワード
視覚的注意/頭部と眼球の協調運動/課題難易度


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