発表

1A-053

女性のリーダーシップ判断にメーキャップが与える影響:IATを用いた研究

[責任発表者] 新井 智大:1
[連名発表者・登壇者] 池田 華子:1, 互 恵子:1, 入戸野 宏:2
1:資生堂グローバルイノベーションセンター, 2:大阪大学

 ライトメークに比べてヘビィメークをした女性はリーダーシップが低いと判断されることが報告されている[1]。他方,三隅[2]によればリーダーシップはM (Maintenance) とP (Performance) の2つのスタイルに分類できることから,ライトメークとヘビィメークがリーダーシップ判断に与える影響の差異はリーダーシップスタイルによって異なる可能性がある。さらにEtcoffら[3]はヘビィメークに限り顔画像の呈示時間が短い場合に比べ長い場合にネガティブな印象がもたらされることを明らかにした。したがって,ヘビィメークがもたらす相対的なリーダーシップ評価の低下は熟考的な判断時に限られると推測される。本研究ではリーダーシップスタイルをMとPに分け,異なるメークタイプがリーダーシップ判断に与える影響を検討した。加えて,熟考的/直感的な判断の影響の有無を検証するために熟考的な判断を顕在評定,直感的な判断を潜在連合テスト(Implicit Association Test: IAT)により測定した。
方法
参加者 健常な日本人女性35名(平均29.5±3.2歳)。本研究の実施には資生堂グローバルイノベーションセンター研究倫理審査員会の承認を得た。実験に先立ち参加者からインフォームドコンセントを得た。
刺激 先行研究[4]から5名の女性の「素顔」「ライトメーク顔」「ヘビィメーク顔」の顔写真を使用した。村井・猪俣[5]を参考に,リーダーシップスタイルMとPに関してポジティブな性格とネガティブな性格を表す単語を5語ずつ,合計20語の単語刺激(性格単語)を決定した。
顕在評定 PC画面左側に素顔を,右側にメーク顔を呈示し,素顔と比較してメーク顔に対し画面上部の性格単語が表す印象をどの程度感じるかを-10から+10までのリッカート尺度で回答を求めた。ネガティブな性格に関する得点は逆転項目として処理し,各リーダーシップスタイルに関して10語の平均値を評定スコアとして算出した。スコアが高いほどメーク顔がポジティブな印象を与えたことを示す。
IAT PC画面中央に呈示される顔画像または性格単語が左右上部に呈示されるカテゴリー対のどちらに属するのかを判断し,キー押しで反応を求めた。カテゴリー対は「素顔 vs. メーク顔」,および「ポジティブな性格 vs. ネガティブな性格」であった。反応時間からGreenwaldら[6]のD2スコアを算出した。D2スコアが高いほどメーク顔とポジティブな性格との連合強度が強いことを表す。
分析 D2スコアと評定スコアについて,2 (メークタイプ:ライトメーク・ヘビィメーク) × 2 (リーダーシップスタイル:M・P) の2要因分散分析を行った。
結果と考察
顕在評定(Figure1 a) 分散分析の結果,メークタイプの主効果,F(1, 34) = 37.21, p < .001, η2p = 0.52,リーダーシップスタイルの主効果,F(1, 34) = 57.19, p < .001, η2p = 0.63,が有意であった。さらに,それらの交互作用が有意であった,F(1, 34) = 60.80, p < .001, η2p = 0.64。単純主効果検定の結果,リーダーシップスタイルMにおいてメークタイプ間で有意な差が認められた,F(1, 34) = 71.77, p < .001, η2p = 0.68。一方で,リーダーシップスタイルPではメークタイプ間に有意な差は認められなかった,F (1, 34) = 0.43, p = .516, η2p = 0.01。
IAT(Figure1 b) 分散分析の結果,メークタイプの主効果,F(1, 34) = 0.30, p = .587, η2p = 0.01,やリーダーシップスタイルの主効果,F(1, 34) = 1.25, p = .272, η2p = 0.04,それらの交互作用,F(1, 34) = 1.23, p = .274, η2p = 0.04,のいずれも有意ではなかった。
 以上の結果はリーダーシップスタイルMの顕在評定において,ライトメーク顔はヘビィメーク顔よりもポジティブに評価されたことを示す。リーダーシップスタイルPについてはライトメークとヘビィメーク共にポジティブに評価され,この間に有意な差は認められなかった。一方で,IATではリーダーシップスタイルによらずメーク顔とリーダーシップに関わるポジティブな性格間に強い連合が認められ,メークタイプ間の差異は有意ではなかった。これらの結果はEtcoffらの結果[2]を支持するものであった。本研究から,ヘビィメークは熟考的な判断時にのみ,協調的な側面においてリーダーシップ評価を低下させることが示された。
引用文献
[1] James et al. (2018). Perception, 47, 540-549.
[2] Etcoff et al. (2011). PLoS ONE, 6, e25656.
[3] 三隅二不二 (1982). リーダーシップ行動の科学, 有斐閣.
[4] Tagai et al. (2017). PLoS ONE, 12, e0172489.
[5] 村井・猪俣. (2010). 実験社会心理学研究, 50, 28-36.
[6] Greenwald et al. (2003). Journal of Personality and Social Psychology, 85, 197-216.

キーワード
潜在連合テスト/メーキャップ/リーダーシップスタイル


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