発表

1A-050

コンフリクト課題の反応時間分布
―単純選択課題との比較―

[責任発表者] 芦高 勇気:1
[連名発表者・登壇者] 嶋田 博行:2, 西村 聡生:3
1:西日本旅客鉄道, 2:神戸大学, 3:安田女子大学

 近年のストループ研究では,ニュートラル条件を基準に一致条件を比較し,一致条件における課題コンフリクトが注目されている(Kalanthroff & Henik, 2014)。課題コンフリクトは,色と単語が融合した刺激において色命名と単語読みとの間で生じるため,不一致条件に限らず一致条件でも生じるとされる。それに対して,フランカー課題では一次元の刺激を用いるため,ストループ課題での刺激のように色や単語といった複数の次元を持たず,一致条件において課題コンフリクトは生じない。したがって,ストループ課題の一致条件とフランカー課題の一致条件に違いが生じるはずである。コンフリクトの解決プロセスに関する研究において,反応時間分布の形状がそのプロセスの違いを示すとされ,反応時間分布分析が注目されている。反応時間分布分析のひとつであるデルタプロット分析では反応時間の四分位ごとの干渉量をプロットする。例えば,デルタプロット分析を用いて不一致条件と一致条件とを比較したとき,フランカー課題とストループ課題では正の傾きが得られてきた (Pratta et al., 2010)。本研究において,フランカー課題の一致条件とストループ課題の一致条件を比較するにあたり,単純選択課題を基準にデルタプロット分析を行った。フランカー課題とストループ課題の基準となる単純選択課題として,それぞれ形について反応するものと色について反応するものを実施した。つまり,従来の一致条件と不一致条件とを比較するコンフリクトの分析に加えて,新たに単純選択課題と比較することで,一致条件のコンフリクトを含めた総合的なコンフリクトの分析が可能となった。
方 法参加者 健常な大学生10名が形について反応する単純選択課題とフランカー課題に参加した。別の健常な大学生10名が色について反応する単純選択課題に参加した。また別の健常な大学生20名がストループ課題に参加した。計40名であった。
刺激 形について反応する単純選択課題では円と三角の図形を,フランカー課題では左右の矢羽を使用した。色について反応する単純選択課題では,4色のカラーパッチを用いた。ストループ課題では4つの色の組み合わせによる色のついた色単語を使用した。
手続き 実験参加者は,単純選択課題では画面の中央に表示される刺激の種類についてボタンで反応した。フランカー課題では,刺激列の周辺の刺激を無視して中央の刺激の種類についてボタンで反応した。ストループ課題では,色のついた単語の単語を無視して色についてボタンで反応した。すべての課題において,両手の人差し指で左右のボタンをそれぞれ押下して反応した。そのため,色について反応する2つの課題では,1つのボタンにつき2つの色が割り当てられる2:1マッピングを用いた。
結果と議論 フランカー課題(t(9) = 4.4, p < .01, d = 1.39)とストループ課題(t(19) = 5.3, p < .01, d = 1.19)ともに一致性効果が得られた。不一致条件の反応時間分布と一致条件のそれを比較したデルタプロットを図1に示した。エラーバーは標準誤差を示す。フランカー課題とストループ課題において共に正の勾配が得られ,先行研究と同様の傾向を示した。次に,一致条件の反応時間分布と単純選択課題のそれを比較したデルタプロットを図2に示した。ストループ課題では正の勾配が得られ,フランカー課題ではその傾向が認められなかった。この結果は,ストループ課題の一致条件における課題コンフリクトを示していると考えられる。さらにこの結果は,ガーナー効果(Melara,& Algom, 2003)と整合した。つまり,ストループ課題において無視すべき単語読みが,一致条件においても色命名に干渉していた。総じて,コンフリクトの解決プロセスが,フランカー課題においては選択に関わるコンフリクトに関わるのに対して,ストループ課題においては課題コンフリクトと選択に関わるコンフリクトが重層的に関わることが示唆された。

 本実験は第二著者の所属機関における実験倫理委員会の承認を得た。実験の実施には神戸大学の若宮脩人の協力を得た。また,本研究の実施にあたって,研究代表者として第二著者に対し2018年度~2020年度科学研究費補助金(基盤研究 (C) 課題番号: 18K03137)の助成を受けた。

キーワード
認知コントロール/ストループ課題/フランカー課題


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