発表

2C-029

絵画知覚における美しさと大きさの関係

[責任発表者] 戸澤 純子:1
[連名発表者・登壇者] 吉田 宏之:2
1:川村学園女子大学, 2:常盤短期大学

 絵画知覚において,対象の美しさ知覚には色,方位,縦横比,形などさまざまな属性が関連することが実験的に示されてきた(Palmer, Schloss, & Sammartino, 2013)。近年,対象の大きさ属性も美しさ知覚に関連することが報告されている。KonkleとOliva(2011)は日常環境にある様々な大きさの対象を,枠で囲った絵で示し,観察者に選好判断を求めた。観察者は枠の中に大きな対象が大きく描かれ,小さい対象が小さく描かれることを好んだ。Konkleたちはこの視覚的な大きさの効果を正準的大きさ効果(canonical size effect)と呼んだ。Konkleたちは物理的大きさの異なるさまざまな対象を使用した。本研究では一つの対象の連続的な大きさ変化を問題とする。
 一つの対象の大きさが連続的に変化する条件において,どちらの大きさの対象が美しいかの判断を求める場合を考える。この際の大きさと美しさの知覚の関数には次の3つの関係が予測できる。
1)大きい方が美しい:視覚的大きさとともに選好判断が増加する。
2)小さい方が美しい:視覚的大きさとともに選好判断が減少する。
3)平均的な大きさが美しい:小さすぎても大きすぎても好まれず,平均の大きさが好まれる。この場合大きさと美しさの判断の関係は逆U字関数となる。
 本研究では大きさを連続的に変える対象として満月を選び,満月における大きさ知覚と美しさの知覚にはどのような関係があるかを実験的に検討した。

方法
実験参加者 24名の男女大学生
刺激と装置 Figure1に示すように,実際の月の写真と実際の風景を合成して実験刺激を作成した。月は国立天文台の撮影した月齢14か月の満月の写真を使用した。東京スカイツリーを含んだ風景写真は夜間,第二著者がタワーから約836mの距離から,デジタルカメラ(Panasonic LUMIX DMC-GX8,焦点距離14mm,絞値f/2.5,ISO感度3200)を使用して撮影した。
 実験刺激は19インチモニター上に提示した。満月の大きさは画面上の視角2.0°を中央値として上下に4ステップ変化した。実験刺激として0.4°から3.6°の9種の満月の大きさを設定した。満月はいずれの大きさであってもタワーの2.7°左に位置した。満月の大きさに関わりなく画面上で8°の高さでタワーを提示した。実験においては,満月の大きさだけが異なり,周辺の風景は同一の2刺激を,左右に組み合わせて灰色の背景上に提示した。
手続き 参加者は強制選択法の手続きに基づいて,画面に提示された2つの刺激のうち,どちらの月が美しいかを判断した。観察距離は57cm。実験刺激は計72対あった。

結果と考察
Figure2は満月の視角的大きさの関数としての選好判断の相対度数分布を示した。カイ二乗検定の結果,満月の視角的大きさは選好判断に有意に影響を及ぼした(x2= 306.26, df = 8, p < 0.001ηp2 = 0.89)。曲線回帰検定では,満月の視角的大きさと選好判断の関係は有意に曲線であることが示された(F (2, 8) = 26.9, p <0.01)。本実験においては,満月の視角的大きさと選好判断の関係は,逆U字関数に対応した。
 この結果は,先の予測の3)平均的大きさが美しい関係に一致する。平均的大きさが最も美しいという結果は,正準的大きさ効果の予測と一致すると考えられる。正準的大きさ効果は,ヒトはさまざまな対象に関する平均の大きさの記憶を有することを予測する。対象の美しさ判断には大きさの記憶が強く影響を及ぼすと考えられる。

文献
Konkle, T., & Oliva, A. (2011) Canonical visual size for real-world objects. Journal of Experimental Psychology: Human Perception and Performance.37: 23-37.
Palmer, S.E., Schloss, K. B. & Sammartino, J. (2013) Visual aesthetics and human preference. Annual Review of Psychology, 64:77-107

キーワード
美しさの知覚/大きさ知覚/満月


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