発表

2A-045

ガウス過程回帰によるブーバ/キキ形状の生成

[責任発表者] 小森 政嗣:1
1:大阪電気通信大学

目 的
 ブーバ/キキ効果(bouba/kiki effect)とは,言語音と形状の印象の間に一般的に認められる結びつきのことである.この効果は,Köhlerにより報告され,Ramachandranら(2001)が紹介して広く知られるようになった.丸みを帯びた滑らかな図形と,直線で囲まれ鋭く尖った図形のうち,いずれがブーバ/キキであるかを選択させると,多く場合,丸みを帯びた図形がブーバ,尖った図形がキキだと判断されることが知られている.この研究では,ランダムに生成された輪郭形状を実験参加者に提示し,「どちらがよりブーバ/キキらしいか」を選択させる二肢選択課題を行った.さらに,その結果のみから,探索的にブーバらしい/キキらしい形状の生成を試みた.
 本研究では複雑な輪郭形状を6次元のパラメータにより表現する.この6次元パラメータ(物理量)と「ブーバ/キキらしさ」(心理量)の関係は心理物理関数とみなすことができる.多くの場合このような心理物理関数の全体像は未知(ブラックボックス関数)であるが,総当たり的に多次元の物理量の全ての組み合わせに対する応答を収集することは,コスト的に不可能である.関数形を知る手がかりは,限られた回数の応答のみである.そこで,本研究ではガウス過程回帰を用いてこの心理物理関数の推定を行う.
 ガウス過程回帰はブラックボックス関数の推定に用いられる手法であり,近年では機械学習における高コストなハイパーパラメータ探索にも用いられている.このような場面で用いられる一般的なガウス過程回帰では,未知のブラックボックス関数からの応答を直接的に連続量で取得することができる.しかし,人間には評価の強度を連続量で回答することは困難であるため,一般的なガウス過程回帰をそのまま心理学的な検討に適用することは難しい.そこで,本研究では,二肢選択課題の回答データに基づいてガウス過程回帰を行う手法(Chu & Ghahramani, 2005)により,「ブーバ/キキらしさ」関数の推定を行い,ブーバ/キキらしい形状の合成を試みた.
方 法
実験参加者 実験参加者は4名であった.
刺激 実験参加者に提示する形状刺激は6つのランダムなパラメータをもとに作成した.輪郭のx,y座標値をそれぞれ周期関数とみなし,これらのフーリエ級数(第3調和まで)の係数により輪郭形状を求めた.ただし左右対称の形状にするため,x座標についてはcosのみ(これをb_nとした; nは調和と対応), y座標についてはsinのみを考慮した(これをc_nとした).b_n,c_nの探索範囲はそれぞれ-1≤b_1,c_1≤1,-0.5≤b_2,c_2≤0.5,-0.25≤b_3,c_3≤0.25-とした.
実験手続き 2つの刺激画像を画面上に並べて表示した.実験参加者には2つのうち「よりブーバらしい」と感じられた刺激をキー押しにより選択するよう指示した.1セッションは50試行から構成され,全て探索空間内でランダムに選ばれたパラメータから生成された2つの画像がそれぞれ提示された.実験は各実験参加者につき 1セッション行った.
実験アプリケーションは,PsychoPyで作成し,刺激の提示は液晶モニタで行った.

結 果
 ガウス過程回帰により,探索空間内全てのパラメータxに対する予測平均値および予測分散を実験参加者ごとに求めた.ただし,xは各パラメータについて0.1刻みで1予測平均,分散を求めたため,検討した地点は全部で1,920,996点であった.この際,ガウス過程回帰に用いるカーネルkのθは0.5とした.
k(x_i,x_j )=exp(-1/(2θ^2 ) ‖x_i-x_j ‖^2 )
 さらに,全実験参加者の応答を要約するため,パラメータxにおける各実験参加者iの予測平均値から平均予測平均μ_allxを求めた.これをもとに,μ_allxが最大値および最小値を取るxをそれぞれ求め,ここから平均的に最も「ブーバらしい」と判断される形状と最も「キキらしい」と判断される形状を合成した(図1).
考 察
 本研究では,多次元の形状パラメータと,形状に対する「ブーバ/キキらしい」評価の関係を表す心理物理関数を二肢選択ガウス過程回帰手法により検討した.その結果,一般的に知られるブーバ/キキ効果と矛盾しない結果が示された.本手法は多変量の物理量が関与する繊細な感性的評価・判断を包括的に検討する有効な手法となりうる.

参考文献
Ramachandran, V. S., & Hubbard, E. M. (2001). Synaesthesia--a window into perception, thought and language. Journal of consciousness studies, 8(12), 3-34.
Chu, W., & Ghahramani, Z. (2005). Preference learning with Gaussian processes. In Proceedings of the 22nd international conference on Machine learning (pp. 137-144). ACM.
本研究はJSPS科研費19K03375の助成を受けた.

キーワード
ブーバ/キキ効果/ガウス過程/形状


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