発表

1B-042

表情刺激による空間的注意の誘引に聴覚刺激が与える影響

[責任発表者] 竹島 康博:1
1:同志社大学

 多感覚情報の統合処理には注意の機能が関わっている (e.g., Talsma et al., 2010)。例えば,聴覚刺激を付随することによる視覚処理への促進効果は,視覚刺激への注意が関連していることが報告されている (e.g., Busse et al., 2005)。しかし,注意を引きつける対象であるネガティブ顔 (e.g., Ohman et al., 2010) を用いたこのような促進効果についての検討はまだ不十分である。さらに,ネガティブ顔の中でも恐怖顔と嫌悪顔では異なる注意の誘引特性をもつことも報告されている (e.g., Zimmer et al., 2016)。そこで,本研究ではネガティブ顔によって誘引された空間的注意が聴覚刺激による視覚処理の促進に関与するのか,またそこに恐怖顔と嫌悪かによる違いがあるのかを,ドット-プローブ課題を用いて検討することを目的とした。

方 法
実験参加者:学生24名(男性5名,女性19名)。
刺激:手がかり刺激として,KDEFデータベース (Lundqvist et al., 1998) より恐怖顔,嫌悪顔,中性顔の画像を各16枚ずつ (男女の顔を各8名ずつ) 選定して使用した。各画像の大きさは視角4.4°×6.0°であり,いずれもグレースケールに変換された。ターゲット刺激は白色の正方形で,大きさは視角1.0°×1.0°であった。画面の背景は黒色で,試行中は注視点と3つの長方形が常に提示された。注視点と長方形の1つは画面の中央に,残りの2つは左右に提示された。3つの長方形の中心間の距離は視覚8.5°とした。聴覚刺激にはホワイトノイズ (音圧は75dB) を使用した。
手続き:はじめに注視点と3つの長方形が500ms提示された後,左右どちらかの長方形内に手がかり刺激が100ms提示された。手がかり刺激の消失後,左右どちらかの長方形内にターゲット刺激が提示された。手がかり刺激とターゲット刺激の提示間時間間隔は50msもしくは 250msであった (SOAは150msもしくは350ms)。参加者の課題は,ターゲット刺激の提示の左右に対応したキーを素早くかつ正確に押すことであった。なお,ターゲット刺激は参加者の反応があるまで提示され続けた。音については提示されない条件 (tone-absent),音が手がかり (tone-on-cue) もしくはターゲット (tone-on-target) 同時に50ms提示される条件を設けた。。また,手がかり刺激とターゲット刺激の位置が一致の試行と不一致の試行が半数ずつであった。参加者は,2 (validity) × 2 (SOA) × 3 (cue) × 3 (tone) ×16試行繰り返しの計576試行を実施した。
結 果
 反応時間が200 ms未満および1000 msを超えているデータは,以降の分析から除外した。はじめに,条件ごとに正答率を算出したところ,いずれも97 %以上の成績となっていた。続いて,不一致試行と一致試行の反応時間の差分と95 %信頼区間を算出し,手がかりの効果について調べた(図1・2)。手がかり刺激によって一致試行の反応時間が不一致試行よりも速くなっていたのは,SOAが150 msでは手がかり刺激が嫌悪顔のtone-on-cue 条件のみであった (M = 20.99 ms, 95 % CI [4.12-37.86])。一方,SOAが350msでは手がかり刺激として恐怖顔 (M = 4.93 ms, 95 % CI [-11.97-21.86) と中性顔 (M = 0.43 ms, 95 % CI [-14.37-15.23]) のtone-absent条件を除いて,一致試行の反応時間が不一致試行よりも速くなっていた。
考 察
 実験の結果,SOAが350 msの時に,手がかり刺激と同じ位置にターゲット刺激が聴覚刺激とともに提示されることで反応が速くなっており,聴覚刺激による視覚処理の促進と注意の関連 (Busse et al., 2005) が確認された。しかし,表情刺激による特異的な効果は確認されなかった。一方,SOAが150 msの時には上記の効果は確認されなかったが,嫌悪顔の手がかり刺激を聴覚刺激と共に提示することで,ターゲット刺激への反応が促進された。恐怖顔ではこのような効果が生じなかったことから,聴覚刺激による手がかりの効果の増強には恐怖と嫌悪の注意誘引の時間特性の違い (Takeshima, 2017) が反映されることが明らかとなった。

キーワード
視聴覚相互作用/ネガティブ感情/空間的注意


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