発表

1B-041

自然な情景の中でのヒト検出
自動車検出との比較

[責任発表者] 遠藤 光男:1
1:琉球大学

目 的
 遠藤(2018)は,ヒト検出過程の特性を検討する目的で,自然の情景からヒト,または,ネコを検出することを参加者に課し,それぞれの情景の中に無関連刺激(以下,ディストラクタ)としてネコ,または,ヒトが存在したときの影響を比較した。その結果,両課題で,反応時間や眼球運動の総凝視数にディストラクタの影響が認められなかったが,ネコ検出課題においては,ヒト検出課題よりも有意にディストラクタ(ヒト)を凝視することが示された。今回は,同様のパラダイムを用いて,ヒト検出と自動車検出を比較することを試みた。
方 法
 参加者:大学生16名。8名ずつヒト検出課題と自動車検出課題に割り当てた。
 刺激:24の自然の情景の写真をもとに,ヒト,または,自動車が存在する刺激,ヒトと自動車の両方が存在する刺激,どちらも存在しない刺激の4種類を作成した。刺激の大きさは,いずれも21.8×16.3cmで,参加者は50cmの距離からアゴ台を用いて刺激を観察した。刺激内でのヒトの大きさ(縦×横)は,平均2.05×0.73 cmで,刺激中心からの距離は平均5.88cmであった。刺激内での自動車の大きさは,平均1.30×2.97 cmで,中心から距離は平均5.53 cmであった。ヒト,自動車が両方提示される場合の両者の距離は平均8.66 cmであった。
 装置:刺激提示とその時間制御,反応時間の測定に,モニタ(Iiyama)とMaBook Air, 心理学実験用ソフトSuperLab(ver5.0)を用いた。さらに,眼球運動測定のために,TalkEye Free(竹井機器)を用いた。
 手続き:参加者の課題は,提示された刺激の中にヒト(または,自動車)が含まれているかどうかを判断し,対応する反応キーをなるべく早く正確に押すことであった。試行の前に凝視点が刺激の4隅のいずれかに1s間提示された。刺激提示時間は参加者が反応するまでであった。8試行の練習を行った後に4の刺激タイプを6試行ずつ含む24の本試行を行った。各情景の4タイプの刺激は参加者間で同確率で提示されるように参加者に割り振った。
結 果
 エラーの試行(6%)を除いて結果の分析を行った。まず,各条件の平均反応時間を計算した(表1)。課題(2)×刺激タイプ(4)のANOVAの結果,2つの主効果のみが有意となった(p<.01)。課題では,ヒト検出より自動車検出の方が有意に早かった。刺激タイプの多重比較の結果,ターゲットが提示されていない刺激より提示されている刺激の方が有意に早くなった。その他の条件間には有意差はなかった。したがって,ディストラクタによる妨害効果は両課題とも認められなかった。
 各条件の総凝視数の平均は表2のようになった。課題(2)×刺激タイプ(4)のANOVAの結果,2つの主効果が有意となり(p<.05),それらの交互作用が有意傾向となった(p<.10)。交互作用の分析の結果,課題の単純主効果は全ての刺激タイプで有意となり(p<.05),自動車検出の方が有意に少なかった。刺激タイプの単純主効果はヒト検出のみで有意となり(p<.01),多重比較の結果,ターゲットがある場合の2条件の方がない場合の2条件より有意に早くなった。その他の条件間に有意差はなかった。したがって,この分析でもディストラクによる妨害効果は両課題とも認められなかった。
 条件毎にターゲット,ディストラクタを凝視した割合を計算すると表3のようになった。ターゲット,ディストラクタへのそれぞれの凝視率について,課題(2)×刺激タイプ(2) のANOVAを行った結果,ターゲットへの凝視率では,課題の主効果と課題×刺激タイプの交互作用が有意となった(p<.05)。交互作用の下位分析の結果,課題の単純主効果は,ターゲットのみが提示されている条件で有意となり(p<.05),ヒト検出の方が有意に高かった。刺激タイプの単純主効果では,自動車検出のみが有意傾向となり(p<.01),ターゲットとディストラクタの両方が提示されている方が有意に高い傾向があった。ディストラクタへの凝視率では,刺激タイプの主効果のみが有意となり,ターゲットが提示されている刺激よりそうでない刺激の方が有意にディストラクタを凝視する割合が多いことが示された。
考 察
 ヒト検出課題と自動車検出課題の両方で,反応時間や眼球運動の総凝視数に無関連刺激として提示された自動車,ヒトの影響が認められなかったが,両指標とも自動車検出の優位性が示された。これらは,自動車の方が提示された刺激がヒトより大きかったことが影響していたと考えられた。しかし,両課題でのディストラクタへの凝視率には差がなかった。そのため,ヒトの方が自動車より注意を捕捉する傾向がより強いことが示唆された。
文 献
遠藤光男 (2018). 自然な情景の中でもヒトは刺激駆動型注意を捕捉するのか. 日本心理学会第82回大会発表論文集, 429.

キーワード
ヒト検出/自然の情景/自動車検出


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