発表

1A-046

Point-Light Walker図の動作表現特性
統計的手法による解析の試み

[責任発表者] 鷲見 成正:1
1:慶應義塾大学

目 的
Johansson(1973)は歩行者の各関節部位に付けた光点の動きだけを示す映像から人の姿は無くても運動点だけで明瞭な歩行者の動きを認めることができた。Sumi(2000)は歩行者の肩腰膝踵に左右一対ずつ計8個の光点を付けて作成した映像でも明瞭な歩行者の動作が認められることから,点群から知覚される歩行人(Point-Light Walker:PLW)の性別と年齢についての判断を観察者(420名)に求めてみた。結果から,判断されるPLWの性別と年齢は元の歩行者から受け継がれたものではなくPLW独自の動作特性に基づくものであることが分かった。このPLWの動作特性は運動点間の協応的運動から明らかにされると考え,PLW図の左踵対応点(以下踵点)と右肩対応点(以下肩点)の協応図を作成し考察してみることにした。この協応データの解析には統計的手法が有効であることから(Sumi, 2016),主成分分析を適用することで新たな知見を得ることを目指した。

方 法
Sumi(2000)のPLW映像は背面に8個の光点を付けた歩行者8名(F18・F22・F24・F60・M19・M20・M27・M62;F/Mは女性/男性,数字は年齢を示す)がトレッドミル上を通常の速さで歩き背面からビデオカメラで撮影したものである。Sumi(2000)では画像計測機器(EMTEC)が使用され,PLWの肩点と踵点の位置変化を映像内座標系で測って右肩点X値と左踵点Y値を求めることができた。このSumi(2000)のデータを今回統計ソフトJMP(SAS社)に取り込むことで,新たにPLW協応図を作成し協応データの解析に主成分分析を適用した。

結 果 と 考 察
歩行者8名のPLW映像から歩行数ステップ中に生じる右肩点X値と左踵点Y値の散布図を描き協応図を作成した(図1AB)。協応図の形態に注目したためXY座標軸の目盛は省略されている。先にSumi(2000)で得られたPLWの性別判断から,女性歩行者のPLW映像からイメージされる歩行者が女性的と判断された%値を図1Aに,同じく男性歩行者についての%値を図1Bに示した。PLWの性別印象は元の歩行者とは必ずしも一致せずPLW独自の動作特性に基づくものである。足腰が鍛えられている運動選手は別として,一般に歩行運動では重心の移動が必須で左踵の持ち上げと右肩の横振れとは互いに協応関係にあるので,左踵点と右肩点が描く協応図は通常斜め右上がりの形をとって描かれる(図1AB)。もし両者が直線的比例関係にあるならばすべての点は斜め線上にプロットされるが,わずかなタイムラグが両者の間に存在するので協応図は輪ゴムのように開いた形,ねじれた形となって表れる。PLWの協応パターンは湾曲した(「く」の字に曲がった)楕円形が基本だが,湾曲度が増すと中国刀から鎌のような形になる(F18,M20)。一方,ねじれの形態をとるときには,その位置が歩行初期では団扇か杓文字の形となり(M19),歩行終期では洋梨か瓢箪の形となる(F24,F60)。湾曲とねじれの変数の組合せから各種協応図が描かれるが,主成分分析の第一主成分は踵/肩協応軸を示しそれと直交する第二主成分は楕円形の短径(膨らみ)を示す。第二主成分の寄与率が大きいと楕円は横に広がり身体の揺れが強く逆に寄与率が小さいとその幅は狭まり揺れが弱まる。PLWデータの第二主成分の寄与率は歩行者個人に備わる固有の身体的な「ゆらぎ」の表現特性と思われる。寄与率と年齢判断(平均とSD)との間に明確な結びつきは存在しない(図2)。

参 考 文 献
Johansson,G.(1973) Perception & Psychophysics,14, 201-211.  Sumi,S.(2000) Swiss J.Psychol.,59,126-132.  Sumi,S.(2016) 31st ICP, PS27A-05-205.

キーワード
バイオロジカル・モーション/動作表現/主成分分析


詳細検索