発表

1A-043

被写体の未完了動作が動画像群化に及ぼす効果
一般学生を対象とした集団実験による検討

[責任発表者] 鈴木 清重:1
1:東の森映画製作所

 目 的
 Suzuki & Osada(2002)より,顔と事物の動画像を連続提示する「クレショフ効果」型の映像で,被写体の未完了行動が事象のつながり(連続性の知覚)を促進する可能性がある。Suzuki(2016)は,顔と事物の模型を映した2種類の動画像を連続提示し,観察者が動画像間に知覚する連続性の評定値を測定した。独立変数は顔の運動条件(静止,未完了,完了)であった。結果は「顔」の未完了動作が動画像間の連続性評定を促進する可能性を示唆した。一方,鈴木(2017)は,被写体の未完了動作の効果が,映像制作経験者により顕著である可能性を示唆した。Suzuki(2016)の実験参加者は知覚心理学を専攻する学生であり,鈴木(2017)の参加者は映像制作経験者であった。映像観察の経験が少ない一般学生を対象に再現性を検討する必要がある。本研究の目的は,1)「顔」の未完了動作が,動画像系列の群化を促進するか検討し,2)俳優の未完了行動という群化法則が成立する前提条件を検討することであった。Suzuki(2016)と同様の材料と手続きを用いて一般学生を対象とした集団実験を行い先行研究と比較した。
 方 法
 実験参加者 実験参加者は,大学で心理学実験を学び始めた19歳から23歳(平均年齢 19.6歳, 標準偏差 0.9)の男性27名,女性31名であった。視力,矯正視力は正常だった。映像制作の経験を持たず,実験目的を知らなかった。
 材料 背景が濃灰色のHD動画像をスクリーンに投影した。白色のマネキンの頭部を映した「顔」動画像3種類(静止,未完了,完了, 各2s)と薩摩芋の模型と籠を映した「事物」動画像1種類(2s)であった。白色のマネキン頭部を雲台に固定し,ダイヤル操作(手動)により俯き(-4度)から正面(0度)へ動かした。スーツアクターの経験者が「自然なリアクション」を意図して複数回操作し,約80回の撮影で最も自然な動画像(約5s)を素材とした。静止条件は,素材中の1fを60回連続提示した。未完了条件は,素材中の4sを倍速提示した。運動成分のみを提示時間の中央から対称に配列し,開始から終了まで動き続けた。完了条件は,素材中の約1.5sのうち,1fの静止状態を330ms提示,2-22fを倍速提示,23-43fを通常再生,44fを330ms提示した。提示時間軸上に運動成分を非対称に配列し,静止で開始し急激に動いた後,ゆっくりと静止した。「事物」動画像(薩摩芋の模型と籠)は提示開始から終了まで,拡大103-100%の疑似カメラ動作(ズームアウト)があった。6種類の動画像間で,事物動画像の未完了性を一定に統制した。視角度数は観察距離により異なり,横18.7~32.5度 × 縦9.8~17.2度であった。画面の平均輝度は7.2cd/㎡であった。
 手続き 10グループによる集団実験を実施した。各動画像を単独条件,連続条件の順にランダムな順序でスクリーンに提示した。繰り返しは2回だった。単独条件では4つの動画像を単独で提示し,連続条件では4つの動画像を「事物-顔」もしくは「顔-事物」の順で連続提示した。映像は計10種類であった。実験参加者の課題は,1つの映像を観察した直後複数の評定を行うことであった。事前に練習を行い,時間制限は設けなかった。単独条件の課題は,a) 映像の内容に関する評定(自由記述),b) 映像の前後に続きがあるかに関する評定(選択法),c) 前後に続く映像内容の評定(自由記述)であった。連続条件の課題は,a) 動画像間に感じた連続性評定(つながる-へだたる,7段階評定尺度法),b) 映像の内容に関する言語記述(自由記述),c,e) 動画像間に感じた空間関係と時間関係の評定(選択法)であった。
 結 果
 単独条件での「未完了性」評定の選択肢は全映像に対して続かない(265件),後に続く(143件),前に続く(36件),前後に続く(20件)の順に多く選択された。「続かない」の評定度数は,4種類の映像内で「顔・未完了」が最も低く,次いで「事物・未完了」が低かった。前後,前,および後に「続く」という評定度数は,4種類の映像内で「顔・未完了」が最も高く,次いで「事物・未完了」が高かった。連続条件の動画像を水準とする1要因6水準の分散分析を行った結果,動画像の種類の主効果は有意でなかった(F(5,575) = 1.857, p = 0.10)。
 考 察
 実験参加者は,「未完了」条件の動画像を「未完了」と知覚したと考えられる。しかし,本研究の設定条件では未完了行動が動画像間の連続性を促進する現象を確認できなかった。Suzuki & Osada(2002)では背景の効果により言語記述が具体化した可能性があった。本研究の無背景の動画像では具体的な場面記述は相対的に少なかった。今後の課題は,1)未完了動作の効果に関する仮説に合致する事例,および合致しない事例から動画像群化の必要条件を探ること,2)未完了動作を知覚させる多様な技法を検討することである。

  引用文献
K. Suzuki, & Y. Osada (2002). The effect of movie
 editing on theperception of a movie: changing
 of the perceptual organisationof two shots
 [Abstract]. Perception, 31 (Suppl.), 125.
K. Suzuki(2016.10).Gestalt perception of events in
 serially presented motion picture shots: An
 experimental study on the factor of actor’s
 incomplete action in a video clip.
日本基礎心理学会第
 35回大会

キーワード
群化法則/事象知覚/クレショフ効果


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