発表

3C-044

事象関連電位P300による能動的注意制御機能測定の試み

[責任発表者] 朴木 優斗:1
[連名発表者・登壇者] 管 思清:1, 髙橋 徹:1, 仁田 雄介#:1, 小口 真奈:1
1:早稲田大学

【問題・目的】
 能動的注意制御機能は自ら注意をコントロールする能力のことを指し,抑うつ・不安を発症,持続させる認知的要因の一つと言われている(今井, 2015)。また,能動的注意制御機能は,「選択的注意」,「転換的注意」,「分割的注意」の,3つのコンポーネントから構成されている(Wells, 1997)。さらに,3つのコンポーネントはそれぞれ「注意の持続」,「注意の速度」,「注意の精度」という,注意の全般的機能から構成されている(今井, 2015)。上記の,能動的注意制御機能を測定する方法は主に以下の2点である。第一に,主観指標である,Voluntary Attention Control Scale(以下,VACS;今井, 2009)がある。VACSは質問紙尺度であり,3つのコンポーネントおよび注意の全般的機能の自己評定を測定できる。第二に,客観指標であるDichotic Listening Test(以下,DLT;富田, 2015)がある。DLTは行動指標であり,3つのコンポーネントのみ客観的な測定可能だが,注意の全般的機能の測定はできない。以上より,3つのコンポーネントおよび注意の全般的機能の両方が,測定可能な客観指標はないと考えられる。そこで本研究では,能動的注意制御機能の新たな測定指標として事象関連電位(以下,P300)P300を用いた。P300には以下の特徴がある。第一に,P300はオドボール課題により惹起される。第二に,P300の振幅は,オドボール課題に呈示される刺激に向けられた注意の深さを反映する。第三に,P300の潜時は,注意制御の処理時間を反映する(Kok, 2001; Polich, 2007)。以上のP300の特徴から,DLTとオドボール課題を統合させることで,能動的注意制御機能を測定するDichotic Listening Oddball Task(以下,DLOT)の作成を提案した。
 本研究の目的は主に以下の2点とする。第一に,P300を用いて,能動的注意制御機能の3つのコンポーネントと注意の全般的機能を測定するDLOTの作成を試みることである。第二に,DLOTを用いて測定した能動的注意制御機能と,抑うつ・不安との関連を探索的に検討することである。
【方 法】
<対象者> 11名(平均19.9±1.1歳)を分析対象とした。なお,本研究は「早稲田大学人を対象とする研究に関する倫理委員会」の承認を得て行われた(承認番号:2018-093) <質問紙> ①Voluntary Attention Control Scale(VACS; 今井, 2009)②Self-rating Depression Scale日本語版(SDS; 福田・小林, 1967)③新版State- Trait Anxiety Inventory Trait version日本語版(STAI-T; 肥田野, 2000) <実験課題> Dichotic Listening Oddball Task(DLOT): DLTとオドボール課題を参考にし,能動的注意制御機能を客観的に測定するために作成した。一般的なオドボール課題である「コントロール条件」,片方の音へ注意を向ける「選択的注意条件」,片方からもう一方の音へと注意を転換する「転換的注意条件」,両側の音へ注意を向ける「分割的注意条件」の4条件から構成されている。また,後半の3条件では,P300振幅の減衰率によって測定した「注意の持続」,課題反応時間によって測定した「注意の速度」,P300振幅から測定した「注意の精度」,無視している音のP300振幅から測定した「妨害刺激の受動的注意」,そして「P300潜時」の5つも測定した。 <手続き> 質問紙に回答後,DLOTを実施した。P300は,国際10-20法によるPzから測定した。
【結 果】
 P300振幅の個人差の影響を統制するため,DLOTのコントロール条件によるP300振幅を統制変数として,Spearmanの順位相関分析を行った。
 まず,能動的注意制御機能の主観指標と客観指標の関連について述べる。VACSにおける「選択的注意」と,DLOTにおける「選択的注意条件の注意の持続の低さ」との間に中程度の負の相関が見られた(ρ= .-55, p<.10)。VACSにおける「分割的注意」と,DLOTにおける「分割的注意条件の注意の精度の高さ」との間に中程度の負の相関が見られた(ρ=-.69, p<.05)。VACSにおける「分割的注意」と,DLOTにおける「分割的注意条件の潜時の長さ」との間に強い正の相関が見られた(ρ=.84, p<.01)。VACSにおける「分割的注意」と,DLOTにおける「転換的注意の妨害刺激への注意」とは中程度の負の相関が見られた(ρ=-.64, p<.05)。
 次に,能動的注意制御機能の客観指標と抑うつ・不安の関連について述べる。SDSと,DLOTにおける「P300振幅の持続性の低さ」との間に強い正の相関が見られた(ρ=.79, p<.05)。STAI-Tと,DLOTにおける「選択的注意条件の反応時間の長さ」との間に中程度の負の相関が見られ(ρ=-.65, p<.05),また,STAI-Tと,DLOTにおける「選択的注意条件の潜時の長さ」との間に中程度の正の相関が見られた(ρ=.65, p<.05)。
【考 察】
 選択的注意の自己評定の高さは,持続性の高さが関連しており,分割的注意の自己評定が高さは,分割的注意条件だけでなく転換的注意条件とも関連している可能性がある。以上から,自己評定と客観指標は必ずしも一致しているとは限らず,さらなる主観指標と客観指標の関係性を考察する必要がある。高抑うつ者は,コントロール条件ではあるが,P300振幅が持続せず,高不安者は,P300潜時は長いが反応時間は短い可能性がある。これらは一部先行研究(Yair, 2005; Singh, 2000)と一致する結果であるが,特性不安と振幅に正の相関が現れた先行研究(Enoch, 2001)とは一致しなかった。一方で,抑うつ・不安はDLOTで測定した能動的注意制御機能の箇所とは有意な関連が少なかった。今後は,より大きいサンプル数で解析することが求められる。

キーワード
能動的注意制御機能/事象関連電位P300/抑うつ不安


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