発表

2A-042

内受容感覚はミリ秒単位の時間知覚と関連するか?

[責任発表者] 浦口 真喜:1
[連名発表者・登壇者] マウリナ フェニエフィクトリアロンダン#:1,2, 大平 英樹:1
1:名古屋大学, 2:Department of Psychology, Atma Jaya Catholic University of Indonesia

目 的
 Meissner & Wittmann(2011)は,心拍カウント課題(Schan- dry,1981)で測定される身体内部の感覚(内受容感覚)が鋭敏なほど,8-20秒の時間再生課題における時間知覚が正確であることを示した。しかし1秒を超える時間の評価では,認知的負荷や数をかぞえる方略が結果に影響する。そこで本研究では,こうした要因の影響を受けにくいミリ秒単位の時間知覚においても内受容感覚の影響が見られるかを,基準時間と比較時間との異同を報告させる時間汎化課題を用いて検討した。時間知覚の指標として,物理的刺激時間と主観的時間との差と,主観的時間の精度を用いた。また,課題の難易度により内受容感覚の時間知覚への影響が異なるのかを確認した。さらに,脳の制御能力を反映すると考えられる安静時心拍変動性と時間知覚の正確さとの関連についても検討した。

方 法
実験参加者 大学生および大学院生34名がすべての条件の実験に参加した。分析は,データが欠損した2名と時間知覚精度の指標が平均より2SD以上離れていた2名を除く30名で行った(女性14名; 平均年齢 20.93歳,SD =1.55)。
安静時心拍変動性 安静5分間の脈波を計測し,心拍変動性諸指標(トータルパワー,低周波成分,高周波成分,低周波/高周波成分比,SDNN,RMSSD,平均心拍数)を計算した。
内受容感覚 脈波を記録しながら,実際に脈をとることはせずに25,35,45秒間の心拍を数える心拍カウント課題を実施した。脈波による測定心拍数と数えた心拍数との差を測定心拍数で割った絶対値を1から引いて心拍知覚スコアを計算し,3回の計測の平均値を内受容感覚の鋭敏さの指標とした。
時間汎化課題 刺激は500Hzのサイン波音を用い,基準刺激は600ミリ秒,比較刺激は易条件(150-1050ミリ秒の範囲で150ミリ秒間隔の7刺激)と難条件(375-825ミリ秒の範囲で75 ミリ秒間隔の7刺激)の2条件とした。長さを記憶するよう教示して基準刺激を5回聞かせた後,基準刺激を含む7種類の比較刺激を聞かせ,基準刺激との異同を報告させた。正誤のフィードバックは行わなかった。「基準刺激5回と比較刺激7種類を各1回」を1セットとし42セットを実施した。比較刺激は疑似ランダム系列を作成し全実験で提示順序を統一した。
正確さの指標 Klapproth & Wearden(2011)の方法に倣い,「基準刺激と同じ」と回答した比較刺激の長さを回答数で重みづけした平均を「主観的基準時間」とし,物理的基準時間との差を計算した。「主観的基準時間」と各比較刺激の差の2乗をその比較刺激を「基準刺激と同じ」と回答した数で重みづけした値を合計して平方根を求め,「同じ」の回答数合計で割った値を時間知覚の精度の指標とした。

結 果
内受容感覚との相関 易条件においても難条件においても,心拍知覚スコアは,主観的基準時間と物理的基準時間の差に有意に相関した(易条件: r = -0.376, p < 0.05,難条件:r = -0.457, p < 0.01)。心拍知覚スコアは時間知覚の精度とも有意に相関した(図1; 易条件:r = -0.535, p < 0.01,難条件: r = -0.370, p < 0.05)。心拍変動性諸指標と心拍知覚スコアの相関は有意ではなかった。
重回帰分析 主観的基準時間と物理的基準時間の差を目的変数,安静時心拍変動性諸指標および心拍知覚スコアを説明変数として条件ごとに重回帰分析を行ったところ,心拍知覚スコアが有意(易条件: p = 0.04,難条件: p = 0.000),難条件でのみ心拍変動性の低周波成分が有意(p = 0.03)となった。決定係数は,易条件が R2 = 0.1415,難条件が R2= 0.2909であった。時間知覚の精度を目的変数とする重回帰分析では,心拍知覚スコアが有意(易条件: p = 0.001,難条件: p = 0.019),心拍変動性の低周波成分が有意傾向(易条件: p = 0.066,難条件: p = 0.052)となった。決定係数は,易条件がR2 = 0.3722,難条件がR2 = 0.2512であった。

考 察
 課題の難易度によらず内受容感覚の鋭敏さと時間知覚の正確さの有意な相関が示され,先行研究と整合的な結果が得られた。ミリ秒単位の時間知覚には身体信号が関与していると考えられる。安静時心拍変動性は,低周波成分が時間知覚に関与する可能性が示唆された。低周波成分は血圧変動周期と同期している。心臓の収縮・拡張と時間刺激提示のタイミングが時間知覚の変動と関連しているのかもしれない。

引用文献
Klapproth,F. & Wearden,J.(2011)The Quarterly Journal of Experimental Psychology, 64,1646-1664; Meissner,K. & Wittmann,M.(2011)Biological Psychology, 84,289-297; Schandry, R.(1981) Psychophysiology, 18,483-488

キーワード
内受容感覚/心拍変動性/時間知覚


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