発表

1D-039

隠匿情報検査のためのセット内判定法で用いる確率分布の検討

[責任発表者] 山本 直宏:1
1:山形県警察本部

目的
 隠匿情報検査(concealed information test: CIT)は,呼吸や心拍数などの生理変化をもとに,被検査者が事件に関連する項目を認識しているか否か判定する検査である。CITでは,通常4~6個の質問項目を,提示順序を変えながら3~5セット繰り返す。
山本(2018)は,観測データから各項目が抽出された分布を推定し,セットごとに各項目の値を平均,当該項目のセット間の分散を分散とする正規分布から抽出されるデータの平均値に違いがあるか調べ,セット内で特定の項目に反応があるか客観的に評価する方法(セット内判定法:WS法)を考案した。山本(2018)は,この分布に正規分布を仮定したが,各項目が従う分布は必ずしも正規分布をしていない(Shibuya et al., 2018)。そこで本研究では,正規分布とノンパラメトリック分布(カーネル密度分布)を仮定し,それぞれの判定成績を比較した。

方法
シミュレーションデータ 質問項目数5,繰り返しセット数5のCITデータを1000回生成した。各CITデータは,認識あり条件はNc(-0.5, N[0,∞](1, 0.5))から裁決項目を5個,Nnc(0, N[0,∞](1, 0.5))から非裁決項目を20個抽出して生成した。認識なし条件はNnc(0, N[0,∞](1, 0.5))から非裁決項目を25個抽出して生成した。認識あり条件では,裁決項目と非裁決項目の効果量(Hedgesのg)が-0.5以下となるようにした。また,認識なし条件では,効果量の絶対値が0.5より小さくなるようにした。
判定手順 セットごとに第1位項目から第3位項目(それぞれr1, r2, r3とする)を決定し,r1とr2,r2とr3を比較した。値が同じ場合は,分散もしくはバンド幅が小さい項目を上位とした。正規分布法(WS_N)では,第iセットにおける第j項目の値をxij,質問項目jのセット間分散をsj2とし,項目ごとに,xijを平均,sj2を分散とする正規分布Nij(xij, sj2)からサンプルを抽出した。カーネル密度分布法(WS_K)では,第iセットにおける第j項目の値をxijとし,この確率分布に対象となるセットの項目の値xijを加えてカーネル密度確率分布(カーネル関数はガウス関数,バンド幅はSilvermanの0.9)を推定し,抽出分布とした。それぞれの分布から30サンプルを抽出し,抽出したサンプルの平均値を対応のあるt検定により比較することを,一対の比較につき1000回繰り返した。このようにして得た1000個のp値の95%点が5%未満の時,比較した一対の質問項目間には偶然では説明できない差があるとみなした。
 判定は,次により行った。⑴r1<r2ならば,r1に反応があると判定した。⑵r1=r2,r2<r3ならば,r1とr2に反応があると判定した。⑶r1>r2,r2<r3ならば,r2に反応があると判定した。⑷r1=r2,r2=r3ならば,いずれの項目にも反応がないと判定した。

結果
 方法ごとに裁決項目に反応が得られた数を条件別に表1に示した。また,表2に各方法のAUCを示した。認識あり条件ではWS_NよりWS_Kで多くの反応が得られる傾向にあったが,認識なし条件ではWS_NとWS_Kで反応が得られた数に大きな違いはなかった。WS_KのAUCは,WS_NやMMよりも大きかった。

考察
 WS_KのAUCは,WS_NやMMよりも大きく,認識の有無をより良く識別できることが分かった。よって,セット内判定法に用いる分布は,正規分布よりもカーネル密度分布を使う方が良いだろう。

キーワード
隠匿情報検査/セット内判定法/カーネル密度推定


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