発表

3C-043

性的児童虐待面接シミュレーションとフィードバックによる面接技術の向上

[責任発表者] 萩野谷 俊平:1,2
[連名発表者・登壇者] ポンペッダ フランチェスコ#:3, 仲 真紀子:4, アントフォルク ヤン#:5, サンティーラ ペッカ#:1
1:ニューヨーク大学上海校, 2:法政大学大学院ライフスキル教育研究所, 3:グロスターシャー大学, 4:立命館大学, 5:オーボ・アカデミー大学

【問題と目的】
 捜査面接技術の向上は国際的に重要な課題であり,欧米を中心とした発問方法の実証的知見を背景に,性的被虐待児童を想定したアバターへの面接シミュレーションを通して面接者を訓練するアバタートレーニングが開発され,その有効性が確認されている(e.g. Pompedda et al., 2014, 2017)。アバタートレーニングで用いる専用アプリケーションは,発問タイプ(誘いかけ,促しなど)と児童の返答内容に関する心理学的知見に基づく返答選択アルゴリズムを搭載している。トレーニングでは,面接者が口頭で自由に行った質問をオペレータが発問タイプにコード化し,入力されたコードを返答選択アルゴリズムが処理することで,アバターの返答が自動選択,再生される(Fig 1)。本研究では,アバタートレーニングの日本語版を開発し,その訓練効果を検証した。
【方 法】
 本研究では,大学生(n = 32: 遠隔)と警察官(n = 21: 対面)の2つのサンプルでアバタートレーニングの効果検証を実施した。
 大学生は,フィードバックあり群(F: n = 17)とフィードバックなし群(NoF: n = 15)のいずれかに割り当てられた。すべての参加者は,16体のうちランダムに選択した6体のアバターに対して,各アバターの虐待被害が疑われるに至った経緯の文章を確認した後,最長10分間の面接を実施した。さらにフィードバックあり群では,参加者は各面接後に事案の結末に関する情報と発問方法(面接中に使用されたオープン質問2問とクローズド質問2問の計4問)に関するフィードバックを受け取った。
 警察官は,4回面接群(4F: n = 10)と8回面接群(4NoF+4F: n = 11)のいずれかに割り当てられた。4回面接群では,参加者は4体のアバターに対して面接を行い,各面接の後に事案の結末と発問方法のフィードバックを受け取った。8回面接群では,参加者は4体のアバターに対する面接をフィードバックを受け取らずに行い,続けてさらに4体の面接をフィードバックを受け取りながら実施した。
【結 果】
 各面接で使用された質問に占めるオープン質問の割合を参加者ごとに算出した。各サンプルにおける条件ごとのオープン質問の割合の変動および誤差範囲として算出したガブリエル比較区間(Gabriel, 1978)をFig 2, 3に示す。
 ガブリエル比較区間は,区間同士の誤差範囲に重なりがない場合を有意差があるケースとして,視覚的に多重比較を行うことができる。Fig 2から,大学生では,4回目以降の面接において,フィードバックなし群に比べてフィードバックあり群で,有意にオープン質問の割合が向上した。Fig 3から,警察官では,4回面接群の2回目以降,および8回面接群の6回目以降の面接で,有意にオープン質問の割合が向上した。
【考 察】
 本研究では,遠隔,対面に関わらず,性的児童虐待面接のシミュレーションとフィードバックを組み合わせることでオープン質問の使用率が増加し,面接技術の向上が認められた。また,大学生と警察官で初回面接時のオープン質問の割合がほぼ同じ水準(約45%)であった一方で,4回目の面接では大学生(約60%)に比べて警察官(約80%)においてより大きな比率の向上を示した。その背景としては,(1)講義の一環としてトレーニングを受けた大学生に比べて,警察官は業務に活かされる訓練として受講したためより高い動機付けを有していた可能性,また,(2)警察官の多く(71%)が児童面接に関する専門研修の受講経験があり,その知識をトレーニングに用いることでより大きな改善となった可能性が考えられる。さらに言えば,専門研修の受講経験を有する警察官のサンプルにおいても訓練効果が認められたことは意義深い。現在,司法面接研修等の専門研修の受講者は年々増加しており,これら研修との相乗効果によって,現場で面接にあたる実務家の支援に寄与することが期待される。

キーワード
児童虐待/捜査面接/司法面接


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