発表

1D-037

犯罪手口がカーネル密度推定による犯行予測の精度に与える影響
-連続住宅対象窃盗事件に関する検討-

[責任発表者] 渡邉 和美:1
[連名発表者・登壇者] 平間 一樹:1, 横田 賀英子:1, 大塚 祐輔:1
1:科学警察研究所

目 的
 本研究では,連続住宅対象窃盗事件の犯行予測を検討した横田ら(2018)のデータを用いて,より有効と考えられたカーネル密度推定(KDE)で予測される最小予測面積に,犯罪手口が与える影響について検討することを目的とする.
方 法
 データ 
 横田ら(2018)が分析対象とした2009年1~9月に全国で検挙された単独による住宅対象窃盗犯の犯行地点の緯度経度情報とそれら事件の犯罪手口を研究に用いた.犯行間隔が6時間以内の発生をスプリー事件とみなし,スプリー事件は全体で1件とカウントして最初の犯行地点の情報のみを用いた.本研究では,犯行地点間距離の最大距離が500km以上であった1名を除外し,13件以上の犯行が確認された123人の1件目から13件目までの犯行地点の緯度経度情報を分析に用いた.
 分析方法 
 1~10件目を既知事件,11~13件目を予測事件とした.既知事件の犯行地点間の平均最近隣距離については,平均値4.26km(SD=7.65),最大値51.19km,最小値0.10km,中央値1.99kmであった.犯行地点の緯度経度はUTM座標系に変換し,犯行地点が複数のゾーンにわたる場合には,便宜的に既知事件の犯行地点数が最も多いゾーンを用いた.
 KDEによる最小予測面積(新規事件の犯行地点を予測するために必要とする予測領域面積)を予測の精度指標とした.既知事件の発生エリアを中心とした,発生エリアの9倍の領域を検索範囲とし,その1000万分の1を1セルのサイズとした.カーネル関数にはガウス関数を用い,バンド幅は既知事件の平均最近隣距離とし,予測対象事件のうち発生確率が最も高い地点に到達するまでに必要な領域面積を最小予測面積とした.予測事件3件すべてが検索範囲外もしくはKDE推定範囲外であった者が2人おり,以降の分析ではこの2人を除くこととした.
 犯罪手口については,既知事件10件について,犯行形態:空き巣,犯行エリア特徴:農漁村,犯行地環境:駅付近,道路環境:路地,対象建物:個人住宅,侵入方法:破壊侵入,被害者特徴:高齢者,窃取物:女性下着の8項目について該当の有無を確認し,該当ありが殆どを占めた空き巣,個人住宅については,空き巣のみ,個人住宅のみ,という変数にした.最小予測面積と各犯罪手口との関連について,Kruskal-Wallis検定を行った.距離に関する変数を統制しても犯罪手口が最小予測面積の大きさに影響を与えるかどうかを確認するために,最小予測面積と平均最近隣距離を対数変換した上で,最小予測面積と関連する犯罪手口の変数を用いて階層的重回帰分析を行った.
 空間統計では統計解析フリーソフトウエアR(ver.3.5.0)(R Development Core Team)を用い,ノンパラメトリック検定及び階層的重回帰分析ではSPSSver20.0を用いた.
結 果
 Kruskal-Wallis検定の結果,いくつかの犯罪手口は最小予測面積と関連していた(Table1).空き巣のみ,駅付近,破壊侵入,高齢者に該当する場合には,そうでない場合に比較して最小予測面積が大きくなり,女性下着に該当すると,そうでない場合に比較して最小予測面積が小さくなった.階層的重回帰分析により距離変数を統制して検討した結果,最小予測面積の大きさに犯罪手口が有意に影響を与えていた(Table2).具体的には,空き巣のみ,高齢被害者,女性下着の情報が最小予測面積の大きさに影響を与えていた.この結果は,連続住宅対象窃盗事件の犯行予測において,発生地点の緯度経度情報を用いて将来の犯行地点を予測する際に,犯罪手口を考慮する必要があることを示唆している.今後は,認知時に把握可能な時間情報を含めた検討のほか,複数の犯罪手口の構造を考慮した犯行スタイルとの関連を検討する必要がある.

参考文献
横田賀英子・平間一樹・大塚祐輔・和智妙子・渡邉和美(2018)連続住宅対象窃盗の犯行地予測の手法に関する検討.犯罪心理学研究,56(特別号),50-51.

キーワード
犯行予測/カーネル密度推定/犯罪手口


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