発表

1D-036

セクハラ加害者の地位が被害者非難に与える影響

[責任発表者] 柴田 侑秀:1
[連名発表者・登壇者] 中谷内 一也:1
1:同志社大学

目 的
 近年,いわゆる#metoo運動に代表されるように,性犯罪やセクシャル・ハラスメントの問題が社会的に注目されている。このような被害において特に問題となるのが,被害者が被害を訴え出にくいことである。加藤 (2018) はこの原因のひとつを,被害を告発した被害者に対するバッシング,被害者非難が巻き起こるためであると指摘している。
 従来,被害者へ対する非難に関係する要因として主に研究されてきたのは,被害者の職業 (小俣, 2013) や人種 (Correia, Vala & Aguiar, 2007) といった被害者の特徴であった。しかし,セクハラは,その多くが地位の高い加害者と相対的に地位の低い被害者との間に起こるものであることから,加害者側の特徴に焦点をあてた研究が必要あると考えられる。
 Callan, Harvey, & Sutton (2014) は,架空のシナリオを使用した実験で,シナリオ中の犯罪の加害者が逮捕されているとき,加害者への非難が起こるので相対的に被害者は非難されにくくなることを示している。加害者への非難が被害者非難の低減の寄与するのであれば,加害者が非難されにくいと考えられる高い地位にいる場合,そうでない場合と比較して被害者は非難されやすくなると予想される。
 しかし,一方では,#metoo運動における反応に代表されるように,加害者の地位の高さがこそが,加害者を非難する強い要因となるケースもある。
 そこで本研究は,加害者の社会的地位が,被害者への非難へ影響を及ぼすかを探索的に検討する。

方 法
 回答者は276名 (平均年齢19.93歳, SD = 1.22)。性別を回答しなかった4名を除いて,男女136名ずつだった。調査はWeb上で行われた。
 回答者は,まず,大学生の女性がセクハラの被害を訴え出たという架空のシナリオを読んだ。シナリオは,加害者の地位が異なるものをランダムに提示された (高群: 加害者は大学教授。低群: 加害者は大学院生)。
 回答者はシナリオを読んだあと,被害者と加害者それぞれへの印象を回答した。被害者の非難は,“女性の主張は大げさである”と”女性には,その被害について落ち度がある”の2項目で,加害者の印象は4項目で尋ねられた。その後,公正世界信念尺度 (村山・三浦, 2015) へ回答した。回答は全て,「1:まったくそう思わない」から「6:かなりそう思う」の6件法だった。

結 果
 それぞれの尺度の一貫性を検討したところ,加害者への印象を尋ねる4項目と公正世界信念尺度の2つの下位因子はαs > .832であった。そのため,それぞれの尺度について,得点を平均し1つの指標として利用した。
 被害者非難に対する影響を検討するために,被害者非難の項目それぞれを従属変数とする重回帰分析を行った。その結果をTable 1に示す。
 Table 1から,“主張は大げさ”に対しては,加害者の地位の主効果と,加害者の地位と内的公正世界信念の交互作用が有意だった。単純主効果の検定を行ったところ,単純主効果は有意ではなかった。
 また,”落ち度がある”に対しては,加害者の地位の主効果のみが有意だった。このことから,被害者非難に対しては,加害者の地位が総じて有意な負の影響を与えていることが明らかになった。

考 察
 本研究の結果から,回答者は,加害者の地位が高い場合に,被害者の主張は大げさではなく,被害者に落ち度があるとも思わない傾向があることが明らかになった。
 また,加害者に対する非難は,被害者非難へ影響しなかった。このことは,Callan et al.(2014) の示唆とは異なる結果である。
 最後に,本研究では,公正世界信念が一部の交互作用を除いて,被害者非難に影響しなかった。これは内的公正世界信念が被害者非難と関連しないとした村山・三浦 (2015) の結果を再現するものである。
 村山・三浦 (2015) は,実験上のシナリオにおいて,加害者が明確になっている場合,加害者に触れられていないシナリオを使用した場合と異なり,内的公正世界信念が被害者非難に影響しなくなることを指摘している。しかしながら,本研究では,加害者への非難は被害者非難と関連しなかった。このことから,加害者の存在は何らかの過程によって被害者非難に影響しているものの,本研究が示すように,少なくとも加害者を非難することによってではないことが示唆される。

キーワード
セクシャル・ハラスメント/被害者非難/公正世界信念


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