発表

1A-038

なぜ彼女たちは裸の写真を送るのか
「自画撮り写真」を送付した児童としなかった児童の回答から

[責任発表者] 藤原 佑貴:1
[連名発表者・登壇者] 宮寺 貴之:1, 久原 恵理子:1
1:科学警察研究所

目 的
 近年,自画撮り被害が増加している。自画撮り被害とは,相手に脅される等して,18歳未満の児童が自分の下着姿や裸の写真をスマートフォン等で撮影させられ(「自画撮り写真」とする),送付させられる児童ポルノ事件の被害である。被害対策が喫緊の課題となっているものの,自画撮り被害に関する調査研究は国内ではほとんど行われていない。
 海外では,自画撮り写真を送付した児童の特徴等について検討が行われている(Cooper, et al., 2016)。しかし,主に自画撮り写真を送付した児童とその他一般の児童との比較が行われており,検討にあたって送付と関連し得る変数の統制が十分に行われているかどうかは疑問である。また,自画撮り写真を送付した相手と児童との関係性については,十分に明らかにされていない(Ouytsel, et al., 2018)。
 そこで本研究は,自画撮り写真を依頼されて送付したケースと依頼されたが送付しなかったケースに焦点を当てる。そして,相手との関係性を含めて,自画撮り写真を送付したケースの特徴と,送付を予測する要因を明らかにすることを目的とする。

方 法
 参加者と手続き 全国の中学生,高校生相当年齢(12歳から18歳)の女子10,000名に対して訪問留置調査を実施し, 5,968名から回答が得られた。このうち自画撮り写真を依頼されたことがあると回答した308名(0.05%, 平均15.75歳, SD=1.48)を分析の対象とした。自画撮り写真を依頼されて送付したことのある者は,うち67名(21.75%)であった。
 調査項目 Table 1に示したとおりであった。相手からのサポートは細田・田嶌(2009),自身の性的魅力に対する満足度は草野(2007),家庭と学校(職場)における孤独感は中村(2011),養育認知のうちモニタリングと統制は内海(2013),養育認知のうち受容は姜・酒井(2006)から,いずれも抜粋して改変した。その他の項目は独自に作成した。

結 果
 自画撮り写真の送付経験の有無によって,各変数に差があるかどうかを検討した。結果をTable 1に示す。自画撮り写真を送付した児童のケースでは,依頼されたが送付しなかった児童と比べて,相手との年齢差が大きく,相手が恋人であった割合が高く,相手からの連絡が頻繁であり,相手との性的経験及び相手からのサポートが多く,相手に対する信頼が高かった。また,児童の自画撮り写真の送付に対するリスク認知が低く,孤独感が高く,養育認知のうちモニタリングと受容が低かった。
 続いて,自画撮り写真の送付を予測する変数を検討するため,自画撮り写真の送付の有無を従属変数,児童の学年及び相手とインターネットで知り合ったかどうかを統制変数,上記の分析で有意差のみられた変数を独立変数として,ロジスティック回帰分析(変数増加法)を行った。結果をTable 2に示す。相手とインターネットで知り合った場合ほど,相手に対する信頼が高いほど,自画撮り写真の送付に対するリスク認知が低いほど,そして学校(職場)における孤独感が高いほど,自画撮り写真を依頼された場合に送付しやすいことが明らかになった。

考 察
 本研究の結果,学校(職場)における孤独感の高さがリスク因子の1つであることが明らかになった。孤独を感じているが故に,写真を依頼してきた相手を繋ぎとめたいという心理が働くものと推察される。被害防止対策として,学校等において孤独感が高いと思われる児童に周囲の大人が気を配ることが必要であろう。更に,自画撮り写真の送付に対するリスク認知を高める必要性も示された。
 また,自画撮り写真を依頼してきた相手への信頼の程度と,相手とインターネットで知り合ったかどうかが送付を予測する有意な変数であったが,相手への信頼の高低により,あるいは相手とインターネットで知り合ったかどうかにより,送付を予測する変数が異なる可能性もある。今後は,このような関係性の違いによって参加者を分けて分析することも必要である。

キーワード
自画撮り被害/セクスティング/青年期


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