発表

1A-037

潜在連合テスト(IAT)による隠匿情報検査(CIT)の試み(2)

[責任発表者] 水師 葉月:1
[連名発表者・登壇者] 古満 伊里:2
1:広島修道大学, 2:広島修道大学

 序論
 日本の犯罪捜査機関が使用する隠匿情報検査(Concealed Information Test; CIT)は,心拍数,呼吸数などの生理反応を指標とする。しかしこの検査の施行には時間を要し,一度に複数人の測定も困難である。そこで近年注目されているのが反応時間を指標としたCIT(RT-CIT)である。RT-CITはパソコン1台で,しかも複数人同時の検査が可能である。本研究では,反応時間による潜在連合テスト(Implicit Associa-tion Test; IAT)を使用してCITを試みる。IATは対象概念(例えば,花と虫)と属性概念(例えば,ポジティブ語とネガティブ語)の連合強度を,それぞれの概念に属している刺激語の分類に要する時間によって測定するテストである。
 本研究では,実務のCITと同様,裁決項目と非裁決項目を刺激としたIATにより,犯罪関与者の検出可能性を検討した。実務では裁決項目1項目と非裁決項目5項目程度用意するが,今回はそれぞれ1項目ずつで検討した。
 方法
実験参加者:学生41名,そのうち21名は模擬窃盗を行う有罪群(M = 21.7歳,SD = 5.6),その他20名は無罪群(M = 20.3歳,SD = 0.9)であった。
模擬窃盗課題:有罪群には「ある部屋に侵入し,金目の物を盗む」ように指示した。金目の物とはイヤリングであった。
IAT:対象概念は『イヤリング』『腕時計』,属性概念は『盗んだ』『盗んでいない』であった。『イヤリング』『腕時計』の各刺激は各々を5方向から撮った写真であった。『盗んだ』に対する刺激語は「窃盗」「盗品」「窃取」「泥棒」「有罪」,『盗んでいない』に対する刺激語は「潔白」「無実」「無根」「無罪」「冤罪」であった。IATは7ブロックから構成し,そのうち第4,第7ブロックは本試行であり,その他のブロックは練習試行であった。『イヤリング』-『盗んだ』(『腕時計』-『盗んでいない』も同時に呈示される)は一致条件,『イヤリング』-『盗んでいない』(『腕時計』-『盗んだ』も同時に呈示される)は不一致条件である。一致条件,不一致条件の試行順序は実験参加者間でカウンターバランスした。
 結果 及び 考察
 IATにおける誤答率が15%以上かつ本試行の一致条件の平均反応時間が600ms以下あるいは1000ms以上の参加者を除外した結果,分析対象者は有罪群14名,無罪群16名であった。
 平均反応時間を従属変数として群(有罪群,無罪群)×条件(一致条件,不一致条件)の2要因混合分散分析を行った(Figure 1)。その結果,群と条件の交互作用が有意であった(F (1, 28) = 4.61, p < .05)。群の主効果及び条件の主効果は有意でなかった。下位検定の結果,有罪群では一致条件と不一致条件との差は有意でなかったが,無罪群では有意であった(F (1, 28) = 5.89, p < .05)。つまり,一致条件よりも不一致条件の連合において有意に反応時間が速く

連合強度が強いことを示した。有罪群は一致条件の連合強度が強く,無罪群は一致条件と不一致条件の連合に差はないことを予測していた。裁決項目を『イヤリング』のみとしたことが結果の偏りに影響した可能性や模擬窃盗課題による一致条件の連合の活性化が不足していることが考えられる。
 次に,対象概念と属性概念の連合強度を表すDスコア(Greenwald et al., 2003)を算出した。Dスコアの理論的中央値は0であり,値がマイナスかつ絶対値が大きくなるほど一致条件の連合が強く,値がプラスかつ絶対値が大きいほど不一致条件の連合が強いことを示している。つまり,Dスコアの値がマイナスの場合に犯罪情報を有していることを意味する。有罪群のDスコアは0.01(SD = 0.37),無罪群は0.38(SD = 0.31)であり,対応のないt検定の結果,この差は有意であった(t (28) = 2.89, p < .01)。有罪群のDスコアはマイナスになることを予測していたが,前述の通り一致条件の連合が不足していたため,予測した結果には至らなかったと考えられる。
 犯罪情報を有しているかどうかをDスコアの値で判定した。有罪群のうち犯罪情報を有していると判定した参加者をヒット,有罪群のうち犯罪情報を有していないと判定した参加者をミス,無罪群のうち犯罪情報を有していることを判定した参加者を誤警報,無罪群のうち犯罪情報を有していないと判定した参加者を正棄却とした。その結果,ヒット6名,ミス8名,誤警報2名,正棄却14名であり,CITにおける検出率は66.7%となった。
 以上の結果は,犯罪関与者の検出が困難であることを示す一方で,犯罪非関与者の検出は可能であることを示し,IATによるCITの可能性を示すものと言える。今後の研究では,裁決項目をカウンターバランスした上で結果を再検討する。また,課題に対する動機づけを高める工夫が必要である。例えば,模擬窃盗課題をより複雑な課題にすることが考えられる。さらに,IATにおいて1000ms以上になるとアラームで警告し自動的に次の試行に移るといった時間制限を設ける工夫も考えられる。

キーワード
潜在連合テスト/隠匿情報検査/反応時間


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