発表

3D-024

コンパッショントレーニングが慈悲への恐れに与える影響に関する文献レビュー

[責任発表者] 内田 太朗:1
[連名発表者・登壇者] 仁田 雄介#:2, 髙橋 徹:2
1:早稲田大学, 2:早稲田大学

  【背景】
 慈悲 (compassion) とは, 「生きとし生けるものに対して幸せを与えたい, 苦しみを取り除きたいという心の作用」すなわち「自他の抜苦与楽の心」である。臨床心理学領域において, 慈悲の主な研究対象は, 「他者への慈悲」と, 「他者からの慈悲」, そして「自分への慈悲」の3つの方向性である。慈悲の涵養を目的とした介入プログラム (Compassion training) によって, 慈悲の特性を高めることができることが示されてきたため, 様々な慈悲を涵養する介入プログラムが考案されてきた。
 また, 慈悲の涵養を阻害する要因も検討されている。Fears of Compassion (FC) とは, 「慈悲に対する抵抗や恐れ」である。上記の慈悲の3つの方向性を踏まえ,FCの程度を測定するFears of Compassion Scale (FCS) が開発された。FCSを使用した調査研究を対象にしたメタ解析では, 「抑うつや不安などの心理的不健康」と「他者へのFC」は弱い正の相関が示され, 「心理的不健康」と「他者からのFC」および「自分へのFC」は中程度の正の相関が示された。
 現在までに, FCに関する介入研究に着目したレビュー論文は存在しない。そこで, 本発表では, 「Compassion trainingがFCに与える影響」を検討した知見をまとめることを目的とする。
    【方法】
 Web of ScienceおよびScience Directにて, “Fears of compassion”または”Fear of compassion”をキーワードとして検索を行ったところ,計93件の文献および研究が抽出された。そして,「重複しているものを除外」「学術論文でないもの」を除外基準とし, 「Fears of compassionを測定対象としている」「Compassion trainingプログラムに関連した介入を行った論文」「結果および考察が論じられている論文」を選定基準とし, 適合した6件の論文をレビューの対象とした。
     【結果】
 まず, 単一の群を対象とした, 3件の介入研究をレビューする。
 Krieger et al. (2016) では, 自己批判で苦しむ人を対象に, 8週間のオンライン上でのMindfulness-Based Compassionate Living ( MBCL) プログラムを実施した。結果, 介入前後でFCSの得点が有意に減少し, 介入後から6週後のフォローアップ期間までFCSは減少したまま維持されていた。
 Scarlet et al. (2017) では, ヘルスケアの仕事をしている人を対象に, 8週間のCompassion Cultivation Training (CCT) を実施した。介入前後でFCSの得点が有意に減少し, 介入後から1ヶ月のフォローアップ期間まで減少は継続していた。
 Martins et al. (2018) では, 統合失調症患者を対象に, 12週間のCOMPASSプログラムを実施した。結果, 介入前後で「自分へのFC」の得点のみ有意に減少した。
 次に, ランダム化比較試験を実施した3件の介入研究をレビューする。
 Kelly et al. (2017) では, 摂食障害患者を対象に, ランダム化比較試験を用いて, 12週間のグループCompassion Focused Therapy (CFT)の介入効果を検討した。結果, CFT群のみにおいて「他者からのFC」および「自分へのFC」の得点が介入後に有意な減少した。
 Matos et al. (2017) では,健常者を対象に, ランダム化比較試験を行い, 2週間のCompassionate Mind Training (CMT) プログラムの介入効果を検討した。結果, CMT群のみにおいて, 介入前後でFCSの得点が有意に減少した。
 Krieger et al. (2018) では, 自己批判に苦しむ人を対象に, ランダム化比較試験を用いて, オンライン上での8週間のMBCLプログラムのを実施した。介入前後のFCSの得点に関して効果量を算出した結果, MBCL群のみに中程度の効果量が示された。
   【考察】
 Compassion trainingを実施した6件の介入研究全てにおいて, FCS全体の得点あるいは, FCSの下位因子の部分的な改善が示された。
   【引用文献】
 Kelly, A. C., Wisniewski, L., Martin-Wagar, C., & Hoffman, E. (2016). Group-Based Compassion-Focused Therapy as an Adjunct to Outpatient Treatment for Eating Disorders: A Pilot Randomized Controlled Trial. Clinical Psychology & Psychotherapy,24(2), 475-487.
 Krieger et al. (2016). Working on self-compassion online: A proof of concept and feasibility study. Internet Interventions,6, 64-70.
 Krieger et al. (2019). An Internet-Based Compassion-Focused Intervention for Increased Self-Criticism: A Randomized Controlled Trial. Behavior Therapy, 50(2), 430-445.
 Martins et al. (2018). Recovery through affiliation: A compassionate approach to schizophrenia and schizoaffective disorder (COMPASS). Journal of Contextual Behavioral Science, 9, 97-102.
 Matos et al. (2017). Psychological and Physiological Effects of Compassionate Mind Training: A Pilot Randomised Controlled Study. Mindfulness, 8(6), 1699-1712.
 Scarlet et al. (2017). The effects of Compassion Cultivation Training (CCT) on health-care workers. Clinical Psychologist,21(2), 116-124.

キーワード
慈悲への恐れ/コンパッショントレーニング


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