発表

3D-022

場面緘黙当事者・経験者の生活上の困難と発話の程度

[責任発表者] 田中 佑里恵:1
[連名発表者・登壇者] 船曳 康子#:1
1:京都大学

【目的】
 場面緘黙(選択性緘黙)とは,話す能力があるにも関わらず,話すことが期待される特定の社会的状況で話すことが一貫してできない状態である。予後について,後遺症や二次的な問題の存在が指摘されているが(久田・浜田,2015),具体的に明らかになっていない。本研究では場面緘黙当事者・経験者への調査を行い,日常生活上での困難な行動や活動とともに,予後を含めた発話の症状の程度を明らかにする。
【方法】
参加者 場面緘黙当事者・場面緘黙経験者271名(男性49名,女性215名,その他7名,13-55歳,平均年齢=26.98歳,SD=8.53歳;当事者=現在場面緘黙である者107名,経験者=過去に場面緘黙だった者163名,不明1名)が参加した。自助グループやSNSを通して依頼し回答を得た。
質問項目 ウェブ調査にて,以下の項目に回答を求めた。
(1)現在一番話しづらさを感じる環境 自作の環境11項目から単一回答を求めた。
(2)現在一番話しづらさを感じる環境で,行動・活動をするときの難易度 自作の行動・活動29項目について6件法(1:とても簡単だ-6:とても難しい)で評定を求めた。
(3)SMQ-R(場面緘黙質問票;かんもくネット,2011) 発話の程度を尋ね,現在と場面緘黙の症状が一番強かった頃についての自己評価を求めた。教示を一部改変し,学校や職場5項目,家庭や家族6項目,社会的状況(学校や職場以外)5項目を4件法(0:全くない-3:いつも)での評定とした。
【結果】
(1)現在一番話しづらさを感じる環境として,回答者全体では,職場(38.0%)と学校(22.1%)が多く選択された(表1)。就業者では職場(就業者の64.7%),学生では学校(学生の75.3%)が最も多く選択された。
(2)29項目の行動・活動における難易度評定の平均値を算出した。回答者全体での一要因分散分析の結果,行動・活動の主効果は有意(p<.001)であり,多重比較の結果,表中の項目間に有意差が見られた(p<.05)(表2,3)。「複数の人の前でスピーチをする」「3人以上の会話で発言をする」「雑談をする」「周囲の複数の人に聞こえるくらい大きな声で話をする」が最も平均値の高い項目のまとまりに含まれた。また,当事者と経験者間での対応のないt検定の結果,29項目すべてで当事者のほうが有意に高かった(p<.05)。
(3)現在の場面緘黙の症状の強さについて,「現在よりも症状の強い時が,過去にあった」者が240名(88.6%)であった。症状が一番強かった頃の年齢は,平均10.48歳(SD=3.94)であった。SMQ-Rについて,状況ごとまたはすべての状況の合計得点の平均値を,当事者・経験者別に算出した。現在と場面緘黙の症状が最も強かった頃の間での対応のあるt検定の結果,すべての状況または合計において,現在のほうが有意に高かった(p<.001)(表4,5)。
【考察】
 参加者の当事者・経験者は,9割近くの者が過去よりも場面緘黙の症状が改善したと感じており,その発話の程度は症状が一番強かった頃よりも有意に増えていた。一方,現在も学校や職場といった参加する機会・時間の多い社会的な場で,当事者・経験者ともに今回難易度が高く評定されたような行動・活動に困難を感じている。当事者では今回の全項目についてより難しさを感じる程度が大きい。発話の程度の改善のみならず,予後も含め,生活場面での適応に着目した研究や支援の必要性が示唆される。今後,生活上の行動・活動をする際の場面緘黙当事者・経験者の心理について,関連が大きいとされる社交不安との比較を含めて明らかにしていく。
【引用文献】
久田信行・浜田貴照(2015).かんもくの会(場面緘黙)
 精神科,26(3),210-213.
かんもくネット(2011).SMQ-R(場面緘黙質問票)
 http:/kanmoku.org/tool.html.

キーワード
場面緘黙/行動/発話


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