発表

3C-037

一般大学生における「発達障害」概念に関する検討

[責任発表者] 谷口 あや:1
[連名発表者・登壇者] 山根 隆宏:2
1:神戸大学大学院/日本学術振興会特別研究員DC1, 2:神戸大学

問題と目的
 「発達障害」とは発達障害者支援法が定義するところによると多様な障害を含んだ包括的な概念である。発達障害に関して詳細な知識を持たない人々にとっては,個別の診断名が大きな影響を持たないことがこれまでの研究から示唆されている(谷口,山根2018など)。このことから,一般の人々は,「発達障害」という大きな枠組みで発達障害を捉えており,「発達障害」という概念に個人の持つ多様な障害概念を当てはめている可能性が考えられる。
 ところで,しろうと理論とは,日常生活での様々な事物に対して人々が持っている素朴な概念のことである(Furnham,1988)。人々は一度内在化したしろうと理論を無意識のうちに各問題に適用し,その理論にかなう形で特定の感情の表出や行動をとることが明らかにされている(Averill,1980)。 
 本研究では,一般の人々にとって多様な概念が存在していると想定される「発達障害」がどのような概念であり,社会においてどのような役割を与えられているかを明らかにするために,テキストマイニングを用いて発達障害に関するしろうと理論の検討を行った。
方法
 関西圏の大学に在学する大学生346名(男性114名,女性227名,回答無し6名)を対象に質問紙調査を実施した。調査手続きに関しては,勝谷ら(2011)のうつに対するしろうと理論に関する調査を参考とした。 授業内で質問紙を配布し,調査実施者の指示に沿って行った。文章完成法を用い,2分間の制限時間内で「発達障害」の語に続いて,調査協力者の思いつく文章や単語を記述するように求めた。
分析
 記述内容の分析にはKHコーダー(樋口,2014)を用いてテキストマイニングを行った。
結果と考察
 調査協力者における平均記述数は2.70(SD=1.63)あった。総記述語数3482,異なり語数843を抽出した。語の出現回数に関して,出現回数の平均は4.13(SD=13.03)であった。
 初めに頻出語の確認を行った(Table1)。最頻出の名詞である「人」(217回)について,どのような人に関する記述があるかを調べるために「人」と共起している形容詞・形容動詞を検討した。「人」と共起していた形容詞・形容動詞は「多い」,「強い」,「明るい」,「真面目」,「素直」等であった。具体的な記述をみると「発達障害はちょっと変わった人が多い」「発達障害は何か別の才能が突出している人が多い」,「発達障害は素直で明るい人が多い」などの記述が見られた。
 次に,記述の全体的な傾向を探るために出現数が15回以上の語を用いて,階層的クラスタ分析を行った。距離の推定法はJaccard距離,クラスタ化の方法はWard法を用いた。結果をTable2に示す。
 最小出現数15までの25語を用いて分析したところ,5つのクラスタに分類された。クラスタ1には,「支援」「必要」という発達障害児者に対して必要とされる事柄への語が集まっている。クラスタ2には「社会」「理解」「周囲」などの発達障害児者への社会的な視点に関わる語が集まっている。クラスタ3には「子」「親」など家族に関する語,クラスタ4には「わかる」などの周囲者の視点,クラスタ5には「人」「差別」「知る」「ADHD」など人々の日常生活に関わる語や,具体的な障害名に関わる語が集まっていると考えられる。
総合考察
 テキストマイニングの結果から発達障害児者には多様な「人」がいるという概念が存在することが示唆された。栗田・楠見(2012)によると,障害者に対しては,ポジティブな人柄に関するステレオタイプが存在しており,本研究において,発達障害の頻出語である人が「明るい」や「素直」といった語と共起していることは,この知見と一致していると考えられる。
 また,階層的クラスタ分析の結果,発達障害概念は5つのクラスタに分類されることが確認された。
 今後は意味的な分析を行うことでより詳細に発達障害概念を明らかにしていくことを検討している。

キーワード
発達障害/しろうと理論/態度


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