発表

3C-036

心理的問題に対する大学生の態度
学科による比較

[責任発表者] 高城 絵里子:1
[連名発表者・登壇者] 植松 晃子:1, 橋本 和幸:2
1:ルーテル学院大学, 2:了徳寺大学

問題と目的
今日,学生相談では大学生の心理的問題に対する予防と早期介入が急務となっている。何らかの問題を抱えた際に他者に援助を求めることは,援助要請行動(help-seeking behavior)とされ(水野・石隈, 1999),特に心理的問題に対して専門的援助を求めることについては,これまで偏見やソーシャルサポートの少なさなどがその要因として検討されている(eg.,Vogel et.al, 2007)。また,大学生の心理的問題に関する援助要請態度について検討した植松ら(2017)は,有能でありたいと考えるほど心理の専門家を求めると同時に,自分が悩むことを抑え,悩みを回避する傾向も高まるという大学生の両価的特徴を明らかにし,青年期の心理的特徴の一側面として考察している。 
大学学生相談領域の研究では,その相談内容の特徴や学年による差などは検討されているが(eg.,内野ら,2011),学生が関心を持っている専門性による特徴を明らかにした研究はあまり見られず,吉田(2013)による学科間の差異検討に限られている。近年,対人援助職のバーンアウト研究が進み,また,対人援助職の援助要請行動については独特の抵抗感の存在も指摘されている(大畠・久田,2009)。よって,職業人としての準備段階にある大学生についても,その専門性の違いに着目して援助要請の特徴および悩み方を把握しておくことは,学生相談を行う上で,また職業人となってからの心理的問題を予防する観点からも有益であると考える。 
そこで本研究では,大学生の心理的問題に対する態度に着目し,学科間比較によってその特徴を明らかにすることを目的とする。特に対人援助領域を専門とする学生と,その他を専門とする学生との間には援助要請態度に違いがあるものと仮定して検証を行うと共に,結果を踏まえて大学教育における心の問題予防と支援のアウトリーチに向けて提言を行うことを目的とする。
方法
調査対象者 関東圏の大学A,B,C大学に在籍する大学生1245名(平均年齢18.67歳(SD=.86),男子627名,女子618名)。学年の内訳は1年生994 名で,2年生207名,3年生28名,4年生16名である。学科の内訳は,臨床心理48名,理学療法426名,理工54名,看護300名,柔道整復259名,教養58名,教育38名,経済18名,経営41名である。
調査時期 2014年7月下旬~11月上旬
調査内容 (a)日本語版「Attitude toward seeking professional psychological help short form; ATSPPH-SF」(植松他, 2013)10項目。(b)「悩みへの構え尺度」(植松・橋本, 2014)は「悩みの抑圧」(α=.65)と「悩みの回避」(α=.52)を下位要因として用いた。(c)UPI学生精神的健康調査票(University Personality Inventory,計60項目,以下UPIと略記)のうち,坂口・浅井(2008)の調査で,特に大学生活で困難を生じていた学生に出現率の多かった14項目,(d)「改訂版UCLA孤独感尺度」の邦訳版(工藤・西川, 1983; 諸井, 1992)20項目。
実施手続き 倫理的配慮として実施に先立ち筆頭著書者所属機関の研究倫理委員会の承諾を得た(承認番号14-18)。
結果(詳細な資料は会場で配布する)
1)属性による検討 各下位項目について,性差の検討を行った。「UPI」(t(1232)=4.24,p<.01),「相談室への関心」(t(1191)=2.90,p<.01)は女子の方が男子よりも有意に高い値を示した。「UCLA孤独感尺度」は,先行研究(工藤・西川, 1983; 諸井, 1987)と同様,男子の方が女子よりも有意に高く(t(1215)=4.73,p<.01),援助要請態度の「専門的援助の求め」も,男子の方が女子よりも有意に高い値を示した(t(1192)=2.16,p<.05)。続いて,各下位項目の学年差を検討した。「相談室への関心」で学年差が有意であり(F(3,1201)=3.23,p<.05),多重比較の結果1年生が2年生よりも有意に高かった。また「悩みの抑圧」についても有意な群間差が見られ(F(3,1186)=3.32,p<.05),1年生が3年生よりも有意に高かった。
2)学科による比較 各下位項目について学科の差を検討するため,一要因の分散分析を行った。結果,「UPI」(F(8,1222)=4.45,p<.01),「UCLA孤独感尺度」(F(8,1217)=2.61, p<.01),「相談室への関心」(F(8,1193)=9.12, p<.01),「悩みの抑圧」(F(8,1178)=5.83,p<.01),「悩みの回避」(F(8,1178)=2.85,p<.01)において学科の主効果が有意であった。多重比較の結果,(1)臨床心理学科群が他の学科と比較して「UPI」「孤独感」「相談室への関心」が有意に高い結果となった。(2)柔道整復学科と理学療法学科については「悩みの抑圧」が他学科よりも有意に高かった。(3)理工学科,経営学科は「相談室への関心」が他学科よりも有意に低かった。
考察
紙面の都合上,主に学科による比較結果について考察する。対人援助領域の中でも,臨床心理学科群の「相談室への関心の高さが顕著であり,先行研究(吉田,2013)とも合致するものであった。「孤独感」「UPI」も高い一方で,「専門家の求め」や「悩みの抑圧」「悩みの回避」については他学科との差が見られなかったことから,臨床心理学科群については,悩みや苦痛を抱え相談へのニーズがあるものの専門家を求める行動には至らず,関心の段階で止まっている状況が示唆された。また,対人援助領域のうち,柔道整復学科・理学療法学科については悩みを我慢し,自分の事を後回しにする傾向がうかがえた。さらに,相談領域と学問的関連のうすい学科群については,相談室への関心の低さが明らかとなった。以上から,大学学生相談のアウトリーチとして,学科ごとの特徴をより丁寧に精査し,特徴を踏まえた上で対応を定めていく必要性が明らかとなった。

キーワード
大学生/学生相談/アウトリーチ


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