発表

3C-033

カウンセリングにおける心拍変動スペクトル解析

[責任発表者] 足立 由美:1
[連名発表者・登壇者] 吉川 弘明:1
1:金沢大学

目 的
 何らかの悩みや問題を抱えたクライエントはどういう状態にあり,傾聴ベースのカウンセリングでどう変化していくのだろうか。発達障害の傾向のある学生ではどうだろうか。本研究はカウンセリング中のクライエントとカウンセラーの脈派を同時に測定し,心拍変動スペクトル解析によって両者にどのような変化が見られるかを自律神経指標から分析した。

方 法
【研究対象者】K大学の大学生,大学院生,および実験用カウンセラー1名。【手続き】本研究はK大学医学倫理審査委員会の承認を得て実施した。2017年10月から2018年6月にかけて,学生相談を利用している学生には担当カウンセラー(XCo)から,対照群の学生は筆者らが担当する授業で募集した。実験用にカウンセラー(YCo:女性)を1名雇用し,学生1名に1回ずつの傾聴カウンセリングを実施することと,カウンセリング中の脈派データを解析する同意を得た。1日目は,実験用の面接室で筆者が研究について説明し,同意を得た。2日目は先に学生が入室し,カウンセリングの前に心理検査に回答した後,30~45分のカウンセリング中,学生とYCoの耳朶脈波を同時に測定した。カウンセリングの最初4分と最後4分の耳朶脈派データを取り出し,分析に用いた。統計解析にはSPSS ver.22.0(IBM)を,耳朶脈波解析にはLyspect ver.3.7(カオテック研究所)を用いた。自律神経指標についてWilcoxonの符号付き順位検定を行った。

結 果
 学生相談室を利用した学生(S群)15名(男性8名,(うち6名が発達障害傾向あり),女性7名),利用したことのない学生(H群)15名(男性4名,女性11名)であった。
1.学生のカウンセリング前後の変化:副交感神経の活性度を表すHF(高周波:Hi Frequency)と交感神経の活性度を表すLF(低周波:Low Frequency)の両方が有意に上昇した。外的適応性の指標となるLLE(最大リアプノフ指数:Largest Lyapunov exponent)は有意に上昇し,HR(心拍数:Heart Rate)は有意に低下し,CVRR(心臓副交感神経機能:Coefficient of Variation of R-R interval)は有意に上昇した。LF/HFは有意な変化はなかった。グループごとの分析では,H群はすべての指標で全体と同じ結果であった。S群は,LLEとCVRRが有意に上昇し,HRが有意に低下したが,HF,LFに有意差は見られなかった。
2.カウンセラーのカウンセリング前後の変化:カウンセリング後にHFとCVRRが有意に上昇した。その他の指標は前後に有意差は見られなかった。
3.クライエントとカウンセラーの変化の方向性:学生とカウンセラーのペア30組で,カウンセリング前後に各指標がどう変化し,ペアで一致していたかどうかを分析した。一致度はLLE66.7%,HF60.0%,LF60.0%,LF/HF56.7%,HR56.7%,CVRR66.7%であった。

考 察
 筆者らは,1回の傾聴を基本としたカウンセリング後に,クライエントの不安の減少や気分の安定がみられたことを心理検査の分析で確認した(足立・吉川,2019)。今回の分析によって,クライエントはカウンセリングによって活性化する人もいれば,落ち着く方向へ変化する人もいることが示唆された。また,カウンセラーは,冷静に仕事をしているとも言えるが,カウンセリング終了後に,副交感神経が活性化し,リラックスする方向へ変化したことが明らかになった。クライエントとカウンセラーの変化の方向性については,6割前後の一致であった。発達障害傾向のある学生を含むS群で,交感神経,副交感神経に変化が見られなかったことの意味は今後の研究で検討すべき課題である。

引用文献
足立由美,吉川弘明.学生相談におけるカウンセリング効果の分析-心理検査による分析-.CAMPUS HEALTH, 56(1),印刷中,2019.※本研究は,JSPS科研費基盤(C)(課題番号:16K01788-00)の助成を受けたものである。

キーワード
カウンセリング/心拍変動スペクトル解析/自律神経


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