発表

3C-032

連合記憶と学習後ストレスとの関連

[責任発表者] 林 明明:1,2
[連名発表者・登壇者] 丹野 義彦:3, 金 吉晴#:1
1:国立精神・神経医療研究センター, 2:日本学術振興会, 3:東京大学

目 的
学習後ストレスとは,実験参加者が学習課題を行った後に急性ストレス負荷を課す実験手続きである。学習後ストレスは学習された刺激の記憶を向上させ得ることが知られている(Wolf, 2009)。本研究では顔と名前を対連合呈示するなどの連合記憶についても,学習後ストレスが記憶成績を向上させるかどうかを検討する。
方 法
参加者 参加者は大学生21名(男性14名,女性7名,平均年齢19.6歳)であった。参加者はそれぞれストレス条件10名,コントロール条件11名に分けられた。
質問紙 Profile of Mood States 2nd Edition (POMS 2)(Heuchert et al., 2015)を使用し,「怒り」「混乱」「抑うつ」「疲労」「緊張」の下位尺度合計から「活気」の下位尺度を減算した得点求め,ストレス負荷前後の差分をとって主観的ストレス得点とした。
ストレス課題/コントロール課題 ストレス条件では,社会的ストレス負荷課題であるTSST(Trier Social Stress Test) (Kirschbaum et al., 1993)を行った。実験参加者は5分間の準備時間の後,ビデオカメラと録音マイクの前で5分間の疑似的な面接場面のための自己PRスピーチを行った。その後,1022から13を連続的に減算する暗算課題を5分間行った。コントロール条件では,Het et al. (2009)によって作成されたTSSTのためのコントロール課題を行った。この課題では,参加者は3つのテーマを一つ選び,5分の準備時間の後,実験室にひとりで居る状態でそのテーマについて5分間発話をした。5分間の発話の後,0から15を連続的に加算する暗算課題を5分間行った。
Face Name Associative Memory Exam(FNAME) FNAME課題(Rentz et al., 2011)は,16人の女性の顔写真およびそれぞれの人物の名前,職業を連合学習する記憶課題であった。PC画面上には1つの画面につき上下左右に4枚の顔写真が画面上に呈示された。顔写真のみが呈示される学習段階(1つの画面につき8秒),顔写真の下に名前が呈示される名前連合学習段階(1つの画面につき20秒)を行った後,まずは顔刺激に対して名前を回答する手がかり直後再生(ILN)が行われた。続いて,顔写真の下に職業が呈示される職業連合学習段階(1つの画面につき20秒),顔刺激に対して職業を回答する手がかり直後再生(ILO)が行われた。さらに,名前の自由再生(FRN),職業の自由再生テスト(FRO)を経て,顔刺激に対して名前と職業をそれぞれ回答する手がかり再生(CRN, CRO)に回答した。30分の遅延時間の後,名前の自由再生(FRN30),職業の自由再生(FRO30),顔刺激に対して名前を職業をそれぞれ回答する手がかり再生(CRN30, CRO30)に回答した。それぞれの再生時の正答率を成績とした。
手続き 参加者はFNAME課題を行った後に,条件群ごとにストレス負荷課題/コントロール課題を実施した(およそ15分間)。さらに,図形の色を判断してキー押しするPC課題をおよそ15分間行った後,FNAME課題の遅延再生テストを行った。
倫理的配慮 本研究は国立精神・神経医療研究センターおよび東京大学の倫理審査委員会の承認を受けて実施した。
結 果・考 察
主観的ストレス ストレス課題とコントロール課題によって生じた主観的ストレスに差があるかどうかを検討した。質問紙に欠損が生じた参加者1名の結果を分析より除いた。t検定の結果,ストレス条件群の主観的ストレス得点はコントロール群より有意に高かった(t(18)=3.24, p< .01)(Figure 1)。
記憶成績 FNAME課題の各再生指標について,ストレス条件とコントロール条件に差があるかどうかを検討した。各条件ごとの再生正答率をTable 1に示す。t検定の結果,FRN(名前の直後自由再生)とFRN30(名前の遅延自由再生)において,コントロール条件のほうがストレス群よりも正答率が高かった。ただし,FRNはストレス課題/コントロール課題の実施前であるため,ベースラインとしての個人差の影響であると考えられる。なお,FRN30とFRNの差分についても同様の検討を行ったが,群間差はなかった。本研究ではストレス課題によって主観的なストレスが増加したが,連合記憶へのストレスの影響は認められなかった。しかしサンプル数が少ないことも影響があると考えられるため,今後さらに人数を増やして検討していきたい。

キーワード
顔‐名前連合/連合記憶/学習後ストレス


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