発表

3C-031

Body Mass Indexと自己複雑性との関連の予備的検討

[責任発表者] 川人 潤子:1
1:香川大学

目的
 肥満体型の者は,他者からネガティブな感情(差別や偏見)を向けられ,それによりメンタルヘルスが低下するという指摘は多く報告されている(Papadopoulos & Brennan, 2015)。Blaine & Johnson(2005)は,自己複雑性と肥満の関連を検証するため,女性を対象とした調査研究を実施している。自己複雑性とは,Linville(1987)が自己知識の構造の個人差を説明するために提唱した自己概念のモデルである。自己複雑性は,(a)自己知識を構成する自己側面の個数(側面数),(b)それぞれの自己側面の分化の程度(精緻性)の二要素で定義される。このモデルでは,役割や人間関係などの自己側面の数が多く,さらに分化していれば,否定的出来事に付随して生じる抑うつが他の側面に波及することを和らげるとする。Blaine & Johnson(2005)の調査結果では,Body Mass Index(以下,BMI)は自己側面の多さと負の関連を示し,自己側面の複雑性とは正の関連を示している。つまり,肥満の者は,自己側面数は少ない傾向があるものの,自己側面に多様な特性を含みやすいと考えられる。また,質的な特徴として,BMIの高い者は,自己特性に“のろい”,“社交的”のような,肥満に対して一般的に向けられるステレオタイプ的表現をより選択するといわれている。
 ところで,近年では各側面における複雑性を肯定的自己複雑性と否定的自己複雑性とに区分して捉えることがある(Woolfolk, et al., 1995)。Morgan & Janoff-Bulman(1994)によると,肯定的自己複雑性が高いことは,否定的出来事に付随して生じる抑うつの緩衝要因として作用する一方で,否定的自己複雑性が高いことは,否定的出来事に付随して生じる抑うつの増幅要因として作用する。
 そこで,本研究では,自己複雑性を肯定的自己複雑性と否定的自己複雑性とに区分し,BMIと抑うつとの関連を検討する。

方法
調査対象者及び調査時期
 2017年10月に,調査への回答に対して同意を得た大学生40名(男性17名,女性22名;平均年齢20.8歳,SD=7.2)を対象に質問紙調査を実施した。
測定尺度
 フェイスシート 年齢,性別,身長,体重。抑うつ 自己記入式抑うつ性尺度(CES-D;島他,1985)を使用した。20項目,4件法。自己複雑性,肯定的自己複雑性,否定的自己複雑性 特性語分類課題を使用した。側面を記入する10の欄と特性形容詞40語リストを同じページに印刷した用紙があり,対象者はまず自分の側面を自由に記入し,各側面に当てはまる特徴を特性形容詞リスト(林・堀内,1997)の中から選び,各側面欄に記入した。なお,自己複雑性に関する指標は,Linville(1987)と同様の全体の複雑性を表す自己複雑性得点である指標H,Woolfolk et al.(1995)と同様に肯定的自己複雑性得点,否定的自己複雑性得点を算出した。なお,指標Hは以下の式によって算出し,肯定的自己複雑性と否定的自己複雑性は該当する感情価の特性形容詞のみ用いて同様の式で算出した。
H = log2n – (Σnilog2ni)/n
n : 特性形容詞総数; ni: グループの組合せ各パターンに出現する特性形容詞数

結果および考察
 BMI,自己複雑性,肯定的自己複雑性,否定的自己複雑性ならびに抑うつの相関分析を行った(Table 1)。BMIは抑うつと弱い正の関連を示した(r = .37, p < .05)。また,自己複雑性は抑うつと弱い正の関連を示し(r = .38, p < .05),否定的自己複雑性は抑うつと中程度の正の関連を示した(r = .40, p < .05)。一方で,BMIと自己複雑性に関する指標の間には有意な関連は認められなかった。
 次に,肥満に対するステレオタイプ的表現として,「ルーズな」,「あきっぽい」,「陽気な」,「社交的な」という4つの特性語に着目し,BMI≧25の肥満の者とBMI<25の標準体重の者との4つの特性語の使用平均を比較した。「陽気な」は肥満の者が2.0語,標準体重の者は1.1語,「社交的な」は肥満の者が1.5語,標準体重の者は0.8語,「ルーズな」は肥満の者が1.0語,標準体重の者は0.4語,さらに「あきっぽい」は肥満の者が0.0語,標準体重の者は0.3語であった。「あきっぽい」以外の3語は肥満の者が選択しやすい可能性が推察された。
 今後は,サンプル数を増やし,性別ごとに特徴を精査する必要があろう。

キーワード
自己複雑性/body mass index(BMI)/抑うつ


詳細検索