発表

3C-030

統合失調症患者と健常者の樹木画における描画特徴の比較

[責任発表者] 川杉 桂太:1
[連名発表者・登壇者] 岩滿 優美:2, 轟 慶子#:3, 菅原 ひとみ:4, 小林 史乃:5, 小平 明子#:3, 延藤 麻子#:3, 塚本 康之#:3, 西澤 さくら#:3, 轟 純一#:3, 竹村 和久:6
1:早稲田大学, 2:北里大学, 3:鶴賀病院, 4:東海大学, 5:越谷心理支援センター, 6:早稲田大学文学学術院

 目 的
 我々はこれまで,統合失調症患者と健常者の描いた樹木画の描画特徴の相違について統合失調症患者の精神症状に基づいた類型の観点から探索的に検討してきた。本研究では,対象者数および分析を追加し,描画特徴の相違についてさらに検討を加えることを目的とした。
 方 法
 対象者 A病院に通院または入院中で,DSM-IV-TRに基づき統合失調症と診断された統合失調症患者61名(男性36名,女性25名,平均年齢±SD=52.85±14.14歳,罹患年数±SD=27.73±12.87年,罹患年数不明6名)および,統合失調症患者と性別・年齢をマッチングさせた健常者66名(男性39名,女性27名,平均年齢±SD=51.53±14.38歳)であった。
 測定 (1)バウムテスト:Koch(1952)が開発した投影法の検査で,A4(幅210mm×高さ297mm)の白紙と鉛筆,消しゴムを用いて対象者が実のなる木の絵を描く。(2)Positive and Negative Syndrome Scale (以下,PANSSとする):統合失調症像の類型的および多軸的な評価尺度(Kay, et al., 1991)の日本語版である。陽性・陰性尺度(各7項目),総合精神病理評価尺度(16項目)の計30項目(7段階尺度)からなる。
 手続き 研究参加の同意を書面にて得た対象者に,A4の白紙と鉛筆,消しゴムを渡し,実のなる木の絵を描くよう依頼した。統合失調症患者については,A病院の医師がPANSS得点を評定した。なお本研究は,北里大学医療衛生学部研究倫理審査委員会の承認を得ている。
 分析の概略 対象者の描いた樹木画について,描画特徴を152項目作成し,各特徴が描かれたか否かを二値で評定した。描画評定は,2人の研究者が別々に行い,さらにもう1人が加わり討議を重ね,妥当性について検討した。第一に,統合失調症と健常者の描画特徴の相違を明らかにするために,群(統合失調症患者・健常者)×描画特徴の有無(あり・なし)のカイ二乗検定およびフィッシャーの直接確率検定を行った。第二に,PANSSをもとに,統合失調症患者を,陽性型13名,陰性型10名,混合型8名,分類不能型30名の4類型に分類した。4類型による描画特徴の相違を明らかにするために,群(陽性型・その他の型)×描画特徴の有無(あり・なし)のカイ二乗検定およびフィッシャーの直接確率検定を行った。他の3類型についても同様に実施した。また,Kaneda, et al. (2010) を参考に,描画の構造的特徴4項目(木全体の高さ,幹の高さ,幹の幅,幹左側の幅)を計測し,統合失調症患者と健常者の間の違いをt検定を用いて検討した。
 結 果
 統合失調症患者と健常者の比較 Table 1.に,統合失調症患者と健常者との間で頻度に有意な差が認められた描画特徴の一部を示した。統合失調症患者は健常者と比較して,一本線の枝(統合失調症患者47.5%,健常者24.2%)や細い幹(統

合失調症患者41.0%,健常者10.6%)を描く頻度が高い傾向(χ2≧6.54, p<.05)などが認められた。一方,健常者は統合失調症患者と比較して,用紙の中央に(健常者90.9%,統合失調症患者59.0%),実を多く(健常者50.0%,統合失調症患者23.0%)描く頻度が高い傾向(χ2≧8.82, p<.01)などが認められた。また,構造的特徴では,4項目全てにおいて健常群は統合失調者患者と比べて指標値が有意に大きく(t≧1.69, p<.10),特に木全体の高さでは,健常者(209.09mm)は統合失調症患者(174.62mm)と比べて有意に大きかった(t(108.43)=3.40, p<.001)。
 統合失調症患者4類型間の比較 陽性型はその他の型と比較して,大きい実(陽性型46.2%,その他の型16.7%)を描き,左右対称に(陽性型46.2%,その他の型75.0%)描かず,陰性型はその他の型と比較して,花(陰性型20.0%,その他の型0%)を描き,混合型はその他の型と比較して,幹のふくらみやくびれ(混合型50.0%,その他の型13.2%),きのこ型の樹冠(混合型25.0%,その他の型0%)を描く頻度が有意に高かった(χ2≧2.74, p<.10)。分類不能型はその他の型と比較して,頻度の高い描画特徴は認められなかった。
 考 察
 統合失調症患者は健常者と比較して,描画の位置が中央からずれていること,サイズが小さいこと,描かれた枝や幹が一本線であることなどが認められた。また構造的特徴に関して,統合失調症患者は健常者と比較して指標値が有意に小さかったことは,Kaneda, et al. (2010) の結果と同様の傾向を示していた。これらの指標が,統合失調症患者の描く樹木のバランスの悪さを特徴づけていることが示唆された。また,統合失調症患者の中でも陽性型では,大きい実があることや,左右対称でないこと,混合型では,樹冠がきのこ型であることや,幹の描き方(波形である,ふくらみとくびれを描く)に特徴があることが認められた。PANSSの各項目との関係など,さらなる検討を加える必要があると考えられる。

Table 1. 統合失調症患者と健常者の比較

キーワード
統合失調症/バウムテスト/精神症状


詳細検索