発表

3B-036

ストループ検査は認知機能低下に対するスクリーニング検査として有用か

[責任発表者] 前田 紗彩:1
[連名発表者・登壇者] 箱田 裕司:2, 八田 武志:3, 岩原 昭彦:2
1:京都府立医科大学, 2:京都女子大学, 3:関西福祉科学大学

1. 問題と目的
 日本社会の超高齢化に伴い,軽度認知障害(Mild Cognitive Impairment:以下MCI)やアルツハイマー型認知症(Alzheimer dementia:以下AD)の罹患者数増加が予想されている。これらの疾患の早期発見が重要とされているものの,我が国では軽度な認知機能の低下を鑑別できる簡便なスクリーニング検査が不足している。そこでMCIおよびAD早期に成績低下が報告されているのが,慣習化されたステレオタイプ反応の抑制能力を測定するストループ検査である。本研究では臨床現場で広く使用されている口頭反応形式のストループ検査に加え,マッチング反応形式を採用している点や2種類のストループ干渉(逆ストループ干渉・ストループ干渉)を測定できる点を特徴とする新ストループ検査Ⅱに着目する。これらのストループ検査が認知機能低下に対するスクリーニング検査として有用か検証するため,中高年者を対象に口頭反応ストループおよびストループ検査Ⅱの加齢変化を確認し,各ストループ検査の成績と各神経心理学検査の成績の相関を検討する。
2. 対象と方法
 Y町住民健診を受診した40歳以上の住民のうち研究参加の同意が得られた者261名(平均年齢63.9歳, SD=10.91)を対象に神経心理学検査バッテリーNU-CAB(以下に記載)と新ストループ検査Ⅱを実施した。検査の総所用時間は約20分であった。NU-CAB:S-MMSE(short-Mini Mental Scale Examination),散文記憶検査,Money道路図検査,Stroop検査(口頭反応形式),D-CAT(digit cancelation test)検査,言語流暢性検査 
3.結果
 色弱により1名を除外したため,分析対象者は260名であった。加齢変化について,対象者を40-49歳(34名),50-59歳(52名),60-69歳(82名),70歳以上(92名)の4群に分割し一要因分散分析を行った。すると口頭反応ストループ干渉率(OSI)とストループ干渉率(SI)は反応形式の違いに関わらず60歳以降に有意に増加した。一方で,逆ストループ干渉率(RSI)には加齢変化が認められなかった(図1)。次に,相関分析を行うにあたって40-50代(86名),60代(82名),70歳以上(92名)の3群を編成し分析を行った。各ストループ検査と各神経心理学検査との関連を検討したところ,ストループ干渉率や逆ストループ干渉率は各神経心理学検査の成績との関連が弱かった。一方,口頭反応ストループ検査の反応時間や新ストループ検査Ⅱの正答数は多くの神経心理学検査成績と関連を示した。特に60歳代や70歳以上では散文記憶課題の成績とかなり強い相関があった(表1,表2)
4.考察
 口頭反応ストループ干渉率,逆ストループ干渉率,ストループ干渉率の加齢変化は先行研究を追認し,逆ストループ干渉率にのみ加齢に伴う増加が認められなかった。逆ストループ干渉率に加齢変化が見られないのは,歳を重ねても語彙的な知識に対する習慣形成が他の年代と変わりなく保たれることで,課題時に語彙的な情報処理に分配する注意資源が少なくて済むためであると推察される。相関分析からは,干渉率よりも反応時間や正当数の方が軽度な認知機能低下を捉え得る可能性が示唆され,高齢者の認知機能低下の予見には情報処理速度の個人差が重要な指標であると考えられる。また,病態の重症度といった質的な差異を捉えるには干渉率が有効な可能性も残されており,今後の検討が必要である。以上,ストループ検査は抑制機能や注意機能に加えて情報処理速度の個人差を同時に取り出すことのできる点でスクリーニング検査としての利用可能性が示唆される。特にマッチング形式という反応形式によって処理速度の個人差をより多く抽出できると考えられる新ストループⅡは,スクリーニング検査としてより有用な可能性がある。

キーワード
認知加齢/スクリーニング検査/ストループ検査


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