発表

3B-035

ACTを基盤とした抑うつ症状および社交不安症状の重症度による拒絶に対する過敏性の状態像の検討

[責任発表者] 堀川 柚:1
[連名発表者・登壇者] 荻島 大凱#:1, 嶋田 洋徳:2
1:早稲田大学, 2:早稲田大学 人間科学学術院

目 的
 従来から,抑うつ症状と社交不安症状が併発すると,臨床的な難治を示すことが知られており(Rodebaugh et al., 2004),このような状態像は,拒絶に対する過敏性というパーソナリティ特性を有する者が多いことが指摘されている(Downey & Feldman, 1996)。また,抑うつ症状および社交不安症状に対する治療として,アクセプタンス&コミットメント・セラピー(以下,ACTとする)に基づく治療の効果が高い可能性が報告されている(Öst, 2008:Arch et al., 2012)。このようなACTの治療過程において,抑うつ症状と社交不安症状に対しては,事実と思考の混同状態であるとされる「認知的フュージョン」や,不快な私的出来事と接触しようとせず,その形態や頻度,文脈を変えようとする行動である「体験の回避」を断ち切る治療法の有効性が示唆されている(Cookson et al., 2019)。しかしながら,抑うつ症状と社交不安症状の重症度による拒絶に対する過敏性,認知的フュージョン,体験の回避の程度の状態像の差異に関して,直接的に検討した研究は見受けられない。そこで本研究では,抑うつ症状および社交不安症状の重症度による拒絶に対する過敏性,認知的フュージョン,体験の回避の程度の状態像の差異を記述することを目的とした。
方 法
調査対象者 4年制大学に所属する大学生および大学院生320名に質問紙を配布し,回答ミスや回答漏れを除外した262名(男性133名,女性109名,不明20名,平均年齢20.3±1.5歳)を分析対象とした(有効回答率81.9%)。
調査材料 (a)拒絶に対する過敏性:日本語版IPSM(巣山他,2014),(b)認知的フュージョン:CFQ28項目版(森本他,2011),(c)体験の回避:AAQ-Ⅱ(嶋他,2013),(d)抑うつ症状尺度:CES-D(島他, 1985),(e)社交不安症状尺度:LSAS-J(朝倉他,2002)を使用した。
倫理的配慮 本研究は,早稲田大学「人を対象とする研究に関する倫理審査委員会」の承認を得て実施された(承認番号:2016-060)。なお,本研究のデータセットの一部は,堀川他(2017)の報告との重複があるが,本報告は異なる研究目的において未発表のデータを中心に報告する。
結 果
 抑うつ症状尺度および社交不安症状尺度の各下位尺度に対してWard法による階層的クラスタ分析を行った。その結果,4つの解釈可能なクラスタが得られた(Figure 1,Figure 2)。第1クラスタは抑うつ症状および社交不安症状が低いことから「両低型」,第2クラスタは抑うつ症状は第1クラスタと同程度であるが,社交不安症状が第1クラスタよりも高いことから「社交不安症状軽症型」,第3クラスタは抑うつ症状および社交不安症状がともに第2クラスタより高いため「両中程度型」,第4クラスタは抑うつ症状は第3クラスタと同程度であるが,社交不安症状が第3クラスタよりも高いことから,「抑うつ症状中程度・社交不安症状高群」と解釈した。また,各クラスタを独立変数,拒絶に対する過敏性尺度の合計得点および下位尺度,認知的フュージョン尺度得点,体験の回避尺度得点を従属変数とした一元配置分散分析を行ったところ,全ての変数についてクラスタの主効果が有意であり,多重比較の結果「健常型」および「社交不安症状軽症型」が「両中程度型」と「抑うつ症状中程度・社交不安症状高群」に比べて得点が低いことが示された(Table 1)。
考 察
 以上の結果から,抑うつ症状および社交不安症状が併発している状態像においては,拒絶に対する過敏性に関連するような認知的フュージョンや体験の回避が生じている可能性が高いことが考えられるため,それらを断ち切る治療法が有効である可能性が示唆された。さらに,抑うつ症状が一定以上の強さで社交不安症状と併発することによって,臨床的な難治を示している可能性も示唆された。

キーワード
拒絶に対する過敏性/認知的フュージョン/体験の回避


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