発表

3B-032

価値とストレッサーが心理的well-beingに与える影響の短期縦断的検討

[責任発表者] 首藤 祐介:1
[連名発表者・登壇者] 山本 竜也:2
1:広島国際大学, 2:中京大学

 序論
 近年,健康維持や増進におけるポジティブな心理要素の重要性が指摘され,これらの心理的要素と心理的well-beingや生活の質(Quality of life)との関連が研究されている。
 これらのポジティブな心理要素の1つに「その人が何を大切にしたいか」という価値がある。価値は心理的に柔軟で健康な状態に寄与するため,well-being向上の効果のみならず,生活上の問題がwell-beingに与える否定的な影響を緩和する機能を有すると考える。そこで,本研究では短期縦断調査により,価値とストレッサーが心理的well-beingに与える影響を検討する。
 方法
対象 大学生126名(男性69名,女性57名;平均年齢19.64歳,SD=1.25)
質問紙
心理的well-being:心理的ウェルビーイング尺度短縮版(Psychological Well-Being Scale - Brief; 以下PWBS; 岩野他, 2015)。
価値の測定:Value Questionnaire(以下VQ; 土井他, 2017)。個人的に重要なことを自覚している程度,重要なことに向けての忍耐力を測定する「前進」と,価値の軽視や他の心理体験への注目により,どの程度価値に沿った生活が崩れているかを測定する「障害」の2因子により構成される。
ストレッサー:大学生用日常生活ストレッサー尺度(嶋, 1999)。
手続き 4週間の間隔をあけ2回の調査を行なった。1回目(Time 1)にPWBS,VQ,ストレッサー尺度を実施し,2回目(Time 2)にPWBSを実施した。なお,調査の実施にあたっては,広島国際大学人を対象とする医学系研究倫理委員会の審査を経て実施した。
統計解析 独立変数を平均値により中心化し,Time 2のPWBSを従属変数とした階層的重回帰分析を行った。ステップ1でTime 1のPWBS,ステップ 2でVQの前進因子,障害因子,およびストレッサー尺度,ステップ3で前進因子,障害因子,およびストレッサーの交互作用項目,ステップ4で前進因子,障害因子,およびストレッサーの二次の交互作用項を投入した。交互作用項が有意な場合,単純傾斜の検定により内容を確認した。その際,PWBSの増加量を示すために,得られた回帰式の両辺から Time 1 PWBS得点を減じた式を用いた。
 結果
 分析の結果,ステップ2のR2変化量は有意傾向,ステップ3は有意であったが,ステップ4は有意ではなく,ステップ3を採用した(Table 1)。ステップ3では障害とストレッサーの交互作用が有意であったため,単純傾斜の検定を行った。その結果,障害因子が低い場合にストレッサーの効果が有意ではない(β=.05, n.s. )が,障害因子が高い場合にストレッサーの効果が有意(β=-.23, p < .01)となった(Fig 1)。
 考察
 本研究の結果から,ストレッサーがwell-beingに与える影響に対する障害因子の調整効果が明らかとなった。したがって,生活上の問題の多さはwell-beingの悪化を予測するが,これは価値に沿った生活が崩れている場合に顕著であると言える。反対に,価値に沿った生活の維持は,ストレッサーがwell-beingに与えるネガティブな影響を緩衝する効果があることが示唆された。
 価値が明確であり重要なことに向けての忍耐力を示す前進因子は,将来のwell-beingを予測しないことも示唆された。このことからwell-beingの維持・増進においては価値を明確化するだけでは十分ではなく,それほど明確ではなくても現在自覚する価値に沿った生活を維持することが重要であると考えられる。
 文献
土井理美・坂野朝子・武藤崇・坂野雄二 (2017). 日本語版 Valuing Questionnaire(VQ)の信頼性と妥当性の検証.   行動療法研究, 43, 83–94.
岩野卓・新川広樹・青木俊太郎 (2015). 心理的ウェルビー イング尺度短縮版の開発. 行動科学, 54, 9–21.
嶋信宏 (1999). 大学生用日常生活ストレッサー尺度の検討  中京大学社会学部紀要, 14, 69–83.

キーワード
価値/ストレッサー/心理的well-being


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