発表

3B-031

日本語版エウダイモニック・ウェルビーイング尺度の作成

[責任発表者] 榊原 良太:1
[連名発表者・登壇者] 石井 悠:2, 久保田河本 愛子:3
1:鹿児島大学, 2:東京大学, 3:宇都宮大学

問題と目的

 元来,well-beingは大きく2つの方向性で研究が行われてきた。1つは快楽主義(hedonism),もう1つは幸福主義 (eudaimonism)と呼ばれるものである。このうち幸福主義とは,“よく生きること(functioning well)”こそが高いwell-being,すなわち“エウダイモニア”へとつながるという考えである。従来,well-being研究は主に快楽主義的な視点から行われてきたが,近年,幸福主義の視点からエウダイモニアに着目した研究が増えつつある。
 エウダイモニアを測定する尺度はいくつかあるが,中でもWaterman et al. (2010)によって作成されたエウダイモニック・ウェルビーイング尺度 (The Questionnaire for Eudaimonic Well-Being: QEWB)は,エウダイモニアの本来の哲学的な意味を精緻に反映した21の項目によって構成された尺度である。元々,QEWBは1因子構造を仮定して作成されたが,その後の研究はそれを支持するもの(Areepattamannil & Hashim, 2017)と支持しないもの(Fadda et al., 2017; Shutte et al., 2013)が混在している。Fadda et al. (2017)は,QEWBがエウダイモニア全般にかかわる一般因子と,個々の下位概念にかかわる因子から構成されるというbifactorモデルを想定し,それを探索的構造方程式モデリング(Explorative Structural Equation Modeling: ESEM)によって検証した。
 本研究では,QEWBを日本語に翻訳した上で,通常の確認的因子分析とESEMおよびbifactorモデルに基づいたESEMを行い,Fadda et al. (2017)の追試および日本語版QEWBの因子構造の検証を試みる。

方法

参加者 20~69歳(M=44.5,SD=14.1)の449名からなるサンプル1と,19~36歳(M=20.0,SD=2.0)の大学生106名からなるサンプル2,計555名に対して質問紙調査を実施した。
使用尺度 日本語版QEWB:原著者らの許可を得た上で,バックトランスレーションの手順による日本語翻訳を行った(Table 1)。21項目5件法で回答を求めた。ほかにも様々な変数を測定したが,本発表では紙幅の都合上,QEWBの分析結果のみ報告する。

結果と考察

確認的因子分析およびESEMによって算出された各モデルの適合度をTable 2に示す。通常の確認的因子分析における数値はいずれも一般的な基準値を満たしていなかったが,ESEMおよびbifactorモデルにおけるESEMにおいては,良好な適合度が示された。次に各モデルにおける因子負荷の値を確認した。

ESEMの4因子モデルでは,Fadda et al. (2017)と同様,第3因子を構成する項目の因子負荷が,項目18を除いて.40を下回った。一方,ESEMの3因子モデルでは,いずれの因子も十分な因子負荷を持つ複数の項目によって構成され,概ねFadda et al. (2017)と一致する結果が得られた。また,bifactorモデルにおいて,項目3,7はいずれの因子に対しても負荷が小さかった。特に項目3についてはFadda et al. (2017)においても修正の必要性が指摘されており,日本語版においても同様の結果が得られたと言える。さらにFadda et al. (2017)では,bifactorの4因子モデルにおいて,第3因子を構成する項目の因子負荷が項目8を除いて.40を下回り,一般因子への負荷も.40に満たないことが示されていたが,本データでは同様の傾向は確認されなかった。そのため,Fadda et al. (2017)ではbifactorの3因子モデルを最適なモデルとしていたが,本データでは適合度指標より,bifactorの4因子モデルを最も当てはまりがよいモデルであると判断した。本研究から,日本語版QEWBはエウダイモニア全般にかかわる一般因子と,4つの相互に関連し合う因子によって構成されることが示された。しかし,Fadda et al. (2017)の結果と一部異なる部分もあることから,QEWBそのものの改訂も含め,今後さらなる検討が必要であるだろう。

キーワード
エウダイモニア/ウェルビーイング


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