発表

3B-027

カウンセリングクライアントの自律神経系における健常群との比較について

[責任発表者] 高橋 翔アドナース:1
[連名発表者・登壇者] 福島 哲夫:2, 山蔦 圭輔:2, 八城 薫:2, 杉山 崇:3, 今関 仁智:4, 金井 正美#:5
1:JSR, 2:大妻女子大学, 3:神奈川大学, 4:奈良県立医科大学MBT研究所, 5:大妻女子大学

【問題と目的】自律神経活動の客観的な測定・評価において,心拍変動から解析される自律神経系変数であるSNS(交感神経系), PSNS(副交感神経系)が広く利用されており,SNSはストレスの指標として,PSNSはリラックスの指標として活用されている(今関他,2016)。
上記の指標はその客観性から臨床心理学領域における活用が期待されるものの,侵襲性や利便性などによる測定の難しさから研究例は少ない。しかし近年では,装着負担感が少なく心拍変動データを長時間取得可能なウェアラブルデバイスも開発されており(藤岡他,2018および,高橋他,2018),臨床心理学領域における活用が期待される。
本研究では,カウンセリングを受けているクライアントの日常生活におけるSNSおよびPSNSについて,健常群データと比較することで,臨床心理学領域におけるウェアラブルデバイスの利用可能性を検討することを目的とする。なお,本研究は神奈川大学倫理委員会からの承認を受けて実施された。

【方法】カウンセリングクライアントの対象者はA~Eの全5名(男性1名,女性4名:平均29.4±12.2歳)を対象とした。上記クライアントに対し,ウェアラブルデバイスを用いて,日常生活中における心電波形,脈波,体動,体表温を最大1週間連続で測定した。本研究では,心電波形から解析された自律神経系変数であるSNSとPSNSを扱い,下記1),2)の健常群における同様の測定データと比較を行った。
<比較対象の健常群データ>
1)化学関係企業の従業員18名(男性17名,女性1名:平均54.9±5.7歳(藤岡他,2018,JSR株式会社倫理委員会承認))
2) 出版・校正関係企業の従業員5名(女性5名:20代2名,30代2名,40代1名(大妻女子大学倫理委員会承認))

【結果】カウンセリングクライアントおよび健常群における最大1週間の自律神経系データについて,縦軸をSNS,横軸をPSNSとして中央値をプロットした(図1)。図1から,抑うつ傾向のクライアントA~Dについて,その他の群と比べてSNSが低くPSNSが高い傾向が見られ,クライアントBはA,C,Dと比べてより顕著となった。一方,対人的な不安と防衛を抱えるEについては,健常群と同等の結果であった。なお,健常群にPSNSが高値のプロットが二点見られるが,これは心電波形の異常に由来する外れ値と考えられる。
また,Aのクライアントについて,2018年7月~2019年2月の間でウェアラブルデバイスによる最大1週間の測定を計4回行った。図1と同様に健常群と比較した(図2)ところ,経時的にPSNSが低下傾向となり健常者群のプロットに近づく結果となった。図3において,クライアントAの質問検査紙結果(space)の1週間ごとの変化を示すが,測定を実施した周辺時期において抑うつ傾向が改善されている。

【考察】本研究では,ウェアラブルデバイスにて最大1週間測定されたSNSおよびPSNSについて,カウンセリングクライアント群と健常群との比較検討を行った。結果,抑うつ傾向のクライアントは健常群に比べてPSNSが優位であること示唆された。また,質問検査紙(space)において改善傾向が見られたクライアントには経時的に健常群のデータへ近づく傾向が見られており,ウェアラブルデバイスより得られたデータは質問紙による主観的情報と関連があることが示唆される。以上から, 臨床心理学領域におけるウェアラブルデバイスの利用可能性が期待される。

[引用文献] 1. 今関仁智,梅田智広,産業・組織心理学会 第32回大会 (2016),2. 藤岡昌泰,梅田智広,今関仁智,吉岡睦彦,第91回日本産業衛生学会(2018),3. 高橋翔アドナース,今関仁智,杉山崇,梅田智広,産業・組織心理学会第34回大会(2018)

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