発表

3B-026

カウンセリングを用いた介入プロセスにおける自律神経系の変化
―ウェアラブルデバイスは介入研究の実証性を担保し得るか?

[責任発表者] 山蔦 圭輔:1
[連名発表者・登壇者] 福島 哲夫:1, 杉山 崇:2, 高橋 翔アドナース:3, 今関 仁智:4
1:大妻女子大学, 2:神奈川大学, 3:JSR, 4:奈良県立医科大学MBT研究所

【問題と目的】近年,Evidence Based Practice(以下,EBP)の重要性が強調され,臨床心理学領域における支援(以下,カウンセリングとする)においても,その効果について実証的研究を遂行することが求められている。臨床心理学領域において,より客観的指標を扱った研究を概観すると,生理指標を扱ったものが多い。特にストレス研究などでは,ストレスマーカーとしてコルチゾールを扱った研究や脳波など生体情報を扱った研究が散見される。
 こうした中,心循環器機能の測定は心電図,心拍,脈波,血圧,皮膚血流,神経機能の測定は,神経伝導測度や脳波,誘発電位などをoutcomeとして評価することが多い(南谷,1997)。また,人間の興奮状態や安静状態を測定する際,医学分野においては,心電図のR-R間隔を測定することで,自律神経系(交感神経系・副交感神経系)の賦活状態を評価する方法が用いられている(大塚,1998)。これらの方法は,医学ならびにストレス科学領域においては一般的に用いられる方法であり,人間の情動的側面を評価するoutcomeとしてより妥当なものであると考えられる。
 以上の通り,人間の情動的側面をより客観的に測定し得る方法論は確立されているものの,カウンセリングの実践において,こうした方法を用いた客観的研究は数少ない。これには,測定の難しさ(例えば,カウンセリングを実施している最中,クライエントに侵襲することなく測定が可能か否か)が多いに関連しているものと考えられる。こうした課題が残存する中,装着負担感が少なく,継時的なデータを取得可能な測定機器(ウェアラブルデバイス)も開発されており(藤岡他,2018),これらの機器を用いることで,臨床心理学領域におけるEBMを蓄積する一助となることが期待される。
 本研究では,50分のカウンセリングを受けたクライエントの交感神経(SNS)および副交感神経(PSNS)の変化について検討し,臨床心理学領域におけるウェアラブルデバイスの利用可能性について検討することを目的とする。なお,本研究は神奈川大学倫理委員会(2018-9)からの承認を受けて実施された。
【方法】対象者はA~Eの全5名(男性1名,女性4名:平均29.4±12.2歳)であった。Aは延べ4セッション,Bは延べ3セッション,Cは延べ3セッション,Dは延べ4セッション,Eは延べ3セッションのカウンセリング(1回50分)中に,ウェアラブルデバイス(パッチ型マルチセンサ)により,心電波形,心拍数,呼吸数,呼吸率,SpO2(血中飽和酸素濃度),脈拍,姿勢,体表温が測定された。なお,カウンセリングでは感情体験を深める方法を用いた。本研究では,心電波形から評価された自律神経系変数を扱い検討を行った。解析は,カウンセリング開始前5分目のSNSおよびPSNSとカウンセリング終了後5分目のSNSおよびPSNSをそれぞれ比較するため,時期を独立変数,SNSおよびPSNS をそれぞれ従属変数としたWilcoxon の符号付き順位検定を実施した。なお,解析対象とするデータは,A~Eのカウンセリング,延べ,17セッション中,前後5分目のSNSおよびPSNSが測定可能であった全9セッションとした。
【方法】対象者はA~Eの全5名(男性1名,女性4名:平均29.4±12.2歳)であった。Aは延べ4セッション,Bは延べ3セッション,Cは延べ3セッション,Dは延べ4セッション,Eは延べ3セッションのカウンセリング(1回50分)中に,ウェアラブルデバイス(パッチ型マルチセンサ)により,心電波形,心拍数,呼吸数,呼吸率,SpO2(血中飽和酸素濃度),脈拍,姿勢,体表温が測定された。なお,カウンセリングでは感情体験を深める方法を用いた。本研究では,心電波形から評価された自律神経系変数を扱い検討を行った。解析は,カウンセリング開始前5分目のSNSおよびPSNSとカウンセリング終了後5分目のSNSおよびPSNSをそれぞれ比較するため,時期を独立変数,SNSおよびPSNS をそれぞれ従属変数としたWilcoxon の符号付き順位検定を実施した。なお,解析対象とするデータは,A~Eのカウンセリング,延べ,17セッション中,前後5分目のSNSおよびPSNSが測定可能であった全9セッションとした。
【結果】 解析の結果,SNSはカウンセリング前後において上昇する傾向にあることが認められた(Z= |1.955|, r=.051)。また,PSNSは,カウンセリング前後において低下る傾向にあることが認められた(Z=|1.718|, r=.086)。
【考察】 本研究では,50分のカウンセリング前後(前5分目,後5分目)のSNSおよびPSNSの変化について検討した。検討の結果,SNSは有意に上昇すること,PSNSは低下する傾向にあることが認められた。こうした結果から,カウンセリングを実施することで,SNSが賦活する可能性が示された。今回のカウンセリングでは,対象者自身の感情体験を重視する関わりであることから,活動性の指標であるSNSが賦活し,安静の指標であるPSNSが低下したものと考えられる。一方,SNSならびにPSNSのベースラインやcut-off pointについて同定しておらず,今後大規模集団を対象とした検討を行う必要がある。

キーワード
カウンセリング/自律神経系


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