発表

3A-034

幸福感の発達的差異に関する検討
原因帰属様式の視点から

[責任発表者] 小嶋 佑介:1
1:淑徳大学

 目的
 近年,幸福感の研究はさまざまな広がりをみせている。しかし,これまでの幸福感研究において主要な対象となっているのは,成人であり,児童期を対象とした研究はあまりみられない。また,幸福感と年齢の関連を検討した研究はみられるものの,年代による幸福感の差異は,必ずしも一貫していない。尾木ら(2012)は,日本の青年期の自立の困難や精神的問題について,青年期だけでなく学童期からの問題としても捉えていく必要があると指摘している。これらを踏まえれば,幸福感の年代による差異について,児童期の幸福感を実証的に分析し,青年期との比較も踏まえ,より発達的視点を踏まえた幸福感の検討が必要だと考えられる。その際に重要な視点として,「児童と青年で発達的に異なる傾向が指摘されている認知的要因として原因帰属がある」(速水,1984)ことに着目することは,幸福感の年代差を考える上で重要であると考える。実際,原因帰属は幸福感とも関連がある(Kashima & Triandis,l986)とされており,発達的に異なる原因帰属スタイルが,児童・青年それぞれの幸福感に対して異なる影響を及ぼしている可能性が考えられるだろう。以上のことから本研究では,発達的差異の視点を踏まえ,幸福感と関連する要因として原因帰属を取り挙げて,児童期と青年期の比較から検討することを目的とする。
 方法
 Z県の小学5,6年生137名(男68名・女69名)および大学生207名(男性54名・女性153名)を対象に質問紙調査を実施した。使用した尺度は,従来から幸福感の測定で使用されることが多く,獲得志向的な幸福の価値観を反映しているオックスフォード幸福感尺度(Hills & Argyle,2002;祁・浅川,2011),日本文化的な「他者との相互関係から考える幸福(相互協調的幸福感)」の価値観や側面を反映しているInter-dependable Happiness Scale(Hitokoto,H & Uchida,U,2015),原因帰属様式測定質問紙(樋口ら,1981)の3つであった。得られた尺度得点について,児童と青年の各幸福感得点の平均値についてはt検定を用いて分析を行った。また,原因帰属様式に関して,課題の成功・失敗場面,友人関係の成功・失敗場面のそれぞれに対して,内的要因と外的要因のどちらに帰属させたかを分類した上で,各幸福感について年代と原因帰属様式を要因とする2(児童・青年)×2(内的帰属・外的帰属)の分散分析を行った。
 結果
 各幸福感得点の分析の結果,相互協調的幸福感では児童と青年で差がみられなかったが,獲得志向的幸福感では有意な差がみられ(t(334)=5.49, p <.001),青年に比べ児童のほうが高い獲得志向的幸福感を感じていることが明らかとなった(図1・図2)。次に,原因帰属スタイルと年代の組み合わせによる各幸福感得点についての分析の結果,友人失敗場面(友達にいじわるをされた)における原因帰属様式と年代を独立変数,相互協調的幸福感得点を従属変数とした場合,帰属様式の主効果(F (1,323) =.460, n.s.)と年代の主効果(F (1,323) =.010, n.s.)に有意な差はみられなかった。しかし,図3に示す通り,帰属様式と年代の交互作用が有意であった(F (1,323) =10.61, p<.001)。
 考察
 まず,相互協調的幸福感では,発達段階の比較的早期の時期から他者との関係性の中で幸福を感じる傾向があることが示唆された。また,獲得志向的幸福感について,児童は青年に比べ自己の能力の向上や,知識・技能の獲得に対して意欲的であること(福富・伊藤,1980)が関連していると思われる。このような発達的傾向は,より獲得志向的幸福感と関連が強いと考えられる。一方青年では,目標や能力に関する個人的統合が終結へと向かう時期であるため,児童に比べて自己の目標達成や能力の向上が幸福感と結びつきづらいと考えられる。次に原因帰属様式と幸福感の関連について,児童期では親と友人の双方が依存対象となるため,友人失敗場面において相手の性格や状態に外的帰属することは,友人を尊重していないという意味づけにつながりやすく,青年期と比べると,幸福感の低さと関連がみられたと考えられる。本研究では,発達的観点から児童と青年では理想とするものや求める幸福像が異なることが示唆されたため,今後は発達段階に応じた幸福像のさらなる検討が必要であると考えられる。

キーワード
幸福感/原因帰属


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