発表

3A-033

電子くじ“ガチャ”によるストレスへのフレーミング効果の影響
物欲センサー錯誤の要因を探る

[責任発表者] 浮川 祐希:1
[連名発表者・登壇者] 越川 房子:2
1:早稲田大学, 2:早稲田大学

目 的
 ソーシャルゲームの発展に伴い,ゲーム依存や高額課金などの問題が目立つようになってきた。従来は上記の問題のメカニズムとして埋没費用効果などコストに着目して説明がなされてきた。一方電子くじであるガチャの,確率の表記に焦点を当てた研究は少なかった。ガチャは景品の当たる確率が表記されているが,当たりの確率にのみ意識が向き,はずれの確率を無視するという主観的確率判断を行っているかもしれない。主観的確率判断は,確率の定義を教示することで,より客観的に判断できることが判明している(小林,1998)。従って,当たりの確率に対する主観的確率判断が上記の問題を引き起こしていると予想し,はずれの確率に目を向けられるようにすることでストレスが減ると仮定される。そこで本研究で検討する仮説は以下のとおりである。
仮説:確率に対しての教示文を読んだ群は,確率に対しての教示文を読まなかった群に比べて,はずれという結果により出現する心理的ストレス反応が有意に低下する。
 また,個人のソシャゲに対しての生活習慣とストレスについて探索的な研究を行う。

方 法
調査対象者:大学生44名を調査対象者とした。回答者の平均年齢は21.59歳,標準偏差(SD)は0.91。実験協力者はランダムに介入群,統制群に配置した。介入群は男性11名,女性11名の計22名。統制群は男性10名,女性11名,その他1名の計22名。
実験材料:Excel 2013で関数を用いた電子くじを作成した。くじの結果ははずれが表示される。両群共に景品の当たる確率表(大当たり5.4%,当たり20.7%,はずれ73.9%)を呈示した。介入群にはこの確率表に加え,教示文を対呈示した。
実験群の確率の教示文:サイコロを投げた時6の目の出る確率が6分の1と定められるのは,サイコロを多数回投げた時6の出る割合がほぼ6分の1に近いという客観的事実に基づいている。例えば「600回投げた時およそ100回くらいの割合で6の目が出る」と考えるとわかりやすい。(小林,1998)
質問紙の構成:二つの尺度を用いた。一つは鈴木他(1997)により作成された心理的ストレス反応尺度(SRS18)である。実験前2,3日のストレス状態と実験後のストレス状態を測定するために用いた。下位尺度は「抑うつ・不安」,「不機嫌・怒り」,「無気力」の3因子である。それぞれの因子は6項目,計18項目から構成されている。自分のストレスの状態に該当するものを,「全くちがう」(1),「いくらかそうだ」(2),「まあそうだ」(3),「その通りだ」(4)の4件法で回答を求めた。もう一つの尺度は村上(2002)により作成された運の強弱認知の程度尺度である。実験の意図を隠すためのダミー項目として用いた。
実験手続き:最初に実験前2,3日のストレスの状態と本日の主観的な運の強弱についてのアンケートに回答を求めた。アンケートが終了した後,ガチャを引く作業を行った。作業は,説明を聞きながら行う練習と,本番を一回ずつ行った。練習ははずれが出ずに十二支のうちの何か一つ,本番ははずれが出るよう設定した。実験群では本番のガチャを引く際に,確率に対しての教示文を読み上げてもらった。作業終了後に実験後のアンケートに回答を求めた。その後デフリーディングを行い,質問や内観を尋ねた。

結 果
統制群と介入群のSRS18得点の変化の分析:群(2水準:統制群,介入群)×時点(2水準:プレ,ポスト)の2要因混合分散分析を行った。群は被験者間要因,時点は被験者内要因である。分析の結果,心理ストレス反応得点において時点の主効果のみが1%水準で有意であった(F(1,42)=17.172,η²=.290)。
各ソシャゲ課金額とSRS18の変化の分析:群(7水準: やっていない群, 無課金,~千円,千円~5千円未満,5千円~1万円未満,1万円~2万円未満,2万円~3万円未満)×時点(2水準)の2要因混合分散分析を行った。分析の結果, 心理的ストレス反応は群の主効果と時点の主効果が認められた(群:F(6,37)= 3.394,p<.01,η²=.355,時点:F(1,37)= 9.432,p<.01,η²=.203)。多重比較(Holm法)によって各群の平均差を検討したところ,心理的ストレス反応得点において,~千円群はやっていない群,~5千円群,~2万円群に比べて1%水準で有意に高かった。また,~千円群は無課金群と比べても5%水準で有意に高かった。

考 察
 本研究はガチャによるストレスが主観的確率判断と実際の結果とのギャップにより発生しているという仮定の下,確率の定義を教示することでギャップを低減させ,ストレスが減るという仮説を検討した。結果から仮説は支持されなかった。また,実験前に比べ,実験後のストレスが減っていることから,仮説の前提条件としての,ガチャの結果がストレスを引き起こすという予想を見直す必要がある。生活習慣に関する分析は,課金額に介入することがストレスの緩和に有効であることを示唆している。高額課金より千円群がストレスを感じるのは,高額課金すればガチャを引く回数が増えストレス耐性を得やすいが,千円ではガチャを引く回数があまり増えないため,ストレス耐性を獲得できず,投資した費用も結果的に埋没費用となってしまうためだと考えられる。本実験ではガチャを引く回数と費用を統制したため,今後は回数や費用に焦点を当てて検討を重ねたい。

引用文献
小林厚子(1998) 確率判断の認知心理(1) 研究紀要 5, 89- 100, 1998 東京成徳大学

キーワード
主観的確率判断/フレーミング効果/意思決定


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